東国原英夫氏が畜魂慰霊碑の前で第一声「誰にも話したことのない事実」知事2期目断念理由明かす

宮崎県知事選に立候補した東国原英夫前知事は川南町の畜魂慰霊碑前で「向日葵や畜魂二十九万頭」という俳句を披露。俳句を持つのは長男加藤守さん、後方のマスクの女性は妻春香さん(撮影・寺沢卓)

宮崎県知事選が8日告示され、元職の東国原英夫氏(65)が川南町で第一声の街頭演説を行った。ほかに4選を目指す現職河野俊嗣氏(58)、政治団体代表「スーパークレイジー君」(本名・西本誠)氏(36)の無所属計3人が出馬した。投開票はクリスマスの25日。

2010年に発生した家畜の疫病口蹄疫(こうていえき)によって宮崎県内で約29万頭の家畜が殺処分された。その命を失った牛や豚など家畜の畜魂慰霊碑の前で東国原氏は知事選のスタートを切った。約50人の支援者が集まる中、東国原氏は「絶好の晴天の中、たった今、決戦の火ぶたが切って落とされます」と宣言した。

東国原氏は演説の前にこの地での第一声について「迷いました」と話し、2007年1月の知事選で最初に演説をした宮崎市の百貨店「山形屋」前とどちらにするか考えた結果のことと説明した。「ここは(宮崎県政の)原点ですから」と力を込め「口蹄疫が発症して、高鍋町の家畜改良事業団の県の所管するスーパー種牛5頭を西都市尾八重(おはえ)に私の政治判断で逃がしました」と当時明かさなかったことを集まった支援者に語りかけた。

東国原氏がスーパー種牛を逃がしたあと、ある組織団体から「東国原さん、あなたが種牛を動かしたのは家畜伝染病予防法違反になるんじゃないの? 脱法行為だったんじゃないの?」と指摘されたという。そして「あんたがそのまま知事でいるなら訴えますよ」と言われたことで、宮崎県政、及び県内牧畜関係者へのイメージダウンを回避できないと考え「私は断腸の思いで知事2期目を断念した。この12年誰にも話したことのない事実です」と真顔で話した。

そして随行する長男加藤守さん(32)が掛け軸を取り出してスルリと開いた。「向日葵や畜魂二十九万頭」との一句が書かれていた。7日夜、自らが筆を執って納得のいくまで何度も書き直した。16年に川南町を訪れ、殺処分された牛が眠る草原で咲いたきれいなヒマワリ畑を思い起こしてひねった俳句だった。「川南町で、口蹄疫の災害があったことを全国のみなさんに覚えてもらいたいという一念で書いたものです。だから、今回の第一声は川南町ではないと意味がないんです」と絞り出すように話した。

東国原氏は8月17日に宮崎県知事選への再挑戦を宣言する会見を宮崎市内で行い、その後県内を行脚して街頭とミニ集会を繰り返してきた。「県民のみなさんにたくさんお会いしました。そこで2期目に行かなかったことを素直に説明させていただいて『今度は見捨てないでね』『頑張れよ』とのお声掛けをいただきました」。

「安定した安全運転もいいでしょう、手堅い県政運営もいいです」と現職の河野俊嗣氏(58)の県政手法を評価しながらも「観光やら、移住やら、企業誘致やら(日本全国の)地方間でし烈な戦いが始まります。そんなときに普通の県政をやっていては生き残ってはいけません」と訴えた。

最後に握ったマイクを再び引き寄せた東国原氏は「宮崎県政に残る戦いになると思います。(宮崎県政の)風を変えること、宮崎の未来、夢、希望に向かう分岐点になると考えています」といったん言葉を切って「宮崎の命運を分ける、天王山だと思っております」と声を張り上げた。【寺沢卓】