チャットGPT、Bing、Bard…どんな違いが?劇的進化続ける対話型AIを比べてみた

OpenAI、チャットGPTのチャット画面

<ニュースの教科書>

まさに日進月歩。人と普通の会話をしているように、質問や指示にスラスラ答える対話型人工知能(AI)が、今年に入って劇的に進化し続けています。この5月には、先行している米オープンAI社の「ChatGPT(チャット・ジーピーティー)」が、これまで“弱点”だった、回答への最新情報の反映を発表。米マイクロソフト社は「Bing(ビング)」を一般公開して誰もがすぐに利用できるようにし、米グーグル社も「Bard(バード)」の日本語対応をスタートさせるなど、競争がますます激化しています。G7広島サミットでも適切な活用をめぐって議論されました。どんな違いがあるのでしょうか。主な3つの対話型AIについて、特徴を紹介します(※5月時点)。

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対話型AIの起爆剤となったチャットGPTは、昨年11月に「3・5」(無料)が一般公開され、今年3月に進化した「4」(有料)がリリースされました。マイクロソフトは2月に新しいBing(無料)を公開。これまで利用するには順番待ちが必要でしたが、5月からすぐ利用できるようになりました。検索エンジン最大手のグーグルも、3月にBard(詩人の意味、無料)を米英で一般公開。5月からは日本語と韓国語に対応しました。日本のユーザーにとっては主な3つのAIの環境が整い、さらに活用が広がり始めています。

【使い方】いずれもアカウントを持っているか作成すれば、GPT-4以外は無料で使えます。Bingはマイクロソフトのブラウザedge(エッジ)を使い、ログインなしでも使用可能に(やや制限あり)。いずれもスマートフォンでも使えます(Bingはアプリ)。GPTは米国でiPhoneアプリの提供を始め、Androidなどにも対応予定だそうです。

【仕組み】GPTは、言語処理モデルが21年9月までのウェブ上のデータを学習して回答するため、これまで最新情報を反映できないことが“弱点”でしたが、オープンAIに投資しているマイクロソフトが5月23日、GPTにBingの機能を連携させ、回答に最新情報を反映できるようにし、有料会員から提供し始めたと発表しました。BingはGPT-4を搭載。最新までのウェブデータを検索し、GPTの学習に基づいて回答するイメージです。Bardも別の言語処理モデルとウェブデータに基づいて回答します。例えば「23年5月時点の日本の総理大臣はだれ?」と聞くと、BingとBardは「岸田文雄」と答え、3・5は5月中旬時点では「私の知識は21年9月までの情報しか持っていませんので、日本の現在の総理大臣については把握していません」などと答えます。

【回答】対話型AIは現状では基本的に、文章作成のほか、要約、翻訳、企画書、プログラミングの作成などを短時間で回答します。使う人が入力するプロンプト(指示や質問)の内容などによって、回答の精度や内容が異なります。GPTは文章やプログラムなどの作成が得意な印象。4は、3・5よりもはるかに精度が高いです。Bingは会話のスタイルが「より創造的に」「よりバランスよく」「より厳密に」の3つから選べ、回答が微妙に異なります。また回答と同時に、回答生成のために使ったウェブ上のソース(出典元)を表示。その回答に対する追加の質問案も提示します。Bardは1つの質問に対し、同時に3パターンの回答を出すのが特徴で、ユーザーはその中から選べます。グーグルドキュメントやGメールにも連携し、回答の転用などもできます。

回答に“個性”を感じることもあります。Bardはほかに比べてやや人間的な印象を受けることがあります。例えば「あなたがもし人間になれるとしたら、どんな性別、容姿がいいですか?」と聞くと、Bardは「もし人間になれるとしたら、女性になりたいです」などと答えましたが、BingやGPTは「私は人間になることに興味がありません。検索エンジンとして存在しています」「私はAIの言語モデルであるため、性別や容姿といった身体的な特徴は持ちません」などと回答しました。回答速度は、Bingが、やや時間がかかる印象です。

【画像、音声対応】Bardは音声入力が可能。画像認識などはいずれも順次対応予定ですが、Bardは英語のやり取りの回答には、画像も表示できるようにしました。

対話型AIの現状について、ITジャーナリストの三上洋さんはこう指摘します。「Bingはソースが出るのが一番の強み。ユーザーがファクトチェック(事実確認)しやすく、安心できます。この中では日本語がたどたどしい印象。Bardの日本語はなめらかでした。グーグルのいろんなサービスと連携していくのも強みです。GPTは創造性が高い。例えば、小説を書いたりするのが得意。ユーモアの要素も加わっています。正確性はいずれもまだ疑問が残ります。正しく使いこなすためには、質問を工夫したり、ファクトチェックなどが必要です」。

対話型AI業界は、GPTが先行し、日本でも企業や自治体などが積極的に活用を試行しています。今後、どう展開するのでしょうか。三上さんは「BingとBardは、ようやく日本の一般ユーザーにも使えるようになり、スタートに間に合った感じです。GPTは早期に外部サービスでGPTを利用できる仕組みを提供したため、企業などの利用が先行し関連サービスもすごく増えている。出遅れたBardは使い勝手がよく、グーグルの強みが出てきた印象です。今後はそれぞれ画像認識なども加わり、いろんな活用ができるようになると思います」とみています。その上で「同時に問題点も浮上しています」とし、▼AIのデータ学習における著作権や個人情報の問題▼正確性▼人の学習への影響、の3点も強調しています。【久保勇人】