正月恒例「福袋」の体験型が面白い 高座体験、高級ホテル宿泊…世相反映で「コト消費」に注目

西武池袋本店「八ケ岳高原ウェディング福袋」

<情報最前線:ニュースの街から>

百貨店の初売りの目玉といえば「福袋」だろう。2023年は、「コト消費」を狙った商品が復活しつつある。コロナ禍で内向きだったのとは一変、「再開」「3年ぶり」などがキーワードとなってきた。世相を反映する福袋。行動制限を緩和したり、全国旅行支援が始まるなど、世の中の動きと合わせて旅行をはじめ、見送ってきたアクティブな体験を詰め込んだ商品が目立っている。

「コロナ禍できなかったことを叶(かな)える!」(松屋銀座)とか、「福袋でサイカイ(再開・再会)」(西武池袋本店)など、百貨店のキャッチフレーズから、「コト消費」を狙っていることがうかがえる。

世の中では今年、規模の大小に関係なく3年ぶりに復活した催事が目立った。「おうちで○○」「巣ごもり」といったつつましやかな言葉が並び、インドア系が目立ったコロナ禍の昨年までの福袋とは内容が違う。

最も手控えていたことなら、旅行や結婚式が代表だろう。松屋銀座はカード保有者を対象に「ハワイ高級コンドミニアム宿泊体験福袋」(1袋、20万2300円)を販売する。ホノルルにある高級コンドミニアム5泊7日分とキャリーケースなどをセットにした。西武池袋本店では、「八ケ岳高原ウェディング福袋」(1個、10万円)を出してきた。新郎新婦の挙式、衣装、写真撮影、1泊2食付きスイートルームに、参列者10人の1泊2食付き宿泊までが加わる。

各店独自のつながり、地域性に特化した商品も目立つ。目玉は東武百貨店池袋本店が出す「スペーシアXとザ・リッツ・カールトン日光を満喫!豪華福袋!」(限定1組2人、80万円)。来年7月15日に運行を開始する東武鉄道の新型特急「スペーシアX」の浅草発1番列車の「コックピットスイート」に乗り、日光を観光する。宿泊は中禅寺湖畔のビュースイートルームだ。

西武つながりでは、西武池袋本店の「松井新監督から“獅子魂ノック”を受けられる!夢のノック体験&ベルーナドーム満喫福袋」(親子5組10人、2023円)が3年ぶりに復活(一昨年は募集したが、イベントは中止)する。プロ野球「埼玉西武ライオンズ」の松井稼頭央監督のノックを体験し、オープン戦を観戦する。同店では「母娘で案内係に変身福袋」(限定5個、2023円)を初めて出す。夏休みに子供向けイベントで行った「仕事体験企画」を採用した。

ほかにも、新宿高島屋では、地元のサッカーチームの協力で「目指せ未来の日本代表!新宿区サッカー協会代表チーム・クリアソン新宿所属の元Jリーガーによるプライベートレッスン福袋」(小学生6人、5000円)、日本将棋連盟のお膝元という地の利を生かし、高野秀行六段と室谷由紀女流三段の指導対局が受けられる「目指せ未来のプロ棋士!プロ棋士との真剣勝負&個別指導福袋」(小学生12人、5000円)を出してきた。

落語会を発足して来年で70年となる三越の初夢福袋では、「三越落語会で夢の高座体験~真打のお稽古&記念映像収録付~」(限定3人、165万円)もある。

松屋銀座で福袋を担当した河野正季さん(27)の言葉が今年の傾向を表している。「コト消費が下がることはありません。系列グループの強みや独自色、根ざした地域性などで百貨店らしさを出しています」。やはり、内向きより外向きの福袋の方が面白い。【赤塚辰浩】

※各福袋は応募多数の場合、抽選。ウェブサイトや店頭などで、すでに募集している場合もあり

■家電量販店やネットでも

百貨店の福袋は1990年代まで「店舗へ行って、買って、中に入っている物は開けてからのお楽しみ」との意味合いが強かった。価格1万円に対し、5万~6万円相当の物を入れて「お得感」を打ち出し、家族のうちの誰かが喜ぶ生活用品や衣料品が入っているというイメージが強かった。

バブルの時代には億単位の絵画、西暦×1万円とか西暦×1000円という高級車、貴金属など、豪華なイメージも兼ね備えていた。

今や初売りの福袋は各種専門店、家電量販店やネット業界など、さまざまな業種で売り出されている。消費者側もお目当ての商品や行動を選び、予算に見合うかどうか判断してから購入を決めている。

これに対応するため、百貨店側は事前告知をし始めている。10月下旬から11月上旬に記者発表もする。オンラインも合わせて「見える化」を図っている。「選択消費」をしてくれるお客さまを早めに取り込もうとの狙いを持っている。

■物価高へ対抗「生活応援型」

23年の福袋のもう1つの傾向は、物価高への対抗を含めた「生活応援」だ。

松屋銀座は「デリガチャ福袋~年の初めの運試し~」(限定50個、1080円)として、生ハム・サラミの詰め合わせセットなど3000~5000円相当の総菜が当たる福袋を地下1階で販売する。実際に足を運び、「何が出るのかお楽しみ」という従来の福袋の持つ「エンタメ性」も演出する。

「昔懐かし!駄菓子福袋」(応募抽選の限定5個、2023円)は、東武の昭和レトロ福袋の1つ。かつて駄菓子屋で買って食べたことがあるせんべい、カステラ、ドロップなど、何が入っているかは、開けてからのお楽しみ。昭和のおやつ1万800円相当を大人買いできる。

◆福袋 始まりについては諸説ある。江戸時代、日本橋の呉服店「越後屋」(三越の前身)で冬物の売り出しに合わせ、裁断した時に余った生地を袋に入れて販売したとか、大丸の前身「大丸屋」で同じように売ったとの記録がある。また、明治時代に松屋の前身「鶴屋呉服店」が始めたという説もある。