鉄道とヒット曲…列車の両輪のような関係性 キャンペーンから生まれた名曲を紹介

モクモクと煙を上げながら市塙駅を発車するC11形蒸気機関車のSL真岡号(06年12月)

<ニュースの教科書>

今年は鉄道開業150周年です。1872年(明5)10月14日に、新橋~横浜間で開業しました。同日は「鉄道の日」になっています。「汽笛一声(いっせい)新橋を」で始まる鉄道唱歌から今日まで、鉄道にちなんだ数多くの歌が誕生しています。日本国有鉄道(国鉄)や分割民営化されたJR各社のキャンペーンソングなどを中心に、私鉄も含めた鉄道が舞台のヒット曲を紹介します。

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鉄道は開業以来、出会いや別れ、旅立ちや帰郷などさまざまなドラマの舞台となってきた。それだけに、鉄道に関連したヒット曲が数多く生まれた。国鉄やJR各社のキャンペーンから生まれた名曲も多い。

◆「ディスカバー・ジャパン」

国鉄が団体客ではなく、個人旅行客の増加を目的に、70年10月14日の「鉄道の日」からスタートしたキャンペーン。コンセプトは「日本を発見し、自分自身を再発見する」。同時期に、国鉄提供の日本テレビ系紀行番組「遠くへ行きたい」(日曜午前6時30分)がスタート。永六輔氏が全国を旅した。永氏が作詞した主題歌「遠くへ行きたい」(ジェリー藤尾)は「知らない街を 歩いてみたい」と歌う。キャンペーンソングではなかったが、大きなPR効果を生んだ。

第2弾は「いい日旅立ちDISCOVER JAPAN2」。78年11月から山口(現三浦)百恵さんの「いい日旅立ち」がキャンペーンソングとなった。「あゝ日本のどこかに 私を待ってる人がいる」という谷村新司の歌詞と旋律が旅情をそそった。同曲は百恵さんを国民的歌手に押し上げる要因となった。

◆「エキゾチック・ジャパン」

78年5月に現・成田国際空港が開港すると、ディスカバー・ジャパンのターゲットだった若い女性(アンノン族)は海外旅行に引きつけられた。同時期に「カナダからの手紙」(平尾昌晃・畑中葉子)「飛んでイスタンブール」(庄野真代)「魅せられて」(ジュディ・オング)「異邦人」(久保田早紀)「パープルタウン」(八神純子)「サンタモニカの風」(桜田淳子)「ガンダーラ」(ゴダイゴ)など、外国が舞台の歌が続々とヒットした。

対抗して国鉄が打ち出したキャンペーンが「エキゾチック・ジャパン」だった。異国情緒ある日本をクローズアップするもので、キャンペーンソングには郷ひろみの「2億4千万の瞳-エキゾチック・ジャパン-」が起用された。曲は大ヒットし、キャンペーンも国鉄が分割民営化される87年まで続いた。

◆「クリスマス・エクスプレス」

国鉄分割民営化で誕生したJR東海が、88年から始めた傑作キャンペーン。ドル箱路線の東海道新幹線を持ち、クリスマス・イブに遠距離恋愛の恋人が新幹線のホームで再会するシーンをCMにした。CMソングは山下達郎の名曲「クリスマス・イブ」が効果的に使用された。CMのヒロインには深津絵里、牧瀬里穂、吉本多香美、星野真里らが起用された。

◆「AMBITIOUS JAPAN!(アンビシャス・ジャパン!)」

JR東海が、03年の東海道新幹線の品川駅開業などで行ったキャンペーン。TOKIOがキャンペーンソング「AMBITIOUS JAPAN!」を担当しヒットした。好評で、キャンペーンは05年9月まで延長された。

◆「三都物語」

JR西日本が、90年からスタートさせた京都・大阪・神戸の3都市観光キャンペーン。谷村新司の「三都物語」がイメージソングとして使用された。イメージキャラクターに石坂浩二、賀来千香子、竹内結子、仲間由紀恵らが起用され、CMに登場した。

◆「北海道新幹線×GLAY」

JR北海道が、16年3月26日に新青森駅~新函館北斗駅間で開業する北海道新幹線のプロモーションとして、同年1月からスタートさせた。函館出身のロックバンドGLAYとタイアップし、新曲「Supernova Express 2016」をイメージソングに起用した。

このほか、JR西日本が瀬戸内観光促進の目的で行ったキャンペーン「DISCOVER WEST」では、「いい日旅立ち」をリメークした「いい日旅立ち・西へ」(鬼束ちひろ)を使用した。JR東海の旅立つ若者のキャンペーン「ファイト!エクスプレス」では、「I LOVE YOU」(尾崎豊)や「SOMEDAY」(佐野元春)がイメージソングとして使われた。

鉄道はヒット曲が生まれる大きなテーマである。

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鉄道と音楽のアレコレを紹介する。

◆鉄道唱歌は334番

1890年(明33)に発表された。第1集「東海道編」、第2集「山陽・九州編」、第3集「奥州・磐城編」、第4集「北陸編」、第5集「関西・参宮・南海編」があり、全部で実に334番まである。正式タイトルは「地理教育鉄道唱歌」。当時の路線に沿って、地域情報や名所旧跡、名産品などが歌詞に登場した。まさに地理教育だった。

◆「汽車ポッポ」は軍歌だった

「汽車 汽車 ポッポ ポッポ」の歌い出しで知られる「汽車ポッポ」は、37年(昭12)に童謡「兵隊さんの汽車」として制作された。歌詞の「僕らを乗せて」の部分は「兵隊さんを乗せて」、「走れ 走れ 走れ」は「萬歳(ばんざい) 萬歳 萬歳」だった。戦後、オリジナルの作詞家・富原薫氏自身によって題名と歌詞が改められた。

◆「線路はつづくよどこまでも」はアメリカ民謡

原曲は19世紀の「I’ve been Working on the Railroad」(俺は線路で働いている)で、鉄道労働者の歌だった。62年にNHK「みんなのうた」で現在の歌詞で紹介された。

◆発車メロディー

列車が発車する際に流れるメロディー(乗降促進音)はヒット曲もあるが、東京メディアリンクスが制作した電子音が多い。スペイン語のタイトルの「Gota del Vient」(一滴の風)「Verde Rayo」(緑の光線)や「Water Crown」(水の冠)が有名。誰もが耳なじんでいる電子音だ。

▼鉄道 レールを敷いて、その上に列車や電車を走らせ、人や貨物を運ぶ陸上交通機関のこと。路面電車は「軌道」、ロープウエーは「索道」と言う。モノレールは鉄道に分類される。

◆笹森文彦(ささもり・ふみひこ)北海道札幌市生まれ。83年入社。主に文化社会部で音楽担当。夏休みに家族と寝台特急で帰省するのが楽しみだった。カシオペアにはメゾネットタイプの個室に2回乗車した。北斗星は4回。そのうち1回は、88年3月の開業直後に取材で乗車した。懐かしい思い出である。