【ひふみんEYE】藤井棋聖の非凡な一手42手目6三金が「勝因」永瀬王座は「必然の負け」

3連覇の「3」を指で作る藤井聡太棋聖(撮影・松浦隆司)

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将棋の最年少5冠、藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)が永瀬拓矢王座(29)の挑戦を受けた、第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第4局(主催 産経新聞社、日本将棋連盟)が17日、名古屋市「亀岳林 万松寺」で行われ、104手で後手の藤井が勝ち、対戦成績3勝1敗でタイトルを防衛、3連覇を果たした。22年度、2つ目のタイトル戦に勝利し、5冠を堅持した。

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永瀬王座にとっては「残念の1局」でした。先手9七桂(39手目)が不可解でした。ここで先手3七桂と跳ねて有望でした。3歩も得しているという大きな局面ですし、次に先手7六歩と角道を開けて、「先手がいい」とプロなら思うはずです。

藤井棋聖の後手6三金(42手目)を軽視していたのではないでしょうか。これで陣地の地盤が固まり、うろうろしていた先手の飛車を止め、後手7五桂(52手目)の足掛かりになりました。この非凡な一手が「勝因」でしょう。

さらに永瀬王座で疑問に思ったのは先手7六歩(61手目)。これは「敗着」です。永瀬王座は攻めで後れを取った上、藤井棋聖の7~9筋の攻めをお手伝いして、差が広がりました。ここは先手8一飛成と桂を1枚補充して、のちのち先手3七桂~先手4六桂と進めれば、期待が持てました。「必然の負け」という感じでした。

長手数の将棋大歓迎の永瀬王座を相手に開幕局こそ苦労しましたが、あとは得意パターンをうまく封じて防衛できました。藤井棋聖は3連覇ですか。通算5期獲得で「永世棋聖」の称号が得られるので、あと2連覇してもらいたいです。

それと対局の間隔が詰まって、藤井棋聖は調子が上がってきたようです。次の王位戦7番勝負第3局(20、21日、神戸市)は、先手番で挑戦者の豊島将之九段が開幕局のような角換わりを採用すると考えられます。後手番でどんな対応をするか見てみたいです。王位戦の今後を占う1局になると思いますので。