赤い羽根共同募金は何のため?恵まれない人のためと思いがち…メインは自分の住んでいる町のため

赤い羽根共同募金で配布される赤い羽根

<ニュースの教科書>

赤い羽根共同募金が今年も10月1日から始まる。戦後間もない1947年(昭22)にスタートし、今年で76年目になる。駅前などでの街頭募金で気づく人も多いだろう。ところで赤い羽根共同募金は何のために行われているのか。「恵まれない人のために」と思いがちだが、実は「自分の住んでいる町のため」の募金なのである。「なぜ赤い羽根なのか」など、赤い羽根共同募金の基本的なあれこれをあらためて紹介する。

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駅前などで赤い羽根の募金箱を持ったボランティアを見ると、「もうそんな季節か」と思う人は多いだろう。戦後の47年に始まり、76年続く全国共通の風物詩だ。赤い羽根を付けた人を見ると、自分も、と寄付する。ところで、何のために寄付して、何に使われているのか、ご存じだろうか。

◆自分の町のため

赤い羽根共同募金のメインテーマは「自分の町を良くするしくみ。」である。文字通り、自分の住んでいる町のために行う募金なのである。そして集まった募金は、自分の町のために使われる。

運営するのも47都道府県それぞれの共同募金会(社会福祉法人)で、さらに市区町村に共同募金委員会が置かれる。

例えば埼玉県は63の市町村が、募金や広報、助成審査など運営に関わる。都道府県共同募金会の連絡調整機関である中央共同募金会の熊谷有祐(ゆうすけ)運動推進部長は「自分の町のためと知らない方は多いです。なので10年以上、メインテーマを変えていません。全都道府県、全市区町村が組織だって実施する募金活動はこれしかありませんし、地域で集めて地域で配る募金は唯一と言っていい」と語る。

仮に千葉在住の人が勤務先のある東京都内で寄付すると、会社のある区と都のために使われることになる。

◆何に使われるのか

赤い羽根共同募金は、さまざまな民間の福祉活動を支援するために使われる。前述したように、募金を集めた地域の福祉に使われる。

例えば「高齢者や障がい者の生活サポート」「福祉車両の整備」「児童養護施設の応援」「学童保育」「障がい者の就労支援」「子育て支援」「自殺防止」「子供の遊び場整備」「高齢者への配食」「手話教室」「敬老会」などなど、さまざまな活動に分配されている。

◆目標額を決める

赤い羽根共同募金は、寄付金が集まってから使い道を決める募金ではない。事前に地域の福祉団体等から助成要望を申請してもらい精査。どのくらいの募金が集まれば支援できるかという助成計画を立てる。

その助成計画に基づき、地域ごとに募金目標額を決めて寄付を募る「計画募金」なのである。本年度の全国の目標総額は約137億円。募金終了後、迅速に助成できるようにしている。

「一般的には集まった募金の約7割が募金をいただいた地域で使われ、残りの3割はその地域がある都道府県による広域の助成に使われます」と熊谷部長。一部は国内の災害発生時に備えた「準備金」として積み立てられているという。

◆街頭募金は1割弱

募金が始まる10月1日は全国各所で街頭募金が行われる。時には有名人が募金箱を持ってPRすることもある。しばらくすると街頭募金をあまり見なくなるが、募金は翌年の3月31日まで行われている。

熊谷部長は「街頭募金は広報的な効果は大きいのですが、実は募金総額の0・7%なんです。町内会などに取りまとめていただく戸別募金が50%以上と圧倒的に多いです」。ただ最近は自治会や町内会の組織率が低下して、戸別募金も減少傾向にあるという。このほか、企業など法人や、職域、学校単位の募金も多い。

◆赤い羽根の意味

寄付すると付けてくれる赤い羽根は「寄付済証」の意味を持つ。第1回の共同募金の際には、稲穂をあしらった金属製のバッジが寄付済証だった。赤い羽根は第2回からで、共同募金発祥のアメリカで水鳥の赤い羽根を使っていたのに倣った。

アメリカの先住民族が「勇気」と「善行」の証しとして、赤い羽根を身につけていたことに由来するという。日本の赤い羽根はニワトリの羽根である。

コロナ禍で20、21年と街頭募金はほとんどできなかった。寄付には郵送、ネット、コンビニ決済、ポイント寄付、寄付付き商品の購入などさまざまな方法がある。いつも以上に「自分の町のため」を意識してみてはどうだろう。

◆共同募金 社会福祉法で「地域福祉の推進を目的とする募金活動」と位置付けられている。大別すると「赤い羽根共同募金」「歳末たすけあい」(12月1日~同31日)「NHK歳末たすけあい」(12月1日~同25日)がある。歳末たすけあいは、誰もが安心して新年を迎えられるような活動の支援に使われる。20年度の共同募金の実績は約169億円。47年からこれまでの共同募金総額は1兆円を超える。ちなみに英語では「Community Chest」といい「地域の貯金箱」と訳されている。

◆笹森文彦(ささもり・ふみひこ)北海道札幌市生まれ。1983年(昭58)入社。主に文化社会部で音楽担当。芸能界でも多くの募金が行われている。チャリティーのCD製作やライブを行うケースも多い。記憶に残るのは95年の阪神・淡路大震災の際にジャニーズ事務所のTOKIO、V6、KinKi Kidsで結成したJ-FRIENDS。97年から6年間を期限に活動し、総額約9億円を寄付した。すごいことだ。

■歴代ポスターに著名人多数

赤い羽根共同募金のポスターには俳優や歌手、スポーツ選手、作家ら数多くの著名人が登場した。応援歌も作られた。50年には並木路子と近江俊郎が「赤い羽根の歌」(作詞・サトウハチロー、作曲・万城目正)を歌った。並木の「リンゴの唄」の作家コンビである。52年には童謡歌手の小谷和子が「赤い羽根」を歌った。76年に森繁久彌作詞、岩城滉一作曲で「赤い花びら」「虹色の色」が発表されている。2016年には70周年記念曲「おたがいさまの歌」が製作された。現在は同曲の22年バージョンが広報活動などで使われている。(敬称略)

■緑、青、水色、黄色…赤以外の募金も

赤以外の羽根がシンボルのさまざまな募金活動や運動がある。

◆緑の羽根 国土緑化推進機構により50年からスタート。森林整備などを推進し、より良い環境づくりと維持を目的に「緑の募金」を行っている。

◆青い羽根 日本水難救済会により50年からスタート。海難救援活動にあたるボランティアを支援する「青い羽根募金」を実施。ライフジャケットやAEDなど救命器具等を整備。

◆水色の羽根 漁船海難遺児育英会が69年からスタート。漁業の事故で親を亡くした遺児の学資や奨学金などのために「水色の羽根募金」を実施している。

◆黄色の羽根 3つの運動で使われている。

<1>法務省により49年にスタートした更生保護など「社会を明るくする運動」のシンボルとして使用。

<2>内閣府により55年からスタートした全国交通安全運動のシンボル。発祥は大事故のあった岩手県。

<3>石川県腎友会により89年にスタートした臓器移植の推進事業。「黄色い羽根募金」を実施している。

◆過去の羽根募金 「黒い羽根募金」は炭鉱不況による炭鉱失業者の生活支援運動として59年から行われた。石炭が「黒いダイヤ」と言われていたことが由来。「白い羽根募金」は、戦後の財政難で日本赤十字社が献血活動などのために50年から8年間実施した。現在も趣旨を変えて募金が行われている。