いよいよ通常国会 どうなる文通費 国会議員の待遇を調べてみた

国会議事堂

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17日召集の通常国会では、昨年末の臨時国会で法改正が先送りになった「文書通信交通滞在費(文通費)」の行方が焦点の1つです。国会議員に給与にあたる歳費とは別に、毎月100万円の経費が在籍1日でも満額支給され、領収書提出や使途報告、未使用分返納などの義務がないため、税金なのにブラックボックス化。“第2の給与”とも呼ばれ問題視されながら、長く放置されてきました。昨秋の衆院選をきっかけに再び見直しの声が高まる中、文通費だけでなく、国会議員がどんな待遇を受けているのか、調べてみました。

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国会議員の主な待遇

【歳費】 国会議員の給与は法律で金額が決まっていて、衆院議員、参院議員ともに1人月129万4000円(議長や副議長らは別)です。現在はコロナ禍を受けて2割削減されており、月103万5200円。税金、議員宿舎費、議員会館の電話料、団体保険の保険料、所属会派から引き去りを依頼される諸経費などが引かれ、毎月10日に支給。

【期末手当】 ボーナスに相当。6月と12月に、各314万2802円(2021年度)。歳費(2割削減)と期末手当で、議員1人当たり計1870万8004円。

【文書通信交通滞在費】 国会法と歳費法で「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」と定められ、現在は1人月100万円、毎月10日と末日に50万円ずつが支給されています。非課税で、領収書提出や使途の報告、未使用分の国庫返納などの義務はなく、自主的な返納もできません。在職1日でも1カ月分が満額支給。総額は衆院55億8000万円、参院29億4000万円。

【JR無料パス、航空券引換証】 歳費法で「職務の遂行に資するため」として、JRの特殊乗車券(無料パス)や航空券引換証が支給されています。議員は<1>JR無料パス、<2>JR無料パス及び、東京と自分の選挙区の間を月3往復相当分の航空券引換証、<3>月4往復相当分の航空券引換証、のいずれかを選択できます。JR無料パスは定期券のような形で、議員の名前が印字されています。航空券引換証は議員の名前が印字された紙片で、使う際に旅行代理店などで航空券に引き換えます。ただし、選挙区が関東甲信越地方や宮城、福島、静岡、岐阜、愛知、三重の場合、航空券引換証は選択できません。衆院の場合、JR無料パスの予算は計3億3393万3000円(決算3億2790万2000円)、航空券の予算は計5億7802万2000円(決算4億6418万7000円、各20年度)。

【議員会館】 法律で「議員の職務の遂行の便に供するため」として、国会議事堂に隣接して議員会館が設けられ、各議員に1室100平方メートルの事務室が提供。▼衆院=第1議員会館は219室、第2議員会館は246室。▼参院=248室。賃料や光熱水費は無料(公費負担、ガスはない)。電話は各室に内線3本、外線2本が引かれ、基本料金は公費負担、外線の通話料は基本、議員負担。議員用と秘書用の机やロッカー、応接セット、会議テーブル、打ち合わせテーブル、椅子などの備品も貸与。

【議員宿舎】 地方選出議員の在京生活や活動の拠点として、衆院は東京都港区内に青山宿舎と赤坂宿舎、参院は千代田区内に麹町宿舎と清水谷宿舎を設置。▼衆院・青山宿舎=計40戸(入居36戸)、2DK、家賃月2万1638円。▼衆院・赤坂宿舎=計300戸(入居271戸)、3LDK、13万8066円(以上昨年末時点)。▼参院・麹町宿舎=計146戸(入居120戸)、2DK4万5174円、3DK8万6955円、2LDK9万2210円。▼参院・清水谷宿舎=計56戸(入居46戸)、1LDK10万9239円、3LDK15万8006円(以上昨年11月時点)。光熱水費は議員負担。

