“サポートカー限定免許”高齢者事故対策でスタートも普及のカギは啓発&補助金 8社112車種

衝突軽減ブレーキシステムのイメージ図(ホンダ・シビック)

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道路交通法の一部が改正され、今月13日から新たに「サポートカー限定免許」がスタートした。この免許で運転できる車は2020年度以降の製造で、国の性能認定を受けた衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)と、ペダルを踏み間違えた時に急加速を防ぐ装置のある車などの新たな基準を満たした車に限定。高齢者の事故対策だが、対応車を新たに購入する必要があるなど、普及には問題も浮上している。

「サポートカー限定免許」は高齢者や運転に不安を感じている人が、車の運転を継続する時の新たな選択肢となる。警察庁は「衝突被害軽減ブレーキと、ペダル踏み間違い時加速抑制装置といった安全運転支援装置が搭載された普通自動車だけを運転することができる」としており、サポートカー限定免許でサポートカー以外の車を運転した場合は免許条件違反となる。

2019年4月に東京・池袋で起きた高齢運転者による死亡事故などを機に、高齢ドライバー対策の強化が検討されてきた。公益財団法人の交通事故総合分析センターが公表している18年から20年の「ペダル踏み間違い事故」の年齢別件数では、75歳以上の車両単独事故は524件、対人事故は233件と全年齢で最も多い。サポートカー限定免許は、この現状に対応するための施策の1つだ。

警察庁はサポートカー限定免許の対象となる国内8社112車種を公表している。トヨタではハイブリッド車のプリウスにも対象車を設定しており、「今回の限定免許を機に安全に対する関心が高まることに期待している」としている。

一方で戸惑いの声も上がる。東京・府中運転免許試験場を訪れていた複数の高齢ドライバーは「ここに来るまで知らなかった」と認知度は高くないようだ。さらに「慣れている今の車から乗り換えたくない」(60代女性)、「年金生活で今から新車を買うのはハードルが高い。補助金が出れば」(72歳男性)という声が上がった。

自動車評論家の松下宏氏は「普及させるには補助金などのインセンティブが必要になってくる年金収入しかない人たちに、新しい車を買え、というのは難しい」と指摘した。

多くの自治体でペダル踏み間違い対策の後付け装置の促進に補助金制度が導入された。東京都では19年7月から今年3月まで、70歳以上の都内在住ドライバーを対象に昨年3月までに2万1612台の申請を受け付けた。だが、サポートカー限定免許の対象車両への補助金制度について、都は「今のところ検討していない」としている。

車が生活に欠かせない社会インフラとなっている地域の高齢ドライバーや、運転に不安を感じる人たちにとってサポートカー限定免許の導入は魅力的だ。しかし、今後の普及には、周知啓発とセットで補助金制度などの支援策が必要となりそうだ。【大上悟】

◆サポートカー限定免許と対象車 普通免許のみで、中型(8トン限定)免許や第2種免許などの上位免許は申請によって一部取り消しとなる。運転できる車両は安全運転支援装置が搭載された普通自動車(サポートカー)のみで、後付け装置は対象とはならない。安全運転支援装置には2種類あり、<1>衝突被害軽減ブレーキ(対車両、対歩行者)=車載レーダー等により前方の車両や歩行者を検知し、衝突の可能性がある場合には、運転者に対して警報、衝突の可能性が高い場合には、自動でブレーキが作動する機能。<2>ペダル踏み間違い時加速抑制装置=発進時やごく低速での走行時にブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んだ場合にエンジン出力を抑える方法により、加速を抑制する機能の装置が道路運送車両の保安基準に適合し、国交省による性能認定を受けているもの。

◆運転免許の自主返納 警察庁によると、1998年に自主返納制度が導入されてから75歳以上、75歳未満ともに返納数は年々増加している。75歳以上は2015年に12万3913人と初めて10万人を突破した。75歳以上は19年に35万428人と過去最多となったが20年は29万7452人と減少した。

<「後付け」抑制装置は工賃含め税込み4万4000円>

今回のサポートカー限定免許では対象外となる後付けのアクセルペダルの間違いを抑制する装置だが、販売は堅調だ。大手カー用品販売店のオートバックスで2016年11月から関連商品を発売し、現在発売中の「ペダルの見張り番2」は国土交通省から認定を受けて補助金の支給対象となった。「現在、商品と部品取り付け工賃を含めて税込み4万4000円で対応車種は200車以上」(オートバックス)としている。同社の累計販売数は「発売から21年3月までにシリーズ累計約3万4000台の販売と取り付けを行った」とし、「今後も高齢ドライバーを中心に需要がある」と見込んでいる。

◆東京都の「後付け支援装置」への補助金 2019年7月から20年10月まで装着費用の9割(10万円上限)、20年11月から今年3月までは装着費用の5割(6万円上限)で実施された。21年3月までに2万1612台の申請を受け付けた。