羽生善治新会長、金髪で会見「若い子どもたちに将棋の素晴らしい奥深さを伝えていけたら」一問一答

日本将棋連盟会長として記者会見に臨む羽生善治九段

日本将棋連盟は9日、羽生善治九段(52)を新会長とする人事を発表した。

同日開催された棋士総会で、今年4月に行った役員(理事)予定者予備選挙(定員は東京5、関西2)で選出された羽生以下、森下卓九段(56)清水市代女流七段(54)西尾明七段(43)片上大輔七段(41)、脇謙二九段(62)と井上慶太九段(59)を承認。新たな役員による理事会で、羽生が会長に選出された。2017年(平29)2月からここまで務めてきた佐藤康光会長(53)は退任する。

新会長として記者会見の冒頭、髪の毛を金色に染め、ネクタイを締め直して初仕事の記者会見に臨んだ羽生は「私自身にとって初めての役職。まったく慣れていない職に就く訳ですが、将棋界は諸先輩の方々が必死の思いで約100年の歴史を紡いできました。この伝統を次の世代にいい形でつないでいけるよう、力いっぱい尽くす所存です」と、あいさつした。その後、臨んだ会見での一問一答は以下の通り。

-いつごろ理事への立候補を決めた

羽生 将棋連盟の役員は1期2年になります。今回は3月末日が締め切りでしたが、その近い段階で決断をすることになりました。立候補の理由について、将棋連盟はずっと棋士の人たちで運営してきました。最近は外部の有識者にも入っていただいてさまざまなサポートをしてもらっています。そういった姿を見て、私自身、本当の意味で将棋界に貢献できるのか考えていたところではありました。最終的にこのタイミングで出てみようと決意をしました。

-同世代の佐藤会長の様子を見ていたと思いますが、交わした言葉はありますか

羽生 佐藤さんとは日常的にコミュニケーションを取っていると言いますか、いろいろな形で話をしています。はた目で見ていて会長職は激務で毎日毎日、大変な思いをしながら仕事をこなされている姿を見ていました。私自身、佐藤さんの同じように働けるのか考えたりもしたんですけど、大変さを見つめながら立候補することになりました。

-新会長としての夢があれば

羽生 まだ就任してわずか数時間しかたっていませんが、最近は藤井聡太さんの活躍もあり、将棋の世界に大きな注目を集めていると感じています。そこで若い子どもたちの世代に将棋の素晴らしい、奥深さを伝えて行けたらいいなあと思っています。もう一つは、将棋の世界はさまざまな個人や団体に支えていただいていますが、地方の自治体の皆さまとも連携を深めて将棋を広く普及するだけではなくて、活性化のちょっとしたお手伝いができたらいいなと考えています。

-棋士と会長との二刀流で両立できるという意識や決意は

羽生 佐藤さんもそうでしたし、大山先生(大山康晴十五世名人)も私の師匠の二上(二上達也九段)もそうでした。プレーヤーをしながら運営をしていくことは将棋の世界ではたくさんあった例だと思います。その大変さは実際に業務を行ってみないとわからない面はあるんですけど、今までの流れを含めて自分自身もできることをやりきれたらいいと思っています。

-対局の以外のイベントなど今までやってきたことをあきらめて、会長職に従事しなければという思いは

羽生 物理的に時間が限られますし、今までと同じ活動ができるかは未知数。忙しくなった方が、しっかり時間管理をして、メリハリをつけながら活動できると考えています

-師弟で会長となりましたが

羽生 私が11歳で入門とした時からずっと役職を行っていたので、ずっと姿を見てきています。将来、自分が役職に就くというのは想像できなかったというのが率直な感想です。

-地方自治体との連係の具体的なプランは

羽生 将棋の世界では研修会という組織が北海道、東北、東京、東海、関西、九州と全国の大きな拠点にあります。そういった場所を軸にしながら、地元の皆さまと協力しながら、さまざまな活動が行えればいいと思います。

-来年、将棋連盟は100周年。会長として新会館の建設も含めた決意のほどを。このことが立候補への動機になったのですか

羽生 来年創立100周年という大きな節目を迎えます。偶然ではあるのですが、そのタイミングで東西の将棋会館が新しい場所に移転します。まだまだ資金面など解決しなければならないところは多々あるのですが、非常にアクセスのいい場所に移転するということもあります。将棋ファンの皆さんに喜んでいただける場所になればいいと思います。それが直接的な立候補の理由ではありません。

-会館建設を控えての就任というのは、大山会長の時と流れが似ていますが

羽生 そのころ私はまだ将棋を始めておらず、リアルタイムでどうだったかは知らないのですが、さまざま先輩方からその時の話しというのは聞いています。個人的ですが、初めて小学生名人戦に出た時がこの将棋会館にある道場で開催されていました。最初に将棋の道に進む原点のような場所だと思っていますし、そういった場所を次の世代の方にも残すことができたらいいなと思っています。

-周囲からの待望論が大きかったのか、自分自身の思いからの立候補ですか

羽生 将棋の世界というのは一般の世界と違っているところがあり、一般的に組織は入って1つ1つ段階を踏んで運営をするという流れになると思うんです。私自身は棋士としてずっと活動は続けてきましたが、運営そのものに携わるのは今回が初めてになりますので、何かすごく大きな決意をもって臨むというよりは、周りの人たちに迷惑をかけるのではといった不安を考えていたところがありました。職務に就いた以上は、そういう気持ちは振り払って全力で仕事に臨むということです。

-人工知能(AI)を使って棋士が研究したり、見られる部分も変わってきていますが、会長としてどのように将棋の魅力を伝えますか

羽生 最初に言えることは、AIができたことによって棋士のレベルは全体的に確実に底上げされたと思っています。将棋は長い歴史のある伝統的な世界ではあるのですが、新しい技術であったり、中継の時に評価値を表示して将棋をあまり知らない人たちにもわかりやすく伝えていく工夫、やり方がまだまだたくさんあるのではないかと思っています。そういったものも積極的に取り入れながら、日本が誇るべき伝統的な文化だと思っている将棋をいろいろな形で楽しんでもらえる機会、場所を提供できればいいと思います。