水戸市民の“納豆愛”を再構築! 購入金額トップ奪還へ「条例」制定、官民一体でアピール中

納豆の年間購入金額ランキング

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「納豆の街」茨城県水戸市が、納豆消費拡大に向け、市民の“納豆愛”を再構築する。総務省の家計調査によると、1世帯あたりの年間購入額ランキングで昨年は3位。5年連続で全国1位を逃し、福島市に3連覇を許している。トップ奪還を狙い、若手市議らが議案を提出した「水戸市納豆の日」(7月10日)制定などを盛り込んだ「水戸市納豆の消費拡大に関する条例」が今月21日に全会一致で可決。注目を機に、官民一体となって納豆をアピールする活動を加速させる。

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納豆条例を代表で提出した森正慶市議(49)は「私も納豆が好きなんですよ」と可決を喜んだ。例年は7月の暑い時期に消費量が減る傾向がある。7月10日の「水戸の納豆の日」での盛り上げは、夏の消費拡大への大きなカギとなるだけに「家族で、子どもたちと一緒に、意識して食べてほしい」と呼びかけた。

すでに全国納豆協同連合会が「納豆の日」を定めていたが、市独自の制定はさらなる消費への援軍となりそうだ。条例制定により自治体、行政、企業などが一致団結した組織的取り組みが推進され、NATO(北大西洋条約機構)よりも身近で心強い“NATTO同盟”となりそうだ。「大々的にのぼりや懸垂幕も作れるので、市民に消費をアピールしやすくなる」(森氏)。まずは7月9、10日にイオンモール水戸内原店で納豆イベントを開催。「納豆まぜまぜ選手権」や、市内の幼稚園や小学校に寄贈される新書絵本「なっとうくんのぼうけん」の読み聞かせも実施予定だ。

水戸商工会議所産業振興課の古山哲央(42)さんは「水戸市のアンケート結果では、納豆消費の約7割が納豆ご飯なんです」と明かす。「パンやパスタの機会も増えて、米食が低下傾向にあることに危機感を感じている。いろいろな形で納豆を食べてもらわないといけない」。18年からは「納豆食べ方コンテスト」を4年連続で実施。2年目からはテーマを「納豆チャーハン・パスタ」「納豆スイーツ」「親子で納豆」と変えながら、納豆料理の幅を広げてきた。商工会議所のホームページには過去の受賞作レシピも掲載中。SNSなどで納豆条例の話題が拡散されれば、さまざまなレシピが閲覧され、納豆消費を加速させるはずだ。

全国の納豆製造企業は104社。このうち茨城県には18社があり、水戸市には全国最多の4社がある。銘柄「水戸納豆」などを製造販売する「水戸納豆製造」高星大輔代表取締役(43)は「納豆メーカーとして行政などとも一丸となって頑張りたいし、新商品づくりにも力を入れていきたい」と全面協力。土産品としても人気の高い、わらに包まれた「天狗納豆」で知られる老舗「笹沼五郎商店」笹沼寛社長(48)も「市内の消費拡大を進める企画を考えていきたい」と意欲を見せる。

納豆購入金額の王座奪還に向け、「納豆の日」を起爆剤に、粘り強く魅力を発信していく。【鎌田直秀】

◆納豆の妖精ねば~る君(納豆をモチーフにした茨城県非公認マスコットキャラクター)「1位奪還へのマメな活動、ネバーギブアップ精神、水戸市の納豆への想いは世界一ネバよ! 数字ですべては語れないネバだけど、1位奪還を目指すなら、日本中、世界中から人が集まる納豆フェスを水戸市で開催するネバ! そうすれば、水戸市民の心の納豆愛がより強くなって消費量がのびーるネバよ!」

<歴史>

水戸が納豆の街となった歴史には諸説あるが、1889年(明22)創業の「水戸天狗納豆・笹沼五郎商店」によれば、水戸と納豆の関わりは1083年(永保3)までさかのぼる。源義家が奥州(現在の岩手県)に向かう途中に常陸国(現在の茨城県)で宿営。宿駅の駅長の渡里の里(現在の水戸市)の屋敷に泊まった際、家来が馬の飼料に作った煮豆をわらで包んでおいたところ、煮豆が自然発酵して糸を引くようになっていた。家来が食べると味が良く、義家にも喜ばれたと言う。以来、将軍に納めた豆という意味で「納豆」と名付けられて、近くの農家に広まった。

また、1657年(明暦3)には水戸黄門・徳川光圀が備蓄食料として、梅干し、そばとともに納豆の製造を勧め、水戸藩の食膳にも並べられた。

水戸市周辺は小粒大豆の産地でもあった。極めて早生で、3カ月で完熟。台風の洪水前に刈り取れる利便性も高かったため、安定供給しやすかったとも言える。1889年(明22)の水戸線開通、水戸駅開業で、納豆売りの少年たちが駅前で販売し、観光客などの好評を得て全国に広まった。