「カッキー」垣花正アナが愛されるワケ「隠さないのが俺流」和田アキ子番組に遅刻、借金の裏の顔

スタジオで笑顔を見せる垣花正アナウンサー(撮影・菅敏)

<オトナのラジオ暮らし>

2023年(令5)も首都圏の朝にさわやかな風を吹かせるのは、南の島から来た男、元日生まれの「カッキー」こと垣花正(51)だ。パーソナリティーを務める「あなたとハッピー!」(月~木曜午前8時~、ニッポン放送)は、放送開始15年目の昨年、聴取率調査で初の同時間帯首位を獲得した。遅刻、借金などダークな裏の顔も「隠さないのが俺流」と語るカッキーが「愛される理由(わけ)」とは。【取材、構成・秋山惣一郎】

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-ニッポン放送の朝の顔も今年秋には16年目に

「人間を陰と陽に分ければ、僕は陽だと思ってます。朝向きなんでしょうね。そもそも朝が好きなんですよ。学生のころから早寝早起き、試験勉強も一夜漬けならぬ早朝漬け。早く起きて乗りきるタイプでした。今は4時に起きて、6時半にスタジオに入りますが、ちっとも苦じゃないです」

-ニュース中心だが、コメンテーターとのかけ合いが楽しい。トークバラエティー的な味わいがある

「月~水曜のコメンテーターは、経済アナリストの森永卓郎さんです。ふざけためちゃくちゃなおじさんですが、ニュースを分かりやすく伝える説明能力は圧倒的に高い。そこは、全面的に信頼してます。そのバランスを取るのが、僕の仕事ですね」

「新潮社の中瀬ゆかりさんの木曜は、カルチャー、エンタメ寄りのお話が楽しい。中瀬さんおすすめのものは間違いない。目の確かさは、さすがです。と言っても知識や情報の人じゃない。結論のない話をすごく楽しく話す人。明るくて優しくて、サービス精神にあふれた会話の達人です」

-昨夏の聴取率調査で、番組開始15年にして初の時間帯単独首位を獲得した

「スタートしてしばらくは、試行錯誤が続きました。10年ほど前でしょうか。当時は、それぞれ週1日でしたが、森永、中瀬さんがそろった時、番組を聴いてくれていたミュージシャンの故大瀧詠一さんが『垣花、もう大丈夫だ』と言ってくださった。森永、中瀬が見つかったから大丈夫だよ、と。確かに、おふたりと組むと、自然とトークが弾むんです。時間はかかりましたが、1位を取れた。大瀧さんが言ってた通りだ、これが番組の完成型だと確信しました」

-番組で政治や社会について多くは語らないが、言いたいこともあるのでは

「20年ほど前、夕方のニュース番組を担当しました。僕は新聞も取ってなかったし、ニュースなんて分からない。分からないお前がやるから、面白いんだと言われました。分からない僕が専門家に聞いて、かみ砕いてリスナーに伝える。そういうスタンスじゃないと、僕がいる意味はない。その思いは、当時から変わっていません。沖縄の地元メディアから『基地問題について、もっと発信しては?』と言われたことがあります。沖縄の米軍基地は減らすべきだと常に考えていますし、思うところはいろいろある。でも僕の仕事は、政治や社会についてのさまざまな意見を聞くことであって、主張することではないと思っています」

-アナウンサー生活28年。山あり谷ありでした

「入社半年でオールナイトニッポンの2部を任されました。ニュースも満足に読めない、沖縄のアクセントも残ってる。そんなダメな部分が、逆におもしろいかもね、ということで抜てきされたんだと思います。自信はありませんでしたが、やってみれば何とかなると思ってました。でも番組開始5分で砕かれました。翌日には『あいつ、つまんねぇな』という評判が社内に広まった。ディレクターのトークバックの怒鳴り声、僕が『ハイ、ハイ』と答える声まで放送に乗るような番組です。ダメな上におもしろくもない。完全に0点。入社1年目で、すでに追い詰められたんです」

