ご当地ガチャ人気…なぜか埼玉発!大宮から人気爆発、1年程度予定が売り上げ累計140万個

大宮ガチャ第1弾の「氷川神社」

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ご当地ガチャが面白い。昨年3月、さいたま市大宮地区周辺に焦点を当ててキーホルダーを入れたカプセルトイ「大宮ガチャ」が予想外の大ヒットとなった。今では第5弾まで発売され、累計140万個も売り上げるほどの人気を誇る。同市内では「浦和ガチャ」「与野ガチャ」も続いている。このほか、埼玉県行田市、東京・東銀座などにも拡大。観光PR、地域振興を兼ねて作り出されている。

思わぬ形で、「大宮ガチャ」の人気が爆発した。SNS、インスタグラム、ツイッターなどでバズり、火が付いた。「こっそり売り出して、1年程度で幕を閉じようと考えていたんです。最初は、月1000個売れればいいと思っていたくらいでして」。企画した「アルシェ」(本社・さいたま市大宮区)の中島■雄社長(54)は苦笑いする。

1回300円のアクリルキーホルダーが入ったガチャと侮るなかれ。これまで第5弾、のべ40種類の商品(別途レア物も)が発売され、売り上げ累計140万個にものぼる。

2年前、コロナ禍で集客目的の催事ができなくなったのがきっかけとなった。大宮駅西口で商業ビルを展開する中島社長、幅広い年代に知られており、誰もが楽しめる「ガチャ」に注目し、地元で築いた人脈を生かし、商品化した。

昨年3月に初めて出した第1弾は、「氷川神社」や自社ビル「アルシェ大宮」など8種類。中でも購入者が喜んだのは、24時間営業の喫茶店として2017年(平29)1月、NHK総合「72時間」で放送された「珈琲館伯爵邸」だった。

第2弾(同5月)では地元大宮が誇る「日高屋」、第3弾(同9月)は「ハタボウル」、第4弾(同12月)は釣りエサ「マルキユー」の「九ちゃん」、第5弾(今年3月)は「埼玉県営大宮公園野球場」など、各8種類が立て続けに出た。

「知る人ぞ知る」、ディープな大宮が受けた。「週末の飲み会の後、伯爵邸で始発まで待った」「家内と初めてデートしたのがハタボウルだった」など、懐かしむ人がいた。マルキユーは94年、同じ埼玉県桶川市に移転するまで、現在のJRさいたま新都心駅東側付近に工場があった。「ガチャが、話の盛り上がるツールになっていることがうれしい。中にはここを取り上げてとか、ウチの会社も入れてといったリクエストもあるんです」(中島社長)。

さいたま市は01年5月に大宮、浦和、与野の3市が合併して誕生した。その流れで、昨年9月に第1弾が出た「浦和ガチャ」は、初日で約2000個が完売した。昨年12月に第2弾、今年3月に第3弾(各8種類の計24種類)と続いている。「与野ガチャ」も今年3月に第1弾の8種類が出た。

勢いは東京都にも飛び火し、今年7月には「東銀座ガチャ」も出た。「歌舞伎座」や、サンドイッチの名店「喫茶アメリカン」など8種類だ。意外に人気なのは、ジャニーズ事務所のタレントの公演で名高い「新橋演舞場」だという。

「ダサイタマ」「なぜか埼玉」「翔(と)んで埼玉」、埼玉ワードは数々あるが、ご当地ガチャの火付け役になるのは想定外。

「フタを開けてみないと分からないことが分かってくるのが、面白い。コロナの閉塞(へいそく)感が強いなか、一服の笑いが得られる。好きな人たちが話題を求めて集まり、盛り上がる。そんな時代に、ご当地ガチャがハマったのではないでしょうか?」

そう話す中島社長のところには仙台市や静岡県沼津市をはじめ、「ご当地ガチャ」の企画開発に関する依頼があるという。【赤塚辰浩】 ※■は示ヘンに羊

■行田市は缶バッジのガチャ

TBSドラマ「陸王」、映画「のぼうの城」の舞台となった埼玉県行田市は、昨年10月に「行田のガチャだんべ!」を売り出した。「大宮ガチャ」に影響を受けた「行田おもてなし観光局」が、観光及び地域の振興策として開発した。75ミリのブリキ製缶バッジで、裏面をマグネットにした。「忍(おし)城址」「さきたま古墳群」「足袋」など名所や特産品など10種類。さらにシークレット1種が入っている。「手に残る物、取りやすい物として、PRにはもってこい。素材はまだあるので、続編は検討中です」(行田おもてなし観光局)。

■滋賀「推し蔵ガチャ」酒造組合とコラボ

東京・日本橋にある滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」では、同県の酒造組合とコラボした「推し蔵ガチャ」を8月から設置している。1枚330円の専用コインを購入して回すと、地元酒蔵の日本酒ラベルと風味などが書かれた説明書が出てくる。8月は6蔵、9月は5蔵。全32蔵を22年度内に紹介すると同時に、リバイバルで再度ラベルを封入するという。

近畿地方で、滋賀は兵庫・灘、京都・伏見に次ぐ酒どころ。岐阜県側との伊吹山地、三重県側との鈴鹿山脈、福井県側との野坂山地、京都府側との比良山地と、各山々から違った水が琵琶湖に流れ込む。それぞれの特色を生かしてお酒を造っている。

「若い世代への普及のきっかけ作りをしたかった酒造組合が、地酒と出合うきっかけとしてガチャを開発した。滋賀県について知ってもらうきっかけにもなればいいと思う」と、ショップの古市宏樹支配人兼店長(43)は話す。物珍しさや、「回すからには全種類を」と張り切る人の存在で、ガチャの効果で設置前の7月に比べ、8月のお酒の売り上げが10%以上増えた。

もう1台購入した機械が「ここ滋賀」にはある。空いているこちらには「信楽焼の置物ガチャ」をという構想もある。

■カプセルトイ、市場規模5年で1・5倍

「ガチャ」「ガシャポン」などと呼ばれるカプセルトイ、21年度の市場規模は400億円超で、5年間で約1・5倍に拡大したと、玩具業界誌「トイジャーナル」ではみる。

バンダイナムコ、タカラトミーなど大手玩具メーカーは、人気アニメや自社のヒット製品などをカプセルに詰める。ご当地ガチャは、明確に一線を画している。

「目新しさや何が出るか分からないコレクション性で、ご当地ガチャはエンタメとして盛り上がる。ワクワクドキドキという楽しさに加え、ここでしか買えないという希少性の相性が良く、多くの人に受けている」。同誌の藤井大祐編集長(49)は分析している。