「大井川鐵道」(本社・静岡県島田市)は、7月1日から井川線の運行形態を観光鉄道として再構築すると発表した。同県川根本町の千頭駅と静岡市葵区の井川駅を結ぶ25・5キロの井川線を次の世代へと確実に引き継ぐために必要な収益基盤の確立、地域の魅力をいっそう高めて持続可能であり続けることを目指す。
観光鉄道として新たに「座席定員制(列車指定制)」「観光列車ダイヤ」を導入。「観光体験をパッケージ化した旅行商品」として、乗車区間にかかわらず大人3500円、子ども1750円でも販売する。
同線はアプト式鉄道区間という、日本唯一の鉄道史産、長島ダムのダム湖に突き出た半島状の山の突端にあり、2019年には「COOL JAPAN AWARD」を受賞した奥大井湖上駅という珍しい景勝地を有している。
一方、22年の台風15号による大井川本線の一部不通が長期化するなど、同社を取り巻く環境の変化により、従来の運行形態では持続可能な運営が困難になっている。こうした状況のもと、井川線を維持し、その魅力を次世代へ確実に引き継ぐためには、路線の価値に見合った新たな収益の形が不可欠と判断した。そこで、「乗車そのものを“体験”として楽しんでいただく」観光鉄道へとカジを切り、体験価値を旅行商品として届けることで、安定的に路線を支える仕組みへと転換する。
このため、昨年10月から関係自治体等との協議を始めた。今年4月からは沿線地域の住民、観光業者との説明会や意見交換会なども13回実施し、意見を聞きながら検討を進めてきた。これらを踏まえ、受け入れ体制の整備や観光事業者との協働プランなどの中で、観光と地域が相互に高め合う観光列車の魅力向上や地域経済の活性化を図る「大鐵サポーターズクラブ」を5月28日に新たに設立。今後は「観光列車向け商品の共同開発」「駅でのおもてなし企画」「運行形態の意見交換」「地域資源の活用に関する協働」などの活動を予定している。