<鳥海高太朗の静岡深掘り>
連載「鳥海高太朗の静岡深掘り」第24回は、清水港と土肥港を結ぶ「駿河湾フェリー」に乗ってきました。存続か廃止か、正念場を迎える同航路の現状をリポートします。月1回、航空・旅行アナリスト鳥海高太朗氏(48)が、静岡に関する身近な話題を分かりやすく解説。お得な情報もお伝えします。
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静岡市の清水港と伊豆市の土肥港を90分で結ぶ「駿河湾フェリー」。航路そのものが「県道223(ふじさん)号線」に指定されている全国的にも珍しい「海の県道」である。7月に私も初めて乗船したが、清水港を出港すると、船上から世界文化遺産の三保の松原や富士山を一望でき、その景色は圧巻だった。「ちびまる子ちゃん」とコラボした客室もあり、あっという間の90分だった。一方で、廃止も選択肢となるほど深刻な経営危機に直面している。
駿河湾フェリーは1971年、富士市の田子の浦と土肥を結ぶ航路として運航を開始し、2002年から現在の清水~土肥航路となった。昨年4月には清水港の乗船場がJR清水駅近くへ移転した。19年春に民間企業が経営不振で撤退した後、静岡県と周辺自治体が一般社団法人「ふじさん駿河湾フェリー」を設立し、事業を引き継いだ。
しかし直後のコロナ禍で利用客が激減し、昨年度はプロペラ損傷による運休も重なった。利用者も減少し、3期連続の赤字、昨年度は約6200万円の赤字に。静岡県は早ければ今年中にも「存続か廃止か」を判断する方針で、7月23日に初会合を開催した検証委員会が11月までに検討内容をまとめ、12月の県議会で鈴木康友知事が方針を表明する見通しだ。
駿河湾フェリーを静岡の観光資源としてどう考えるのか、乗船そのものの満足度は高い一方、土肥港到着後の2次交通には課題がある。往復利用にこだわらず、土肥までフェリーで渡り、西伊豆を観光した後、修善寺や三島へ抜けるなど、片道利用を前提とした広域周遊ルートの提案が必要だ。定期観光バスなどと組み合わせ、フェリーと周辺観光地を結び付けることで利用増につなげるべきであり、「乗船そのものが観光目的となる船旅」へ進化させることが、航路存続のカギになるだろう。
○…駿河湾フェリーでは存続可否が問われる中、経営指標や利用者数で判断するのではなく、市民、県民のフェリーへの思いを形にした。応援の輪を広げることを目的に、クラウドファンディング「駿河湾フェリーの挑戦 黄金体験を次世代につなぎたい この秋、幻の第4便復活へ」をスタートさせた。
目標金額は300万円で、期間は9月13日午後11時までに設定した。目標を達成すれば10月3日に特別便「幻の第4便(黄金船)」を運航する予定だ。
特別便では、清水港から土肥港沖を経て、夕日の名所として知られる「黄金崎」沖まで周遊するルート。船内ではフリーアナウンサー神谷ゆきえ氏による特別ガイドや音楽演奏なども予定され、通常のフェリーとは異なる船旅を演出するとのことだ。
駿河湾フェリーによると、かつて運航されていた夕暮れの「第4便」を復活させ、夕日に染まる富士山と黄金色に輝く駿河湾を楽しむ“黄金体験”をよみがえらせようという試みだ。陸路に比べて割高なフェリーに乗ってもらうには、「わざわざ乗りたい」と思わせる新たな価値づくりが重要であり、景色の価値をどれだけ多くの人に知ってもらえるかが重要になるだろう。