歌謡界にも「第7世代」注目理由はSNS駆使、個性派ぞろい、共通した目標

事務所の演歌歌手1号の新浜レオン(2021年6月撮影)

<ニュースの教科書>

歌謡界で「第7世代」と呼ばれる演歌系の若手歌手が頑張っている。コロナ禍でコンサートやキャンペーンができない中、配信ライブやユーチューブなどを積極的に活用し、ファンを楽しませている。「第7世代」はもともとはお笑い界で話題となった呼称だが、ファン層の高齢化などで低迷を続ける演歌・歌謡曲の活性化に一役買っている。時代を象徴するキーワードになりそうだ。【笹森文彦】

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「第7世代」という言葉は18年ごろにお笑い界から生まれた。主に「10年以降にデビューしたお笑い芸人の総称」とされた。ちなみに第7世代は「霜降り明星、ゆりやんレトリィバァ、宮下草薙、四千頭身、EXIT」ら。これをきっかけにさまざまな世代区分も生まれた。それらによると第1世代が「コント55号、ドリフターズ」。第2世代が「ビートたけし、明石家さんま、タモリ」ら。第3世代が「とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン」ら。世代分けに批判的な声もあるが、新しい視点として話題になった。

この発想で生まれた歌謡界の「第7世代」も注目されている。理由は大きく3つある。1つはコロナ禍の影響だ。コンサートやキャンペーンなどが軒並み中止となり、ベテラン歌手の多くは活動を自粛した。一方、若手歌手は配信ライブやネットサイン会、YouTubeチャンネルの活用などで、ファンとの交流を保った。ツイッターなどSNSも駆使して、情報を発信した。音楽関係者は「演歌ファンは高齢の方が多く、パソコンやスマホは無理と思われがちだが、会えないのはお互いさまで積極的に参加してくれている。SNSで若い世代にもより情報が伝わるようになった。コロナ禍の光明で、新しい活動の形が生まれたと思います」という。

2つ目は個性派ぞろいであることだ。日刊スポーツ・コムの連載「われら第7世代~演歌・歌謡曲のニューパワー~」に登場する歌手もみな多彩だ。

新浜レオン(25)は、B’zや大黒摩季らが所属する事務所「ビーイング」の演歌第1号歌手という異色の存在だ。二見颯一(22)は「やまびこボイス」の異名を取り、YouTubeの公式チャンネルで素顔を披露し人気を得ている。

望月琉叶(25)は演歌歌手、アイドルグループ、グラビアと三刀流で活動し、幅広い世代から支持されている。青山新(21)は、石原裕次郎さんや小林旭が活躍した日活映画の主題歌路線で注目されている。辰巳ゆうと(23)は正統派のイケメンで、巧みな話術も魅力だ。同じ事務所の氷川きよしの弟分でもある。

3つ目はライバルだが、連帯感があることだ。「同世代に昔の名曲の素晴らしさを伝えたい」という共通した目標も持つ。新浜は「第7世代に名前を挙げていただいてとても光栄。他の歌手と一緒に、今しか届けられない活動をやって行きたい」。二見は「同世代の仲間と一緒に、もっともっと民謡も演歌も盛り上げていきたい」。望月は「演歌は日本の文化。衰退してはいけない。第7世代のみんなと力を合わせていきたい」。青山は「第7世代の方々とご一緒させていただくと勉強にもなるし、環境的に恵まれている(世代)と思います」。辰巳は「仲がいいのが僕らの世代の特徴。みんなで協力して、一番下の世代から盛り上げていければ」と語る。

歌謡界の活性化のためにも、「第7世代」にぜひ頑張ってほしいものだ。

◆笹森文彦(ささもり・ふみひこ)北海道札幌市生まれ。83年入社。「しらけ世代」に当たるが、三無主義ではなかった。大学入学当時、インベーダーゲームの大全盛期で、何時間も待ってプレーした。このころ、アニメやコンピューターゲームなどおたく系業界が急速に発展。「しらけ世代」の中に「おたく第1世代」も含まれるという。「しらけ」に「おたく」。あまり響きがいいとは言えない世代か…。血液型A。

