「食材は豊富」築地場外市場でテークアウト弁当評判

築地場外のフィッシュバーガーショップ「魚政」の「極上のり弁当」。場外の名店のおいしい食材でいっぱいだ

食の街、東京・築地場外市場でテークアウトの弁当が評判になってきた。

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、築地場外でも、5月6日まで休業、もしくは「しばらくお休みします」と張り紙をしている飲食店が増えてきている。一方で、来場者の滞在時間を短くするため、テークアウトの弁当を販売する店舗も増えてきた。

その中で、閉められない物品店を応援する意味で築地場外オールスターズの弁当をつくったフィッシュバーガー店が出た。

築地場外中通りの「魚政」だ。10日から「極上のり弁当」(950円)を午前10時から午後5時まで販売している。高崎政文店主(47)は3年前から場外で出店し、季節に応じた調理した魚を挟むバーガーを提供している。

洋風メニューが中心だが、築地場外に進出する以前は、板前として和食に携わっていた。「もともと和食なのでご飯の弁当は得意なんです」と高崎店主。2坪半の小さな店舗を1人で切り盛りするため、1日に15食ぐらいだが、これまでに22食出た日もあり、日に日に評判は上がっている。

テークアウトののり弁当を出すきっかけは、築地場外の各店の様子を見て決断した。「築地場外には食材は豊富にある。しかもいいものしかない。僕は扉を開くと欲しいものが必ず入っている冷蔵庫だと思っているんです」と話し「今、スーパーにものがなくなってきているといいますが、築地なら何でもある。いつでも欲しいものがそろってるんですよね」と高崎店主はアピールした。

「魚政」ののり弁当は、築地場外の特選素材でいっぱいだ。ご飯は宮城産ヒトメボレを炊きあげ、豊洲市場「海宝」釜揚げシラスと「山本商店」の金ゴマを散らす。「丸山海苔店」の海苔でカーペットをつくって、その上に「松露」の玉子焼きでピリリと一味のきいた「辛党」、「諏訪商店」のきゃらぶき、しゃこきくらげの佃煮、豊洲市場「北沢」明太子、「吉岡屋」のガリとおみ漬け(山形の青菜漬け)、そして高崎店主の調理した宮城県沖の金華サバの竜田揚げ、その金華サバすり身が入ったチクワ1本の天ぷら、カキのコンフィのなめろうをギュギュと乗せた。

また、老舗もテークアウトの弁当を出してきている。鶏と鴨肉の卸を中心に商売をする「鳥藤(とりとう)」では11日から「ワンコイン弁当」と打ち出して500円の弁当を売り出した。5種を午前9時から店頭に並べ、つくりながら毎日計50個前後をさばいている。

鈴木昌樹社長(42)は「決してもうかるわけではないが、築地場外は商売をしていることを知らせたい」とテークアウト弁当に着手した。3月の売り上げはなんとか踏みとどまり、前年度比4割減だったが、4月に入って取引をしている飲食店が次々に休業して、同8割減と落ち込んでしまった。

鈴木社長は「まず、従業員が感染しないことを考えて、1日の業務を全員2交代制にした。業務も午後2時ではなく、1時間早い同1時には閉めるようにしている。その中で考えたのが、ワンコイン弁当。なんとか話題にはなっているようで安心している」と話した。

500円とはいえ、ボリューム十分で、「やきとり弁当」「しゅうまい弁当」「からあげ弁当」「チキンカツ煮弁当」は従来直売しているデリカ商品を加工してつくり、100%粗びきの鶏肉をこねて煮込んだ「ハンバーグ弁当」は、このワンコイン弁当だけのために開発した具材だ。

築地場外で開業70年になるラーメン店「幸軒」も1000円の満腹弁当を11日から繰り出している。築地場外で「もっとも分かりにくい場所にある」という評判の店舗だが朝6時から予約を受け付けて、正午まで販売している。

佐藤あやこ店主(72)は「このコロナでみんなお家でご飯でしょ。持って帰ってふたを開けたら…あら残念、ってならないようなボリュームのお弁当にしたわよ」と話した。カツ丼、ステーキ丼、すき焼き丼、天丼が弁当メニューにあるが「中華丼でも、チャーハンでも作れるものは、何でも作るからね」と笑顔でこたえていた。

新型コロナウイルスのまん延で、自宅にこもる生活が続いているが、散歩や買い物は制限されてはいない。不要不急ではなく、安全な食材確保をするための生活維持のため、築地場外は今後も店を開けて商売に打ち込んでいる。