将棋の名人獲得経験者で、「ひふみん」の愛称で親しまれていた加藤一二三(かとう・ひふみ)さんが22日(木)午前3時15分、都内の病院で、肺炎のため亡くなった。86歳だった。同日、所属事務所が発表した。
加藤さんは数々の名勝負を生んだ。中でも語り草なのが、当時18歳で五段の羽生善治九段(55)と戦った89年のNHK杯将棋トーナメントの2回戦。負けはしたが、今でも長らく語り継がれている。
先手が羽生、後手が加藤さん。戦型は「角換わり」で羽生が中盤で指した「5二銀」が絶妙手。指された瞬間、解説者の米長邦雄さんも「おおおー! やった! すごい手だ」と驚きの声を上げた。加藤さんは負けはしたが、双方に強烈なインパクトの残した名局だった。
加藤さんの家族によると、加藤さんは24年正月すぎあたりから体調を崩し、入退院を繰り返していた。同年11月の詰め将棋掲載連続回数のギネス認定式、25年5月の棋王戦50周年記念祝賀会に出席した際には車いす姿だった。
加藤さんは1940年(昭15)、福岡県生まれ。54年8月、14歳7カ月で初の中学生棋士としてデビューした。この最年少記録は、16年10月、14歳2カ月でデビューした藤井聡太4段(当時)に更新されるまで、62年間破られなかった。
棋士生活63年で通算1324勝1180敗。戦前生まれの名人経験者として最後の存命者であり、50年代から00年代まで、各年代で唯一A級に在籍した棋士でもある。