国母容疑者密輸の大麻は少量で猛烈薬効/元麻取分析

元五輪スノーボード日本代表の国母和宏容疑者(10年2月撮影)

6日に大麻取締法違反(営利目的輸入)の疑いで逮捕された、元五輪スノーボード男子代表のプロスノーボーダー国母和宏容疑者(31)が輸入した大麻は、乾燥大麻の成分が凝縮された濃縮大麻、通称「リキッド」「ワックス」とみられることが7日、分かった。

国内では乾燥大麻の65倍の濃度のものも押収されており、たばこに1、2滴、落としただけで猛烈な薬効があることなどから近年、広まっているという。

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国母容疑者は、昨年12月ごろ知人の男らと共謀し、営利目的で米国から大麻製品約57グラムを隠した国際スピード郵便を都内に発送し、同31日に成田空港に到着させて密輸した疑いで、関東信越厚生局麻薬取締部(通称マトリ)に逮捕された。捜査関係者によると57グラムの大麻は、水あめ状で紙に塗り付けられていたという。元厚生労働省麻薬取締官の高濱良次氏は日刊スポーツの取材に対し、発見時の状態から「ワックスやリキッドと呼ばれる、濃縮大麻」と分析した。

大麻は葉や精神活性化作用がある主成分テトラヒドロカンナビロール(THC)が多く含まれる花穂(かすい)を乾燥したものや、樹脂化したものを吸引して使用される。国母容疑者が拠点をおく米国では、州によっては嗜好(しこう)品としての大麻合法化が進んでいるが、濃縮大麻も広まっているとされる。花穂をガラス管に入れブタンガスなどを注入。THCを含んだ液体が分離され、それを濃縮することで「大麻オイル」が完成するという。

濃縮大麻は濃度が高く、たばこに1、2滴たらすだけで、乾燥大麻より強烈な作用があり、量を増やすと激しい幻覚や猛烈な不安に襲われることもあるという。THCは乾燥大麻の60倍から90倍という説があり、高濱氏は「日本国内で押収、検挙された事案の中で最高、濃度が高かったのは65倍」と説明。

高濱氏は「大麻オイルは、ハチミツのようにトロッとした状態で、粘着性があり、紙に貼り付けることも出来るので瓶に入れなくても大丈夫」とし、持ち運びしやすい側面があるという。濃縮大麻の中でも、電子たばこの器具で吸引できるものをリキッドと呼ぶ。吸っていても一見、電子たばこと見分けづらい。また大麻オイルを泡立て、空気を加えて固めたものをワックスと呼ぶ。

こういった特徴から濃縮大麻は高額で取引されるという。高濱氏は「乾燥大麻は0・5グラムで3000円から5000円だが、濃縮大麻だと1万円以上…2万円とか、データがない状況」と解説。国母容疑者は「営利目的は違う」と供述しているが、高濱氏は「持っていた約57グラムは相当な量で、個人使用で済む量ではない」と真っ向から否定した。

<最初から営利目的容疑 マトリ自信あり>

高濱氏は、関東信越厚生局麻薬取締部が営利目的輸入の疑いで国母容疑者を逮捕したことについて「よほど立証に自信を持っている」と分析した。今回の事件では成田空港で郵便物を東京税関が発見、今年10月に国母の知人が大麻取締法違反で逮捕された件の捜査過程で、同容疑者の関与が浮上した。

高濱氏は「今回のようなケースは、密輸容疑で調べて、そこから捜査で立証できれば、営利共謀未遂で起訴するのが通例」と説明。「最初から営利目的輸入の疑いで逮捕した。麻薬取締官は逮捕前に、営利性を立証する情報を集めていたのでは」と語った。今後の捜査のポイントについては「過去に何回も密輸し、常習性、営利性がどれくらいあったのか、というところになる」と分析した。