元フジ露木茂アナウンサーが感じたムツゴロウさんの教え 映画「子猫物語」でナレーション

06年11月、ムツゴロウ動物王国の犬と映画「名犬ラッシー」の試写会に出席した畑正憲さん

芸能界では坂本龍一さん、谷村新司さん、KANさん、小説家では大江健三郎さん、森村誠一さん、漫画家では松本零士さんら、2023年(令5)は、長年いろいろな分野をリードしてきた方々が亡くなった。「ムツゴロウ」の愛称で親しまれた作家の畑正憲さんは、統計開始来最高温度を記録した4月に逝った。心筋梗塞、87歳だった。半生を象徴する動物王国と映画「子猫物語」で、素顔に接した元フジテレビアナウンサーの露木茂さん(83)は改めてその異才を悼む。

畑さんが北海道に移り住み、動物王国を開園したのは1972年だった。巨大企業化を嫌って学研を退社してから5年、動物ノンフィクションなどですでに作家としての地位を確立していた。

後にその理由を「生物に触れさせながら育てた娘がその命を奪って食べることを拒絶するようになったことに衝撃を受け、『表面的な生きもの好き』を払拭させようと決意した」と明かしている。

露木さんが動物王国を訪ねたのは80年。フジテレビ「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」が始まる直前だ。

「2泊3日、畑さん自ら案内してくださいました。敷地の中を川が流れていて、大きなサケが上がってくるのに驚かされ、どの動物にも家族のように愛情をそそいでいらっしゃいました。ですが、その1頭のヒツジをつぶして私たち取材班を歓待しようか、みたいなことを平然とスタッフの方と話していたのは、正直ショックでした。後から考えれば、それが畑さんにとって当たり前の動物と人間の関係なんですね。食べてあげるのが、そのヒツジのためと。いや、おいしくいただいたんですけどね」

監督・脚本を手がけた映画「子猫物語」(86年)は750万人を動員。米国でも、今月「ゴジラ-1.0」に抜かれるまで、邦画実写作品歴代1位を堅持していた。露木さんはこの作品のナレーションを担当した。

「動物たちはそれはそれは表情豊かで、撮った畑さんの深い愛情を感じました。3日間スタジオに缶詰めになるのは初めての体験でしたが、楽しかった。『君の声はカタカナに聞こえるからひらがなのように柔らかくしてほしい』と言われたことを覚えています」

一見粗っぽい動物たちとの交流が奇跡のようにかみ合ったのは、そんな繊細さがあったからに違いない。

【相原斎】

◆露木茂(つゆき・しげる) 1940年(昭15)12月6日東京生まれ。63年フジテレビ入社。「小川宏ショー」の司会で注目され、あさま山荘事件など多くの事件で報道キャスターを務めた。02年フリーに。