夏の甲子園8月16日は名勝負の日 雨中の江川、箕島の奇跡、松井の敬遠、松坂vs杉内…

1973年8月17日付 日刊スポーツ東京最終版

<ニュースの教科書>

全国高等学校野球選手権大会(甲子園球場)は連日、熱戦が続いている。107回を迎えた夏の甲子園で、きょう「8月16日」は歴史にも記憶にも残る名勝負が多い日として知られる。星稜(石川)と箕島(和歌山)の延長18回の死闘。雨に散った怪物・江川卓(栃木・作新学院)。松井秀喜(星稜)の5打席連続敬遠。松井裕樹(神奈川・桐光学園)の2試合41奪三振など。後にプロで活躍する選手が数多く登場する。「名勝負の日」を振り返る。(敬称略)【笹森文彦】

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第107回全国高等学校野球選手権大会はきょう16日で、大会11日目を迎える。最近は猛暑対策で休養日を設けているが、8月中の熱戦は昔も今も同じだ。

そんな中、「8月16日」は高校野球史に残る試合が多い日として知られている。しかも、プロ野球に進み活躍する選手たちが数多く登場する。別表を参考にしながら、「名勝負の日」を振り返ってみよう。

■史上初延長18回引き分け再試合

1958年(昭33)8月16日の第40回大会準々決勝。徳島商の板東英二(元中日)と魚津の村椿輝雄の投げ合いで0-0。史上初めて「延長18回引き分け再試合」となった。

この大会から採用された規定で、きっかけは板東だった。同年の春季四国大会で、板東は準決勝で延長16回、決勝で延長25回を1人で投げ抜いた。これにより高野連は健康上の理由から、前記規定を定めた。その適用第1号も板東だった。

ちなみに00年から規定は「延長15回」に変更され、18年から現在の「タイブレーク方式」になった。

■雨に散った「怪物」江川卓

73年8月16日の第55回大会2回戦で、江川卓(元巨人)の作新学院と銚子商が対戦。栃木大会で決勝を含む3試合でノーヒットノーランを達成した江川は、怪物として注目されていた。1回戦は柳川商(現柳川、福岡)に延長15回23奪三振の2-1で勝利した。

銚子商の土屋正勝(元中日)と投げ合い、0-0の延長12回裏1死満塁。雨が激しくなる中、江川が投じた169球目が高めに浮き、押し出し四球でサヨナラ負けした。

■箕島奇跡のサヨナラ

79年8月16日の第61回大会3回戦で、春夏連覇を目指す箕島と星稜が対戦した高校野球史上最高の試合。延長12回表に星稜が2-1と勝ち越したが、その裏2死から箕島の1番嶋田宗彦(元阪神)が同点ホームラン。同16回表に星稜が3-2としたが、その裏2死から6番森川康弘が再び同点ホームラン。直前に森川の放った一塁邪飛を、星稜一塁手が転倒して捕球できないという伏線があった。テレビ実況で「甲子園球場に奇跡が生きています!」の名言が生まれた。

延長18回に箕島が4-3でサヨナラ勝ちし、連覇を果たした。

■松井秀喜5打席連続敬遠

92年8月16日の第74回大会2回戦で、星稜の松井秀喜が、明徳義塾の作戦で5打席連続敬遠された。1回は2死三塁、3回は1死二、三塁、5回は1死一塁、7回は2死走者なし、9回は2死三塁だった。明徳義塾の投手は20球すべて大きく外れるボールを投げた。この敬遠策は賛否両論の社会問題に発展した。松井はその後、巨人、ヤンキースなどで大活躍した。

■松坂大輔vs杉内俊哉

98年8月16日の第80回大会2回戦で、鹿児島実の左腕・杉内俊哉と横浜の松坂大輔が激突した。杉内は1回戦の八戸工大一(青森)戦でノーヒットノーランを達成しており、両エースの対決に注目が集まった。予想通り白熱の投手戦が続いたが、8回に松坂の2ランなどで5点を奪い試合を決めた。松坂も決勝(対京都成章)でノーヒットノーランを達成。1大会ノーヒットノーラン2回は59年ぶりだった。杉内はダイエー(現ソフトバンク)と巨人で、松坂は西武やレッドソックスなどで大活躍した。

■松井裕樹2試合41奪三振

12年8月16日の第94回大会2回戦で、桐光学園の松井裕樹(パドレス)が常総学院から19三振を奪い7-5で勝利。1回戦の今治西戦で10連続を含む22三振を奪っており、2試合で41奪三振を記録した。これは板東(徳島商)の持つ2試合40奪三振を抜き新記録。松井は準々決勝(光星学院=青森)で破れるが、4試合で計68奪三振を記録。これは夏の大会では板東、斎藤佑樹(早実)に次ぐ歴代3位。

■高橋光成連続1-0完封

13年8月16日の第95回大会2回戦で、初出場の前橋育英・高橋光成(西武)が樟南を1-0で完封。1回戦でも岩国商を1-0で完封しており、2試合連続1-0完封は37年ぶり7人目だった。その後も横浜、常総学院、日大山形、そして決勝の延岡学園(宮崎)を撃破し、大阪桐蔭以来22年ぶり15校目の初出場初優勝を果たした。

この他、日南学園・寺原隼人投手(元ソフトバンクなど)の157・68キロ計測や関東第一・オコエ瑠偉外野手(巨人)のスーパーキャッチなど話題となった試合も8月16日だった。

きょう16日の試合で、新たな歴史が刻まれるかもしれない。

○…プロ野球でも8月16日に歴史に残る試合がある。13年8月16日に、楽天の田中将大(現巨人)が西武戦で、12年からの無傷の21連勝を達成。松田清(巨人)、稲尾和久(西鉄)が持つ20連勝を抜き、プロ野球新記録を樹立した。田中はこの年、開幕24連勝、12年から28連勝、ポストシーズン含め30連勝で、ギネス世界記録に認定された。翌年、米大リーグのヤンキースに入団した。ちなみに、メジャーリーガーのダルビッシュ有(パドレス)は86年8月16日に生まれた。