-ところが、2年目にキャラを変えて大ブレーク

「後がない僕は、もうやれることは何でもやります、という心境。夜の若者向け番組で、頭をモヒカン刈りにして『こんな会社、いつでも辞めてやる』と暴言を吐く。ディレクターに『爆竹入れた紙パンツ、当然、はくよな』と挑発されて『当たり前じゃねぇか』と受ける。三宅裕司さんや伊集院光さんがパーソナリティーを務めてきた王道の時間帯でしたが、きれいな笑いを取れない僕はムチャな企画に乗っていくしかなかったんです」

-当時は絶大な支持を得たようで、講談師の神田伯山をはじめ少年期に番組リスナーだったことを公言する有名人も多い

「爆竹がパンパンはぜて『危ない! 危ない!』なんて騒いでるだけの企画の何がおもしろいんですかね。そもそも画がないラジオでモヒカンにしたって意味が分からない。ところがリスナーは、そこを想像力豊かに楽しんでくれた。『聴いてました』と言われると、刺さる人には刺さったんだな、やってよかったな、としみじみ思いますね。それに、どんな番組でも、僕を起用してくれた人の期待に応えたいという気持ちは、いつも持ってました。こんな僕を使ってもらって本当に感謝しかありません」

-度重なる遅刻、多額の借金など、若者の人気者、さわやかな朝の顔とは違うダークな一面もある

「入社前の研修に始まって和田アキ子さんの番組、安室奈美恵さんの取材にも遅刻しました。人生終わったと思ったことも、土下座して謝ったこともあります。競馬の有馬記念で全財産スッて、タモリさんに借金を申し込もうとしたこともある。借金は一時、800万円もあって、完全におかしくなってました。まぁダメな部分も山ほどありますが、仕方ない。隠さないのが、僕流の戦い方です」

-故瀬戸内寂聴さんを怒らせたこともあったとか

「その日、寂聴さんはそもそも機嫌が悪くて、怒る気満々という感じでした。僕が寂聴さんの著作を読んでないことに加え、本の主人公、社会運動家の平塚らいてうを知らなかったことに『そんなことも知らないの!』と怒ったんです。僕に『不細工ね』とか『こんなに太って』とか言って、収録途中で帰っちゃいました」

-ダークな逸話は尽きることがありません

「プロデューサーは真っ青でしたが、僕は『モラルやコンプライアンスなんて関係ねぇ』とばかりのロックな姿に『寂聴の破壊力すげぇ』と、むしろ感心してました」

-メイン司会を務めるテレビ番組では、いじられキャラという一面も見せる

「テレビとラジオでキャラクターを使い分けてるつもりはありません。ラジオでは森永、中瀬というエースストライカーにパスを出せばいい。テレビでは共演するマツコ(デラックス)さんがやりやすいようにと思って言ったことが的外れで、いじられるという感じですかね。マツコさんがラジオに来れば、テレビと同じようにいじられてオロオロするでしょうし。キャラクターの使い分けというより『その人』との関係性で変わるんでしょうね」

-さて2023年秋には、放送開始16年目に入る。70~90年代までニッポン放送の朝の顔だった故玉置宏さん超えも見えてきた

「いやいやいや、何を言うんですか。とんでもない。玉置さん超えなんて口が裂けても言えません!」

◆垣花正(かきはな・ただし)1972年(昭47)1月1日、本土復帰直前の沖縄県宮古島市に生まれる。94年、ニッポン放送入社。95年、平日夜放送の「ゲルゲットショッキングセンター」に出演。暴走キャラ「LFクールK」で大ブレーク。その後も「ニュースわかんない!?」「朝はニッポン一番ノリ!」など同局の看板番組を数多く担当。19年、フリーに。現在は07年放送開始の「あなたとハッピー!」のほか「ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回」(土曜午前11時~、ニッポン放送)、「5時に夢中!」(月~金曜午後5時~、東京MX)にも出演中。