<第11期叡王戦本戦トーナメント>◇準決勝◇5日◇関西将棋会館
将棋の第11期叡王戦本戦トーナメント準決勝、藤井聡太6冠(竜王・名人・王位・棋聖・棋王・王将=23)対永瀬拓矢九段(33)戦が5日、大阪府高槻市の関西将棋会館で行われ、先手の永瀬が藤井を下し決勝へ進出した。伊藤匠叡王(王座=23)への挑戦権をかけ、永瀬は12日に東京将棋会館で斎藤慎太郎八段(32)と対戦する。藤井は叡王挑戦の可能性が消え、26年の全8冠復帰は消滅した。
◇ ◇ ◇
最終盤、両腕を胸の前に組み、深くうなだれた。投了直前、首を軽く左右に振り、盤を見つめた。「負けました」。プロ10年目の節目の年に藤井が最大の試練を迎えた。
研究の鬼と言われる永瀬との角換わり戦で藤井は3三金型を採用する「変化球」を投げた。「ちょっと難しい展開で、うまくバランスが取れるかどうかだったが、想定していたよりも苦しい展開になった」。早繰り銀を目指して主導権を取りにいった。終盤は角打ちから銀交換で戦いを起こしたものの形勢は相手に傾いた。入玉を視野に入れて粘ったが、永瀬の好手に阻まれて投了。「変化球」を見事に打ち返された“完封負け”だった。
これで対永瀬戦は33勝15敗。大きく勝ち越しているが、直近5局では1勝4敗。永瀬には約3年9カ月ぶり2度目の3連敗となった。叡王戦は2年連続ベスト4での敗退に「中盤以降、苦しい展開になり、実力不足だった」と厳しい表情を見せた。
26年の全8冠復帰は遠のき、“ダブル失冠”のピンチが続く。現在行われている王将戦7番勝負では挑戦者の永瀬に1勝3敗。棋王戦5番勝負でも挑戦者の増田康宏八段に1勝2敗。同時期に防衛戦を戦う2つのタイトル戦で「ダブルかど番」を背負う大ピンチだ。
若き絶対王者の“不調説”もささやかれるが、「ミスの多い将棋が続いている。修正していかなければ…」。焦りはないが、足元を見つめ直す局面だ。
中2日で王将戦第5局が8、9日に栃木で始まる。「目の前の一局に集中したい」。絶対王者が逆境を跳ね返すことができるか。試練は続く。【松浦隆司】