藤井2冠、異次元の読みがAI最善手と一致/連載

福岡市内で一夜明け会見をする藤井聡太2冠(日本将棋連盟提供)

<藤井聡太2冠が歩む未来~AI時代とともに~2冠編>(中)

歴史的快挙を達成した藤井聡太2冠(18)はどんな未来を歩むのか? 将棋界では人工知能(AI)による研究が全盛時代を迎え、AIと共存しなければいけない時代になった。「藤井聡太2冠が歩む未来~AI時代とともに~2冠編」と題し、3回にわたり、連載します。

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2冠獲得から一夜明け、藤井が1日目の封じ手について、改めて語った。飛車を切るか、逃げるかの二択の局面だった。「どちらも難しいのかなという気がした。飛車がどの程度、働くか見通しの立ちづらいところがあった」と説明した。36分、考え抜いた末の結論は飛車を捨て、銀を取るという覚悟の一手だった。

「飛車を切って、その後、飛車をこちらが取り返す形にもなりやすい。そういった順で勝負できるのかなと考えていた」

自ら賢くなり始めた人工知能(AI)は将来、さまざまな分野で人間の仕事を代用できるようになるといわれる。AIと共存するために最も必要とされるのは人間の「先を読む力」。天才たちがしのぎをけずる将棋の世界で、棋士は先読みのプロだが、藤井と対局した棋士が驚くのは「圧倒的な先を見通す力」だ。

決断した封じ手の42手目の「8七同飛成」。先読みのプロたちでもリスクが高すぎて、ちゅうちょする強手だが、2日目朝、封じ手が開封されると、ほぼ互角だったAIの評価値は藤井有利に傾いた。18歳の常識を覆す異次元の読みとAIの最善手がピタリと一致した局面でもあった。

AI全盛時代、ときに藤井は「AIの申し子」と表現されることもあるが、師匠の杉本昌隆八段(51)は「ちょっと違うでしょうね」と否定する。藤井は将棋ソフトを研究の参考に取り入れているが、ソフトにすべての思考を委ねることはないという。

「AIはもろ刃の剣だが、楽をしようと思えば、いくらでも楽ができる。藤井2冠の場合は、自分の中で能力を鍛える道具としてAIをパートナーにしている。その取り組み方は、理想的だと思います。楽をせずに考え抜いて、将棋を積み重ねてきたからこそ、いまの実力がある」

かつて藤井が「未来の対戦相手」を予言した言葉がある。(つづく)

【松浦隆司、赤塚辰浩】