石破茂首相は6日の参院予算委員会で、日本維新の会の猪瀬直樹議員との質疑に臨んだ。作家でもある猪瀬氏の代表作「昭和16年夏の敗戦」に触れ「この(本の)価値は不滅のものがあると、原作者を前に申していく」と述べた。
同作は、第2次大戦で日本が米国との開戦に踏み切る前、各界の精鋭が集まった「総力戦研究所」が出した「日本必敗」の指摘に耳を貸さず、結論ありきで開戦に踏み切った日本の姿を描いたノンフィクション。その作者と質疑する立場となった石破首相は「よもやこんな場面が来るとは夢にも思わなかった」と述べた。防衛庁長官や防衛相を歴任したが、「猪瀬直樹さんの『昭和16年夏の敗戦』だけは必ず読め、とお勧めをいただいた。その時に『昭和20年夏の敗戦』じゃないの? と言ったら、違うんだと。敗戦はすでに昭和16年に決まっていたんだというお話だった」と振り返り、「総力戦研究所」の知識もとうとうと語った。
「シミュレーションの結果、何をやっても勝てない。いかなる理由があってもこの戦争を始めてはいかんということが結論であったが、それは顧みられることなく開戦に至り、日本はあのように悲惨な道をたどっていった。概略はそのようなことで…原作者を前にして言うことでもありませんが、そのように覚えています」と述べると、委員会室に笑いが起きた。
石破首相は「情報の開示とは何であるか、みんな分かっていたのになんでこれを始めたのか。私は、若い方に『安全保障は何を読んだらいいですか』と聞かれることが時々あるんですが、真っ先にお勧めする。この本の価値は不滅のものだと、原作者を前にして申し上げておくものであります」とも口にした。
猪瀬氏は、2010年の民主党菅直人政権当時、野党議員だった石破首相が衆院予算委員会で同作を手に質問した様子をパネルでも紹介。首相の評価に「ありがとうございます」と応じた上で、本論に入った。「昭和16年の時の軍事費は右肩上がりだった。(現代の)医療費も同じ角度で上昇している。あえてパラレルに考えたい」として、社会保障関連費が増え続ける現状と、戦前の軍事費を比べて言及。「(一般歳出に占める)社会保障関連費の割合は約56%。昭和16年当時の軍事費と同じふくらみ方で国家予算の半分を占めている」とした上で「無駄なものがあっても削れない。(自作を)深く受け止めていただいている石破総理には、同じ轍(てつ)を踏まず、(日本が)破綻に向かわないためのお考えをお聞かせ願いたい」と、ただした。