UFO 間違っていると断言もできぬ「宇宙人の乗り物」説 NASAは今秋から本格調査を開始

「極めてUFOの可能性が高い」とされた写真。18年9月3日、立山黒部アルペンルートの室堂で長野県の男性が撮影した(国際未確認飛行物体研究所提供)

<ニュースの教科書>

UFO(未確認飛行物体)をめぐるニュースが続いています。米議会はUFOに関する公聴会を半世紀ぶりに開き、NASA(米航空宇宙局)は秋に調査を開始すると発表しました。国内では国際未確認飛行物体研究所が、寄せられた452件の情報から極めてUFOの可能性が高いと認定した4点を公開すると、「チョウでは?」と大騒ぎに。なぜ今、UFO。YouTubeチャンネル「東大宇宙博士」の井筒智彦さん(37)に聞きました。

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そもそもは20年4月に米国防総省が公開した動画です。「なんだ、これは。ドローンか」「風に逆らって飛んでるぞ」「見ろよ、回転してるぞ」など興奮したパイロットの音声とともに、正体不明の物体が飛行する映像が公になり、国防総省がUFOを認めたと大反響を呼びました。

議会は報告を求め、CIA(中央情報局)NSA(国家安全保障局)DIA(国防情報局)など情報機関を統括する国家情報長官室は昨年6月、報告書を発表しました。04年11月から21年3月までに報告された144件が分析され、しぼんだ気球と確認された1件を除き、143件は「正体について確かな結論は出せない」。80件は目視、レーダー、赤外線探知機など複数のセンサーで確認され、18件は推進装置がないのに高速で移動したり、強風の中を静止したり、急に動いたりなど「異常な動き」をしたとしています。

「UFOの目撃情報の94%は見間違えといわれています。人はどうしても見たいものを見てしまう。先入観、思い込みです。しかし、あの映像でUFOは存在する、説明がつかない飛行物体はあると断言できるようなった。センセーショナルでした。ただ、勘違いしてはいけないのは、UFO=空飛ぶ円盤でないし、UFO=宇宙人の乗り物でもないということ。そこは大事なところです」(井筒さん)。

報告書は、謎の飛行物体の正体について、<1>大気中の浮遊物<2>自然の大気現象<3>米国の機密プログラム<4>外国の新技術<5>その他、と5つの可能性を挙げました。地球外から来た可能性については触れず、エイリアン・クラフト(宇宙人の乗り物)という言葉も出てきませんが、明確な否定もしていません。「報告書の結論は『データ不足で今は分からない』です。UFO=宇宙人の乗り物という仮説を支持する科学的証拠はないが、間違っているとも言い切れない。だからこそUFOはいまだにロマンがあるわけですね」(井筒さん)。

1947年以来、UFOの調査が行われている米国でも、「UFOを見た」と言うと、変な人扱いされ、目撃しても他言しないパイロットが多かったと言います。国防総省の映像公開、情報長官室の報告書発表を機に、報告件数は増え、今年5月、半世紀ぶりに開かれた米下院のUFOに関する公聴会では1年間に約400件の目撃情報などの報告があったことが明らかにされました。

日本でも国際未確認飛行物体研究所が1年間に452件の情報が寄せられ、うち動画や写真がある149件を分析すると、UFOの可能性が極めて高いものが4件あったと発表しました。この秋、NASAが調査に乗り出します。航空工学、宇宙物理学、データ解析などの専門家が科学的に調査し、来年夏、報告書を発表する予定です。

UFOが「未知との遭遇」や「E.T.」のように地球外の知的生命体が乗った宇宙船である可能性はあるのでしょうか。「太陽系外惑星」は1992年に初めて見つかって以来、これまで5000個以上発見されています。地球のように表面に液体の水があり、生命を育む環境が整った惑星も確認されています。

「最も近い太陽系外惑星でも4光年先で、化学燃料ロケットでは数万年かかります。SFでは目的地までずっと眠る人工冬眠や、宇宙船内で命をつなぎ何世代もかけて到達する世代宇宙船で、宇宙の旅に出ますが、数万年もかかるのではそれも不可能です。『スター・ウォーズ』に出てくるような超光速航法も、相対性理論では光の速度に近づけようとすると、質量が急速に増大し、ものすごく重くなる。重い物を加速させるためには、さらにエネルギーが必要になります。いくら宇宙人でも、この物理学の法則を超越することはできないんです」(井筒さん)。

2018年に死去したホーキング博士は「ブレークスルー・スターショット」を提唱しました。「切手サイズぐらいの超小型の探査機(ナノクラフト)にビームを当てて加速し、最も近い恒星系に送り込む計画です」(井筒さん)。光速の5分の1のスピードで、4光年先のケンタウルス座アルファ星を目指す、夢のようなプロジェクトですが、それでも到達まで20年かかります。

「コストパフォーマンスから考えれば、生身の宇宙人が膨大な時間とコストをかけて地球を訪れている可能性は低いと思います。個人的には無人で超小型、それこそ切手サイズぐらいのちっちゃなものが来ていてくれればと期待しているのですが…」(井筒さん)。太陽系のある天の川銀河には2500億個の恒星があり、高度な文明を持つ惑星は36個あると推定されています。しかし、36の惑星間の距離は平均1万7000光年。光と同じ速度の電波でメッセージを届けようとしても1万7000年かかります。宇宙の広大さと、奇跡のような地球の存在、そのかけがえのなさを改めて思います。

◆米国のUFO研究 1947年6月24日、実業家ケネス・アーノルドが謎の飛行物体を目撃し、「フライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)」と全米で報道されたのを機に調査が始まり、「プロジェクト・サイン」「プロジェクト・グラッジ」「プロジェクト・ブルーブック」など名称を変えながら69年まで続いた。中心になったのは「未知との遭遇」の監修にもあたったアレン・ハイネック博士で、94%は見間違えと判定した。正体が分かったものの内訳も別表のように発表した。アーノルドの目撃も「サーチライトの誤認」だったが6月24日は「UFOの日」となった。

◆UFOとUAP 米政府は、自然現象なども含まれている可能性があるとしてUFO(Unidentified Flying Object)ではなく、UAP(Unidentified Aerial Phenomena=未確認空中現象)を使うようになりました。ただ、大半は「Physical Object(物体)」としており、今回はなじみ深いUFOで統一しました。

◆中嶋文明(なかじま・ふみあき)81年入社。国際未確認飛行物体研究所が1年間の調査結果を発表した際、三上丈晴所長(月刊「ムー」編集長)は「下ばかり見ているから、『これは自分のものだ』とか、ウクライナみたいなことが起こるんです。宇宙に目を向け、空を見上げると、発想が変わります。地球人という意識を持てば、そんな戦争とかやっている場合じゃないだろうと、意識が変わっていくんじゃないかなと思うんです」と言っていました。プーチン大統領、空を見上げていますか?