<戦後の演歌系歌手の世代区分>

▼第1世代 春日八郎、三橋美智也、三波春夫、村田英雄ら

▼第2世代 美空ひばり、島倉千代子、橋幸夫、北島三郎、舟木一夫ら

▼第3世代 森進一、千昌夫、五木ひろし、都はるみ、水前寺清子、大月みやこ、八代亜紀ら

▼第4世代 石川さゆり、小林幸子、川中美幸、坂本冬美、伍代夏子、香西かおり、藤あや子、細川たかし、吉幾三ら

▼第5世代 水森かおり、氷川きよし、北山たけしら

▼第6世代 山内恵介、三山ひろし、福田こうへい、市川由紀乃、丘みどりら

▼第7世代 中澤卓也、辰巳ゆうと、新浜レオン、二見颯一、青山新、津吹みゆ、朝花美穂、おかゆ、門松みゆき、望月琉叶ら

【注】デビュー年や初ヒット年などを参考に、既存のデータと日刊スポーツの分析で世代分けした。美空ひばりさんはブギやマンボ、マドロス歌謡などを歌い「第1世代」から大活躍したが、「柔」(64年)「悲しい酒」(66年)で演歌歌手の地位を確立したと言われ「第2世代」に区分。

<○○世代アレコレ>

社会情勢や価値観の変化などによって、さまざまな「○○世代」が登場した。

▼団塊の世代 戦後の1947年(昭22)から49年に生まれた世代。第1次ベビーブーム世代で、3年間の出生数は800万人以上に上った。大学時代は学生運動の盛んな時期と重なる。バブル経済期を40歳前後で迎え、日本の経済成長を支えた。文化にも大きな影響を与えた世代で、音楽では「ビートルズ世代」と重なる。堺屋太一氏の小説「団塊の世代」(76年)に由来する。

▼しらけ世代 主に50年代から60年代半ばに生まれた世代。学生運動が下火になった時期に青春時代を迎え、政治だけでなく、世の中の事象全般に対して無関心となった。傍観者のような冷めた態度などから命名された。十分な教育を受け、偏差値が成績の指標となった。この世代を象徴する言葉が「三無主義」(無関心、無気力、無責任)。

▼新人類世代 60年代生まれの世代。大学入試の共通1次試験に代表される画一化社会を生きた。インベーダーゲームが流行し、元祖サブカル世代とも言われる。今までとは違う価値観を持った若者たちという趣旨で呼ばれた。85年に「朝日ジャーナル」(筑紫哲也編集長)が行った連載「新人類の旗手たち」でこの呼称が一般化した。

▼バブル世代 主に65年から69年生まれの世代。大学卒業時にバブル景気を迎え、就職市場は空前の売り手市場となった。長時間労働、接待など当たり前の時代だった。女子大生を中心に華やかなファッションブームが生まれた。86年の男女雇用機会均等法施行以降に社会に出た世代で、女性の活躍が注目された。

▼氷河期世代 主に70年から80年代初めに生まれた世代。90年に株価や地価が暴落し、バブル崩壊が始まり景気が悪化。企業が新規採用人数を控えるようになった時期に社会人となった世代。「ロストジェネレーション(失われた世代)」とも呼ばれる。

この他、団塊の世代の子供世代に当たる「団塊ジュニア世代」。02年から10年のゆとり教育を受けた「ゆとり世代」。00年以降に社会に出た「ミレニアム世代」などがある。

◆「世代」は技術革新でも使われている。

▼コンピューター 第1世代は真空管で、トランジスタ、集積回路(IC)などを経て、現在は第5世代の人工知能(AI)。

▼通信システム 「5G」という言葉を最近よく耳にするが、これは「第5世代移動通信システム」のこと。超高速、大容量が売りだが、すでに「6G」へと進んでいる。

このほか家庭用ゲームや携帯ゲームなども細かく世代分けされている。