【棋聖戦】藤井棋聖、永瀬王座の“藤井対策”上回る新手で3連覇「厳しい戦いだった」

3連覇の「3」を指で作る藤井聡太棋聖(撮影・松浦隆司)

将棋の最年少5冠、藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)が永瀬拓矢王座(29)の挑戦を受けた、第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第4局(主催 産経新聞社、日本将棋連盟)が17日、名古屋市「亀岳林 万松寺」で行われ、104手で後手の藤井が勝ち、対戦成績3勝1敗でタイトルを防衛、3連覇を果たした。22年度、2つ目のタイトル戦に勝利し、5冠を堅持した。10代最後の節目の対局を白星で飾り、タイトル通算獲得数を9期に伸ばし歴代単独9位になった。

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10代ラスト対局で相手を圧倒した。“藤井対策”を深めてきた永瀬に対し、藤井が強く踏み込んだ。「序盤から前例の少ない展開になったが、こちらが歩損する形でまとめ方が難しいのかなと」。未開の地へ、常識を覆す後手2三歩(22手目)。相手の研究を上回る、前例のない「新手」を繰り出した。

第4局は午前9時、永瀬の先手で始まった。戦型は相掛かりに進み、両者の対局では千日手になった第1局以来5局ぶり。相掛かりは一昔前は力勝負の代名詞だったが、現代将棋では研究勝負の戦場になっている。2人は藤井が四段時代からVS(ブイエス=1対1の練習対局)を行う研究パートナー。お互いの手の内は知り尽くしているだけに大舞台では「定跡」が通じなかった。

終局後、藤井は「こちらの玉が薄い形でよく分からなかった。ずっと難しかった」と話した。19日に20歳の誕生日を迎え、10代最後の対局を白星で飾ったことに「区切りとは思ってないが、10代をいい形で終わることができた」と喜んだ。

今シリーズは初獲得を狙った永瀬が先勝したが、その後は藤井が3連勝して棋聖位を守った。これでタイトル戦出場は9度目となるが、いずれのシリーズも制している。タイトル戦では無敵状態だが、ライバルたちは“藤井対策”を深める。

永瀬をはじめ、王位戦7番勝負を戦う豊島将之九段もリスクを取り、藤井のギリギリの間合いに踏み込み、勝機をうかがう。22年度は、叡王戦はストレート勝ちで防衛したが、棋聖戦、王位戦はこれまでより厳しさを増している。

新兵を鍛える鬼軍曹の姿とダブって見えたことから「軍曹」の異名を持つ永瀬とのシリーズに「厳しい戦いだったと思うのでしっかりと振り返らなければいけない」と謙虚に話した。「試練の夏」を迎えているが、1つ難局を乗り越えた。

会見では師匠の杉本昌隆八段からサプライズの誕生日ケーキをプレゼントされた。「これまでお年玉をいただいていたので、その代わりにケーキをいただいたのかなと思います」と笑顔で話した。杉本門下では20歳になると、お年玉はもらえない。王位戦7番勝負は現在1勝1敗。中2日で第3局が20日から神戸市「中の坊瑞苑」で始まる。充実の20代に向けて「非常に大事な時期。実力を高めていくことが大事」と気を引き締めた。【松浦隆司】

◆棋聖戦 将棋の8大タイトル戦の1つ。1962年(昭37)創設。初代棋聖は、故大山康晴十五世名人。94年度までは半年に1回開催されていた。20年に藤井が17歳11カ月で初のタイトル挑戦、初タイトル獲得を果たすまで、屋敷伸之が第55期(89年度後期)で17歳10カ月24日の最年少挑戦記録を保持。次の第56期(90年度前期)で屋敷は18歳6カ月と当時の最年少記録で初タイトル獲得という舞台になっていた。95年度から年1回に。96年度は当時7冠すべてを保持していた羽生善治現九段が今局の対局場となった「高島屋」で三浦弘行現九段に敗れ、6冠に後退した。「棋聖」は将棋、囲碁で抜群の才能を示す者への敬称。将棋では江戸時代末期の不世出の天才棋士、天野宗歩(あまの・そうふ)がこう呼ばれた。