浜松が舞台のミステリー小説ヒット、森晶麿氏に聞く

浜松市を舞台にした小説「探偵は絵にならない」の著者・森晶麿さん

浜松市を舞台にしたミステリー小説「探偵は絵にならない」(早川書房刊)が、今年2月に発行され、1万部を超えるヒット作となった。浜松市出身で著者の森晶麿(あきまろ)さん(41)へ電話インタビューを行い、執筆の経緯などを聞いた。【取材・構成 河合萌彦】

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物語は、主人公の画家・濱松蒼が、姿を消した同せい中の恋人を追い、故郷・浜松市へ戻ることから始まる。その地でいくつかの依頼に応えるうちに、恋人失踪の真相に迫っていくという内容だ。

-浜松市を舞台にした理由は

森氏 出版社から、ハードボイルドな内容の作品を求められたのがきっかけです。そのジャンルでは文体が大事で、土地を描くにしても血となり肉となったものが如実に出る。自分にとって、それを出せるのが地元の浜松でした。

-「遠鉄」や「有楽街」など、浜松市民にとっておなじみの名前が多数登場します。どれくらいの取材をしたのでしょうか

森氏 2年前にトークイベントで浜松市へ行く機会がありました。終了後に市内を歩き回り、昔を思い出す作業をしたのですが、思っていた以上に蓄積があった。地元から長く離れていたことで、浜松の特長を捉えやすくなっていたのかもしれません。取材といえるのは、その1日だけです。

-話を変えますが、小説家を志すきっかけは何だったのでしょうか

森氏 中学3年のときに映画「ジュラシックパーク」を観賞し、映画監督に憧れたのですが、その世界でやっていく自信がなかった。しかし、その作品の原作者が、作家をやりながら映画監督もしていると知り、その手があったかと思ったのがきっかけですかね。

-学生結婚し、4人の子どもを育てる“イクメン作家”としても知られています

森氏 妻とは同年齢で、ともに学生だったときに最初の子が生まれました。2人で協力して子育てをしていたので、現在でも続けているという感じです。

-最後に、今後の展望などを教えてください

森氏 今作の主人公には、続きの物語があると思っています。機会があれば、それを描きたいですね。

◆森晶麿(もり・あきまろ)1979年(昭54)3月5日、浜松市生まれ。現在は、高松市在住。浜松湖東高を経て、早大第一文学部へ進学。卒業後、日大大学院芸術学研究科博士前期課程修了。テレオペレーターやコピーライター、漫画・テレビの脚本などを経験。デビュー作「黒猫の遊歩あるいは美学講義」で、第1回アガサ・クリスティー賞を受賞した。家族は、妻と2男2女。