各宿舎と議員会館の間には、開会中は休日を除く毎朝、無料バスが運行。▼衆院=青山は朝1便、赤坂は2便を、バス3台で運行。閉会中は委員会などが開会される日に各1便。▼参院は、麹町→清水谷→議員会館→本館のルートで、朝3便をバス1台で運行。

【立法事務費】 53年(昭和28)成立の法律で「国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため、必要な経費の一部」として支給されています。議員本人ではなく、国会で行動をともにする会派に対し、議員1人当たり月65万円(年780万円)が、毎月1日に振り込み。使途報告などの義務はなし。議員1人でも、政治資金規正法の規定による政治団体として届け、認められれば支給。総額は、衆院36億2700万円、参院19億1100万円。

【公用車】 ▼衆院=乗用車133台、マイクロバス3台、貨物2台の計138台(すべて衆院で保有)。運転手は110人。ほか民間委託が23人。車両の購入や維持の予算は計1億373万1000円(21年度)。▼参院=乗用車93台、マイクロバス2台、貨物1台の計96台(すべて参院で保有)。運転手は80人。ほか民間委託が12人。車両の購入や維持の予算は計8272万3000円(21年度)

【秘書給与】 国会議員は、政策秘書、公設第1秘書、公設第2秘書の3人を国庫負担で雇うことが認められ、秘書には国から給与(基本給、期末手当、勤勉手当、通勤手当、住居手当)が支給されます。月額は法律で定められ秘書歴と年齢によって決まります。社会保険料、税金、財形貯蓄、秘書会費などが引かれ、毎月10日に秘書の口座に振り込み。20年度予算では、衆院が総額121億6339万2000円、参院が63億6639万4000円。

例えば衆院の場合、総額の内訳は基本給80億9558万4000円、期末手当19億6091万1000円、勤勉手当14億4957万9000円、通勤手当4億9892万4000円、住居手当1億5839万4000円。支給対象者は1395人(議員定数465×3人)で、秘書1人当たり平均は年約871万9000円。議員1人当たり(秘書3人分)年約2615万7000円相当になります。

【公務による派遣の旅費】 議院の公務で派遣の場合、旅費が支払われます。出発前に概算額で支給し、終了後に精算。JR無料パスを持つ議員には鉄道運賃は支給されない。20年度予算は、衆院が3億1642万9000円、参院が1億6261万9000円。

【議会雑費】 各議院の役員及び特別委員長らには、国会開会中に1日6000円の議会雑費が支給されます。土日も含めて開会日数分が支払われ、非課税。衆院の場合、20年度は3630万6000円。

(※両院の事務局による)【久保勇人】

 

【文書通信交通滞在費の変遷】※議員1人の月額

▼1947年(昭22) 「通信費」=125円

▼48年(昭23) 1000円

▼51年(昭26)4月 3000円

▼51年11月 5000円

▼52年(昭27) 1万円

▼62年(昭37) 5万円

▼63年(昭38) 「通信交通費」に変更=10万円

▼66年(昭41) 15万円

▼68年(昭43) 18万円

▼71年(昭46) 23万円

▼74年(昭49) 「文書通信交通費」に変更=35万円

▼76年(昭51) 55万円

▼78年(昭53) 65万円

▼88年(昭63) 75万円

▼93年(平5) 「文書通信交通滞在費」に変更=100万円

【立法事務費の変遷】※議員1人分の月額

▼1953年(昭28) 1万円

▼58年(昭33) 2万円

▼62年(昭37) 3万円

▼65年(昭40) 4万円

▼66年(昭41) 5万円

▼68年(昭43) 6万円

▼70年(昭45) 8万円

▼72年(昭47) 10万円

▼74年(昭49) 12万円

▼75年(昭50) 20万円

▼77年(昭52) 40万円

▼79年(昭54) 60万円

▼86年(昭61) 65万円

 

◆久保勇人(くぼ・はやと)1984年入社。文化社会部、スポーツ部など経験。