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小規模なビール醸造所で製造されるクラフトビール(地ビール)がビール市場でシェアを伸ばしている。価格は大手国産ビールを上回るが、独自の醸造手法や手作りによる独創的な味わいで大手の代表的なビールと違いを際立たせる。コロナ禍による「自宅飲み」需要増もあり、やや高値でも個性的な味わいを求める波にも乗って堅調に伸び続けるクラフトビールをチェックした。
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若年層のビール離れやコロナ禍で飲食店需要が回復途上などで低迷するビール市場で、クラフトビールが着実にシェアを伸ばしている。第1回国際発酵・醸造食品産業展(11月29日~1日、東京ビッグサイト)でもクラフトビールメーカー8社が一堂に出展、試飲などで盛況だった。
埼玉・東松山市に醸造所があるCOEDO(コエド)ブルワリーも出展し、個性的なクラフトビールをアピールした。同社は1970年代から有機野菜の卸売り業が前身で、ビール醸造も地元農産物の有効活用からスタートした。紅赤(べにあか)は「最初に作ったビールで、地元のさつまいも(紅赤)を使ったもの」(広報担当)。紅赤は「124年前ぐらいに発見された品種で、昔ながらの循環式農法でしか、うまく育たない。今も落ち葉を堆肥にしている」(同)という、さつまいもを原料とするSDGs(持続可能)なクラフトビールで、香ばしい甘みと、赤みかがった琥珀(こはく)色が特徴だ。
94年に酒税法の一部が改正され、ビール製造における最低製造量が大幅緩和されたことで全国に地ビールブームが到来したものの、市場拡大には至らず、縮小したが、17年の改正でビールの製造免許が緩和されたことで再び、クラフトビールの醸造所が増加した。国税庁酒税課では「税制改正で発泡酒の製造免許を持っていた方に見なしでビール製造の免許が付与されたことが大きい」としている。
大手5社(キリン、サッポロ、アサヒ、サントリー、オリオン)の350ミリリットル缶は、都内のコンビニやスーパーで実勢価格198円~206円(税抜き)前後が多く、クラフトビールの実勢価格は248円~380円(同)前後と割高だがクラフトビールは着実に売り上げを伸ばしている。
国税庁はクラフトビールの醸造所数は17年度の184から20年度には405と4年あまりで2倍以上に増加した。全国地ビール醸造者協議会(JBA)会長で大山Gビール(鳥取)の田村源太郎社長は「国内の製造者の総数は700社近くになっていると思われ、年々メーカーは増えている」としている。また国内ビールの製造量は大手5社が98・9%、地ビールメーカーが1・1%(国税庁20年度発表)だが、「ここ数年で2~3%台に伸びるとみている」と田村氏は予測している。
大手もクラフトビールの動向を見過ごさない。キリンは昨年3月の第1弾「スプリングバレー 豊潤<496>」に続いて8月から「スプリングバレー シルクエール<白>」を投入するなど、今後も大手の参入が見込まれ、きりっと冷えたクラフトビールの市場は熱くなりそうだ。
独特の香りやコクやのどごし、多種多様な原材料にこだわった独創的なものばかり。ビール党でなくとも趣向にジャストミートする新しい発見もありそうだ。今年はクリスマスイブ、クリスマスが土曜、日曜日で、年明け元旦も日曜日と休日が続く。年末年始は自宅でクラフトメーカー各社の逸品を味わうのもいい。【大上悟】
◆酒税法改正 1994年に同法一部が改正され、ビールの製造免許に係る最低製造数量基準が2000キロリットルから60キロリットルに引き下げられた。2017年の税制改正でビールの定義が拡大され、18年3月31日までに発泡酒の製造免許を有していた者に対してビールの製造免許が付与された。
■盛岡市 ベアレン醸造所
ベアレン醸造所(岩手・盛岡市)は欧州の伝統的なビール醸造法を取り入れ、ドイツのブラウマイスター資格を持つ職人による本格ビールを2003年の創業から生産している。北山工場、雫石工場の2カ所に醸造施設があり、北山工場の醸造設備は1906年にドイツで製造された100年以上前の100%銅製仕込み釜をドイツ南部から日本に移設して使用している。
仕込みにはコンピューターを使用せず、職人の経験と感覚を生かしたヨーロッパの伝統的な醸造方法にこだわって造られた「クラシック」(希望小売価格364円税抜)は、苦みとコクのバランスが良く、しっかりとした味わいと、ドイツ産アロマホップを生かした上品な香りが特徴で15年に「世界に伝えたい日本のクラフトビール」を受賞している。
また昨年4月からラグビー界の名門「釜石シーウェイブス」とサポーター契約を結び、岩手・雫石町産のホップを使用した「釜石シーウェイブス応援ビール」(希望小売価格371円税抜)の発売し、被災地復興とラガーマン支援を行っている。
■富士市 フジスパークB.B.
ビール醸造を20年からスタートしたフジスパークB.B.(静岡・富士市)は大麦麦芽と小麦麦芽を独自配合した「富嶽麦酒」(350ミリリットル缶・希望小売価格350円税抜き)などを製造販売している。「富嶽麦酒」は英国スタイルのしっかりとしたコクと芳醇(ほうじゅん)な香り、苦みで「ジャパン・グレートビア・アワーズ2020」銅賞を獲得している。「香りとコクを追求したものでクラフトビールの特徴を生かし、大手さんとの違いを出している。お客様から上々の反応をいただいており、順調に出荷数を伸ばしている」(同社担当)としている。
■御殿場市 DHCビール
化粧品通販・健康食品のDHCが97年に設立したDHCビール(静岡・御殿場市)は、まろやかな富士山の伏流水を100%使用した「雑味がなく、口当たりは爽やかで、のどごしは清らかなテイスト」(広報部)のクラフトビールを目指している。「ベルジャンホワイト」はベルギー伝統スタイルの苦みをおさえたフルーティーなビールで19年の「ジャパン・グレートビア・アワーズ」の部門金賞を受賞している。