萩生田文科相「身の丈」謝罪も野党は格差固定と追及

萩生田光一文科相

2020年度(21年1月)に始まる大学入学共通テストをめぐり、萩生田光一文科相は28日、英語で導入される民間検定試験について「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」とテレビ番組で述べたことについて「国民、特に受験生のみなさんに不安や不快な思いを与えかねない説明不足な発言でした。おわびを申し上げたい」と謝罪した。

しかし導入延期法案を衆院に提出した野党は、萩生田氏や文科省を厳しく追及する姿勢を強めている。立憲民主の蓮舫氏は「制度導入そのものが受験生のおかれる環境では乗り越えられない格差が固定することを陳謝し、わびて、制度撤回をすることこそが文部科学大臣の仕事。今週、衆参ともに大臣から所信を聞く」とSNSで発信した。

萩生田氏は24日のBSフジで、民間の活用によって経済的、地理的に不公平が生じないかを問われ「それ言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』って言うのと同じだと思う」と反論し「身の丈に合わせて…」と発言。ネットなどで「地方、経済的に苦しい家庭に分をわきまえろというのか」「予備校に通うことと入試は違う」などの批判が噴出していた。萩生田氏は「どのような環境下にいる受験生も力を最大限発揮できるよう、自分の都合に合わせて適切な機会をとらえて、全力で頑張ってもらいたいとの思いで発言した」と釈明した。

英語の民間検定試験については、実施が来春に迫ってもなお各検定の日程、会場など未定部分があまりに多いため、経済的地域的格差の懸念のほか、受験計画を立てられない状況にある。異なる検定を同じものさしで測ることへの疑問、高校2年までに検定を受けていても、高校3年時の成績しか認められず受け直さなければならないことへの不満なども含めて、教育現場の混乱は深刻化。「準備不足、遅れは明らか」「大きな変更は2年前までに通知するルールが守られていない」「最低限の公平性、公正性が担保されない」などの指摘が根強い。全国高等学校長協会も延期、見直しなどを求める要望書を文科相に提出している。

また国語に導入される記述式問題は採点を民間業者が担当するが、「50万人分を短時間に公正に採点できるのか」「思考力などを問うという目的にほど遠い問題になり形骸化するのではないか」などの指摘が出ている。

現時点では、新しい制度設計や運用、文科相や文科省の方針が、教育現場で広く理解され、受け入れられている状態とはほど遠く、混迷はなお続きそうだ。