第51回衆院選は8日、投開票され、「私か、私以外か」を争点に異例の真冬選挙に踏み切った高市早苗首相(64)の人気を追い風に、自民党が歴史的圧勝を収める見通しとなった。高市自民に対抗するため立憲民主党と公明党がドタバタ合体した「中道改革連合」は、立民出身幹部の多くが小選挙区で敗れるなど、大敗を喫する見込み。政策議論は深まらず、有権者の「早苗推し」の空気が支配する異例の選挙戦となった。日本政界の地図は今後、様変わりする可能性がある。
◇ ◇ ◇
高市首相は8日夜、自民党本部に入り、当確が出た候補者に赤いバラの花をつけた。最初は硬い表情が、すぐに笑顔になった。その前には、ミラノ・コルティナオリンピック(五輪)スノーボード男子ビッグエアで金メダルを獲得した木村葵来(21)に直電。「日本中に大きな感動と勇気を与えていただいた。たゆまぬ努力と準備を重ねて大舞台で見事に実力を発揮された。心から敬意を表します。むちゃくちゃうれしいです」と祝意を伝えた。
自身は、衆院選で自民党に歴史的な勝利をもたらした。「高市早苗が総理でいいのか、主権者たる国民のみなさんに決めていただくしかないと考えた」。こう話し、だれも予想しなかった真冬の解散総選挙に踏み切った高市首相は、高い内閣支持率による「早苗推し」の空気を全国に広げ、自民党内でも「想定以上」(関係者)の圧勝に導いた。 高市首相が取った戦略は、「政権選択選挙」だった。「(与党が)過半数の議席なら高市総理で、そうでなければ野田総理か斉藤総理か別の方。間接的でも首相を選んでいただくことになる」。就任から3カ月あまりで、電撃奇襲的に解散に踏み切る判断をした。野党は「大義なき解散」と批判したが、高市首相は従来の自民党の立場とは異なる「責任ある積極財政」などの政策を進めたいとして、「まず、納税者のみなさんの審判をいただかないと誠実ではないと考えた」と説明。連立の枠組み変化も信を問う理由としたが、本音は別のところにあったとの見方は強い。
高市首相は「獲得できなければ退陣」と退路を断ったが、勝敗ラインは「与党で過半数(233議席)」と、いささか低く、本音は「少数与党からの確実な脱却」。街頭演説では、少数与党となったことで、立憲民主党(当時)に予算委員会や法務委員会などの重要委員長ポストを握られ、法案審議が思い通りに進まないと、いらだちをにじませることもあった。
公示日の第一声では「私は本当に歯を食いしばって、30年以上かけてやっと内閣総理大臣になれた。今までできなかったかも知れない仕事が、できるかもしれない」。持論の実現に並々ならぬ決意を述べていた。
日本初の女性総理。はっきりした物言い。石破前政権からの明らかな変化に、離れていた自民支持層に加え、若者や無党派層の支持も引き寄せた。就任後、台湾有事をめぐる国会答弁などが批判されても内閣支持率は下がらず、選挙中にも「円安ホクホク」発言や、NHK討論番組の「ドタキャン」問題などの言動に批判が集まったが、不思議と逆風にはならなかった。
愛用品が売れる「早苗売れ」や、高市首相を支持する「早苗推し」と呼ばれる現象で、今まで政治に関心が薄かった層への支持も広げた。「強さ」を前面に押し出したアピールは、既成政党同士の「数合わせ」と映った「中道改革連合」とは異なった。永田町関係者は「煮え切らない中道と対照的な、高市首相の『イメージ戦略』勝ち」と言い切った。選挙期間中には、トランプ米大統領が支持表明する異例の動きもあった。
政治の師とあおぐ安倍晋三元首相は2度の衆院選をへて政権基盤を固め、「モリカケ」問題を抱えても「安倍1強」の長期政権を築いた。高市首相も、悲願の「数の力」を手にした。ただ、台湾有事答弁に代表される発言の危うさなどへの懸念も根強い。日本政界に、「高市1強」時代が訪れるのか。1票を投じた有権者は注視している。【中山知子】