レジ袋有料「3R」でプラごみ減/ニュースの教科書

都市部の河口、河原などにはペットボトルなど大量のプラスチックごみがみられるところも(高田秀重教授提供)

7月1日からレジ袋が有料になりました。プラスチックごみが増え続けて、海や魚などの生き物、地球温暖化などに大きな影響を与えているため、少しでも減らさないといけないからです。新型コロナウイルスによって、医療現場や感染防止で必要なプラスチックも増えていて、一層難しい問題になっています。だれにとっても身近で大切なプラごみ問題を、この機会に勉強してみましょう。専門家の東京農工大学・高田秀重(ひでしげ)教授に、分かりやすく説明してもらいました。【久保勇人】

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【プラごみ問題の専門家、高田秀重教授に聞いてみた】

Q プラごみが増えて、具体的にどんな影響が出ているのですか

高田先生 生物を傷つけています。例えばエサと間違えて食べます。クジラの胃からレジ袋が80枚見つかったり、鳥や魚のおなかから小さなプラスチックが何個も出てくることもあります。海などに捨てられたプラスチックは、紫外線や波で5ミリ以下のマイクロプラスチックになり、いつまでも消えないのです。

Q 生物の体内に入ったものは排せつされませんか

高田先生 多くは排せつされますが、プラスチックに含まれていたり、海中でくっつけてきた有害な化学物質が体内にたまることがあります。これらを食べて、人間に入ってくる可能性もあります。プラスチックには体によくない化学物質が入っていることがあります。特にプラスチック容器に加工した油っぽい食べ物が入っている場合、容器から化学物質が出やすいです。プラスチック容器に入った食べ物はそのままチンせず、陶器やガラスの器に移して温めましょう。

Q レジ袋はプラごみ全体の2~3%だそうですが、削減の効果はありますか

高田先生 レジ袋有料化を、プラごみ削減の第1歩としましょう。レジ袋1枚から数千個のマイクロプラスチックができると考えられます。またレジ袋は、海中などで化学物質をくっつけやすい素材で作られています。こうしたこともあり、レジ袋は世界の100カ国以上で規制されているのです。これをきっかけに、量の多いペットボトルや食品トレーなども削減していかなければなりません。

Q 新型コロナウイルスでさらに、プラスチック製品が必要になっています。不織布(ふしょくふ)の使い捨てマスク、手袋、レジなどのビニールシート、間仕切り、持ち帰り容器などもプラスチックが多いです

高田先生 医療や感染予防でプラスチックは必要です。だからこそ、使わなくてもすむところはより使わないようにして、本当に必要なところで使えるようにしなければいけません。

Q 生活の中で私たちはどうすればいいのでしょうか

高田先生 私たちができることは「3R」です。まずプラスチックの使用をリデュース(Reduce)=削減する、どうしても使うものはリユース(Reuse)=再使用、使えなくなったらリサイクル(Recycle)です。燃やせば二酸化炭素が発生し、地球温暖化の問題になります。埋めても有害な物質がしみだして、川などを汚します。別のプラスチックにリサイクルするのも、とても手間やお金がかかります。だから、身の回りからできるだけプラスチックを減らしましょう。ペットボトルやレジ袋を減らすために、いつも水筒=マイボトルやマイバッグを持ち歩く。プラスチックの表面にはウイルスが長時間残るので、ポリエステル製など心配されますが、綿のバッグなら繰り返し洗濯でき感染リスクも減ると思います。

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「これだけは知っておきたい、プラごみの基礎知識」の一部を紹介します。自分でも調べて考えてみましょう。

【日本のプラごみ】日本のプラごみの量は年間900万トンくらいです。うち食品の容器や包装、ペットボトルなど身近なものが約400万トンです。ペットボトル(飲料、調味料など)は年間約62万トン、252億本が販売されています。レジ袋は年間20万トンくらい使われ、プラごみ全体の2~3%といわれます。だれでも1日か2日に1枚くらいは使っていますよね。1年間に1人がごみにしている使い捨てプラスチックの量では、日本は米国に次いで世界で2番目に多いのです。

【日本のリサイクル】プラごみは「80%以上が有効利用」といわれますが、約6割は燃やして、発電や温水プールなどに利用されています。「サーマルリサイクル」といいますが、燃やせば循環しないので、世界ではリサイクルとみなされていません。別のプラスチック製品にする「マテリアルリサイクル」は約20%で、うち半分近くがアジアに輸出されています。それらの国でもごみがあふれ、中国など引き取りをやめる国も増えています。

【海の汚染】世界では年間800万トンのプラごみ(※ジャンボジェット機4万~5万機分!)が海に流れ込み、5兆個以上が漂っているそうです。このままでは2050年には海の中のプラごみと魚の重さが同じになり、量はプラごみが魚を上回るだろうといわれています。日本の海岸に漂ってくるごみの調査でも、個数ではプラスチックが最も多く、その中で最も多いのがペットボトルです。ペットボトルは年間25億本くらいが回収されないとみられ、その一部が海や川などに流れ込んでいます。

◆高田秀重(たかだ・ひでしげ) 東京都出身。東京農工大農学研究院教授。マイクロプラスチック問題の世界的研究者で、国連の海洋汚染専門家会議のワーキンググループ・メンバーとして活躍。2015年には海洋立国推進功労者として内閣総理大臣賞を受賞。

◆久保勇人(くぼ・はやと) 1984年入社。静岡支局、文化社会部、アトランタ支局、スポーツ部などを経験。国内の事件、皇室、旧ソ連崩壊、ペルー大統領選などを担当。五輪は92年バルセロナ、96年アトランタ、00年シドニーの現地取材、デスクを担当した。