「2000円食べ放題飲み放題」店舗数拡大中の居酒屋「おすすめ屋」の秘策を創業者が明かす

「おすすめ屋」の発展に尽力する野本修取締役

「食べ飲み放題」。食べ放題や、飲み放題という言葉は定着しているが、近年は両方をセットにして格安で提供する飲食店が人気を博している。コロナ禍の感染予防対策として、少人数&短時間で外食を満喫する生活スタイルにも合致。「料理70品ドリンク70品2000円食べ放題飲み放題居酒屋」として店舗数拡大中の「おすすめ屋」(本社・東京都目黒区)に迫った。

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「特製もつ鍋」「キノコ&トリュフのライスコロッケ」「サーモンの刺身」「タレが効いたサイコロステーキ丼」「なめらか豆乳花(トールーファ)」などに「ハイボール」「日本酒」など、料理、飲み物合わせて計140種が好き放題に楽しめる。「生ビール」を加えるとプラス300円だが、「各種サワー」は濃いめ、薄めのワガママOK。「ハムカツ」をかじれば熱々サックサクでつくり置きもなし。記者のイチ推しは「焦がし■油が香る大人のエリンギステーキ」。少し歯応えのある食感に、かめばかむほど口いっぱいに広がるジューシーさで、ドリンク注文が加速した。

2時間で税込み2200円。なぜ、こんなに安く提供できるのか? 創業者の野本修取締役(31)が秘策を明かした。「なかなか他にマネが出来ないデータ管理です」。予約を各店舗ではなく専用コールセンターで行ってデータ化し、次の集客戦略につなげている。数カ月以内に何%がリピーターになるのか。1年以内なら何%なのか。「今どのくらいの仕入れが必要で、従業員もどこにどれくらい配置すれば良いのか分かるんです。何をしたら、お客様がどのくらいリピートしてくれるのかも分かる」。

主な集客方法はインターネットやSNSを活用する。「過剰に広告を出しても、満席でお客さんが入れなかったら機会損失になってしまう」。予約やリピーターを取り込んでいく手法が主になっていることで「(1階の)路面店でなくても良いし、立地の良い場所でなくても良いんです」。現在14店舗あるが、すべてが雑居ビルの2階以上。当然、家賃もかなり抑えられている。

17年2月に上野店が最初にオープンした。コロナが直撃しても、20年6月に船橋店、同10月に町田店、昨年10月には名古屋駅前店に続いて今年2月には栄店など首都圏だけでなく愛知県にも勢力拡大。「コロナ不況で物件が空けば、当然安くお借り出来る。ずっとこのような状況が続くわけはないので、勇気を出してリスクを取りました」。緊急事態宣言中は全店休業を続けながら、20年以降に8店を新規営業開始している。

大皿ではなく小皿提供も、時代に合致した。「最初は大学生や新卒社会人の若い方が客層になるかなと思ったし、一番は残して欲しくなかった。おなかいっぱい、いろいろなものを食べてほしいという発想から少量の提供になった」。当然、コロナの想定はなかったが、東京都の小池百合子知事が提唱した「5つの小」のコロナ会食事項「少人数」「小一時間」「小声」「小皿」「小まめ(な換気)」ともピッタリ。2人以上が条件の食べ飲み放題が多い中、「1人でもOK」にも需要があった。

「すでに新規出店候補の60~70駅をピックアップしてあります」。コロナ時期の出店も、たまたま優良物件があったから。今後も、効率的にロスの少ない経営を進めながら、店舗数を拡大予定だ。将来的にはM&A(合併と買収)なども進めながら、配送や仕入れ管理が出来るサプライチェーン化の計画もある。「日本で一番安く、満足度が高い居酒屋を目指しています」。「おすすめヤ~」と口コミでも広がる「食べ飲み放題」だ。【鎌田直秀】

※■は将の旧字体の下に酉

○…ユニークな「食べ飲み放題」もある。GOSSO(本社・東京都渋谷区)が運営する「肉ときどきレモンサワー。」はレモンサワーの卓上サーバーを完備。グリルチキン、から揚げ、タパス、ピザ、パスタなど豊富なイタリアンメニューが並び、50品か70品の全4プランから選択可能。自家製ローストビーフまで付く税込み3850円から、90分50品で同2200円のお試しコースまである。

白木屋などを展開するモンテローザ社(本社・東京都武蔵野市)の「鶏のジョージ」と「豊後高田どり酒場」では、料理60種以上ドリンク60種以上で2時間同3080円。「ももBIG串」が名物で、「鶏わさ」などの肉刺しや「特製チキンカレーライス」なども魅力的だ。

ガッツ・インターナショナル(本社・東京都渋谷区)の「ガッツ・グリル」は、ステーキ、ハンバーグ、ピザ、タコスなどが2時間同4000円。肉をガッツリ食べたい猛者にお勧めだが、食べ残しは厳禁!

 

▽経済ジャーナリスト荻原博子さん まずは、コロナがあって、食べ飲みの機会が減っていることが1つある。どうしても、みんなと会った時には気持ちが大きくなる。それで食べて飲んで好き放題やっていると、金額がかさむ。一定の範囲や枠を決めておいてもらって「いくら」と明確なことは、とてもありがたいし魅力。潜在的にニーズがあったところに「今日はちょっと羽目を外して」という時に「でもお財布のひもはしっかり締める」というところで、需要も供給も増えていると思います。

だんだん長居する習慣もなくなっているんです。パッと飲んでパッと帰りましょうみたいなことが定着してきた。昔は上司がおごるとかありましたけれど、今は割り勘も多いです。飲み食いの量と金額の不合理も少ないですし、部下や後輩は2時間できっぱり終わることも魅力。ちょっと1杯がダラダラダラダラ遅くなって奥さんに怒られたりしていたけれど、制限時間いっぱいで切り上げて、さあ帰りましょうってなりますからね。