伊藤匠2冠「フルセットでの対局に喜び」 同学年の藤井聡太から王座を奪い「充実していた」

初の王座獲得から一夜明け会見する伊藤匠王座(撮影・小島史椰)

藤井聡太王座(竜王・名人・王位・棋聖・棋王・王将=23)との将棋「第73期王座戦5番勝負」を3勝2敗で制し、初めて王座を獲得した伊藤匠王座(叡王=23)が激闘から一夜明けた29日、対局場でもあった甲府市「常磐ホテル」で会見に応じた。

昨年6月の叡王に続き、同学年の藤井を下してのタイトル奪取色紙に「二冠」と揮毫(きごう)した。今の心境だろう。ファンや家族、多くの棋士仲間から祝福のメッセージが届いていた。「師匠(宮田利男八段)とはやりとりができていないところがあるので、これからご報告できればと思っています」と苦笑いした。

今シリーズについて、「フルセットまで戦うことができて、いろいろ課題が見えてきた部分もありましたけど、よい部分も出せた。充実していたと思います」と振り返る。シンガポールでの開幕局は初めての海外だった。「将棋の内容は悔いの残る部分があったのですが、観光できたりして楽しめました」と言う。

第3局(9月30日、名古屋市)や第5局は競り合いから抜け出した。「苦しい状態で終盤を迎えることがタイトル戦ではよくある。その中で勝ちきる部分が多い。形勢が苦しい中でも最善を尽くして指し続けるというのが最近はできていると感じています」と語った。

タイトルはこれで叡王2期、王座1期の計3期獲得。いずれもフルセットの末に制し、今回は九段に昇段した。常磐ホテルでは昨年の叡王戦5番勝負でも第5局を制し、藤井聡太8冠(当時)から初タイトルとなる叡王を獲得している。実は今年6月の叡王戦も斎藤慎太郎八段の挑戦を下し、初防衛している。

この点、「タイトル戦は1局ごとにいろいろな場所を転戦する。1局でも多く対局するのが理想と思っていますし、2勝1敗で迎えた時点で4局目で勝ちを目指していたのですが、フルセットまで対局できるのはよいことと感じていましたので、フルセットの状況で対局できるという喜びを感じながら、対局していました」と話す。粘りと踏ん張りが身上になっている。

伊藤は現在、王将戦挑戦者決定リーグ戦に初めて参加し、棋王戦挑戦者決定トーナメントでベスト4と、挑戦者争いに絡んでいる。名人挑戦権を目指すA級の下のクラス、13人総当たりのB級1組では6勝1敗でトップを走る。上位2人に入れば、来年度はトップリーグのA級に初参加できる。「長い戦いではありますが、1局1局やっていきたい」と先を見据えていた。