<ニュースの教科書>
大阪・関西万博が13日に閉幕した。同万博の開催中の8月に、芸術家・岡本太郎氏がデザインした大阪万博(70年)のシンボル「太陽の塔」が、55年の時を経て「重要文化財(建造物)」に指定された。万博関連では初めて。岡本氏はつくば万博(85年)でもモニュメント「未来を視(み)る」を制作し、保存されている。大阪・関西万博のシンボル・大屋根リング(全周約2キロ)も一部保存が決まった。岡本氏の2つの遺産を中心に、過去の万博が残したものを振り返る。【笹森文彦】
■歴史的な価値を再確認
大阪・関西万博のシンボルの大屋根リングが、一部保存される。日本で開催された万博は今回で6回目。その新たなレガシー(遺産)となる。
その代表的な存在が、芸術家・岡本太郎氏がデザインした「太陽の塔」だ。1970年(昭45)にアジアで初めて開催された大阪万博のシンボルである。当初は閉幕後に解体予定だったが、反対の声が強く、75年に永久保存が決定。補強等を行い、万博記念公園で一般公開されている。
その太陽の塔が55年後の、大阪・関西万博開催中の8月27日に、「重要文化財(建造物)」に指定された。岡本氏の巨大で特異なデザインを、絶妙なバランスで具現化した技術。そして「高度経済成長期の日本を象徴する記念碑的なレガシー」という歴史的価値から、重要文化財に値すると評価された。万博の遺産では初めてである。
太陽の塔は、大阪万博のテーマ展示プロデューサーに起用された岡本氏が「べらぼうなものを作る」と公言してデザインした。「べらぼう」とは、途方もないの意味。「芸術は爆発だ!」の名言で知られる岡本氏らしい表現だ。
その言葉通り、高さ約65メートルの胴体に、片方だけで約25メートルの腕が取り付けられた。メイン会場の屋根を突き破ってそびえ立った。
塔の頂部には未来を象徴する「黄金の顔」。正面中央に現在を象徴する「太陽の顔」。背面に過去を象徴する「黒い太陽」の3つの顔がデザインされた。いずれも眼が印象的だ。地下には「地底の太陽」と呼ぶ第4の顔があった。さらに塔の内部には生命の進化をたどる高さ41メートルの展示物「生命の樹」があった。
大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」。太陽の塔は、未来志向のテーマとは逆の、生命の起源へとさかのぼる。岡本氏の哲学が凝縮された、まさに「べらぼう」な構造物だった。
岡本氏は大阪万博から15年後の85年に開催されたつくば万博でも、モニュメント「未来を視る」を制作している。
高さ約11メートルで、大きな透明な眼で未来を見据える3つの顔が、胴体部分にデザインされている。顔と眼を描くのは、太陽の塔と同様である。
岡本氏は「顔は宇宙だ。顔は自であり、他であり、全体なのだ。そのど真ん中に眼がある。それは宇宙と一体の交流の穴」と語っている。この岡本氏の生涯のモチーフが、太陽の塔と未来を視る像にも反映されているのだろう。
モニュメントは万博閉幕後、科学万博記念公園に展示された。その後、05年のつくばエクスプレス開業を機に、万博記念公園駅の駅前広場に移設されている。太陽の塔ほど認知度は高くないが、この地で万博があった証しとして、今も未来を見据えている。
大阪・関西万博の大屋根リングも、万博の遺産として、いつまでも存在感を示してほしいものだ。
■世界最大の木造建築物
大阪・関西万博は4月13日に開幕。184日間で一般来場者は約2558万人が訪れて、10月13日に閉幕した。
そのシンボルが、スギやヒノキなどを使用した木造建築物の大屋根リング。全周約2025メートルで、世界最大の木造建築物としてギネス世界記録に認定された。
9月中旬、関係者による検討会で、閉幕後の活用について協議。「大阪メトロ夢洲駅に近い、リングの北東200メートルを人が上れる原形に近い形で残し、その周辺を大阪市が万博を記念する市営公園として整備する」ことで合意した。
万博の建築物は「仮設建築物」で、通常は閉幕後に解体される。保存には改修費、維持・管理費の問題があった。しかし来場者の好評などを背景に、一部保存が決まった。大阪府の吉村洋文知事は「大きなハードレガシー(物質的遺産)になる」と話した。解体される部分の木材は、能登半島地震の復興公営住宅の資材などに使用されるという。
■次回は27年横浜「国際園芸博覧会」
日本での次回の博覧会は、27年3月19日から9月26日まで、横浜市の旧上瀬谷通信施設(元米軍所有地)で開催される「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」だ。メインテーマは「幸せを創る明日の風景」。園芸文化の普及、花と緑あふれる暮らしの実現などを目的に開催される。90年の花の万博以来、37年ぶりの国際園芸博覧会となる。
■「月の石」「研究拠点」「ジブリパーク」など
6回開催された万博が残したものを紹介する。
◆日本万国博覧会(略称・大阪万博)
<1>1970年3月15日~9月13日(183日間)<2>大阪千里丘陵<3>「人類の進歩と調和」<4>会場跡地は72年に、太陽の塔のある万博記念公園として開園。米アポロ11号が持ち帰り大人気だった展示物「月の石」は、東京・国立科学博物館で展示されている。
◆沖縄国際海洋博覧会(略称・沖縄海洋博)
<1>75年(昭50)7月20日~76年1月18日(183日間)<2>沖縄・本部町<3>「海-その望ましい未来」<4>会場跡地は76年に国営沖縄海洋博覧会記念公園(後に国営沖縄記念公園に改称)として開園。沖縄美ら海水族館は人気。シンボルの海上都市アクアポリスは、その後解体された。
◆国際科学技術博覧会(略称・つくば万博)
<1>85年(昭60)3月17日~9月16日(184日間)<2>筑波研究学園都市(現つくば市御幸が丘)<3>「人間・住居・環境と科学技術」<4>会場跡地のほとんどが筑波西部工業団地となり、医薬品、高分子材料などの研究開発が行われている。科学万博記念公園も造られ、憩いの場となっている。
◆国際花と緑の博覧会(略称・花の万博)
<1>90年(平2)4月1日~9月30日(183日間)<2>大阪鶴見緑地<3>「花と緑と生活のかかわりを捉え 21世紀へ向けて潤いのある社会の創造を目指す」<4>会場跡地は花博記念公園鶴見緑地となり、四季折々の草花と自然を満喫できる都市公園として親しまれている。植物園「咲くやこの花館」などが現在も残る。
◆2005年日本国際博覧会(略称=愛・地球博)
<1>05年(平17)3月25日~9月25日(185日間)<2>愛知・瀬戸市南東部、豊田市、長久手市<3>「自然の叡智」<4>会場跡地には06年に愛・地球博記念公園(愛称モリコロパーク)が開園した。多くの施設の中で、「となりのトトロ」などスタジオジブリ作品の世界を表現した「ジブリパーク」が人気を博している。
◆2025年日本国際博覧会(略称=大阪・関西万博)
<1>25年(令7)4月13日~10月13日(184日間)<2>大阪湾の人工島・夢洲<3>「いのち輝く未来社会のデザイン」<4>会場跡地近くには、カジノ施設やホテル、国際会議場などを含む国内初の統合型リゾート(IR)が建設予定で、工事が始まっている。
【注】<1>開催期間<2>場所<3>テーマ<4>その後