<天皇賞・春>◇1993年4月25日=京都◇G1◇芝3200メートル◇5歳上◇出走14頭
ライスシャワーが無敵マックイーンを倒して古馬日本一の座に輝いた。10万人の観衆を集めた大一番、第107回天皇賞(春)は単勝2番人気のライスシャワーが断然人気のメジロマックイーンを直線で突き放し、3分17秒1と従来の記録を1秒7縮めるウルトラレコードで優勝。ミホノブルボンの3冠を阻止した昨年菊花賞に続いて二つ目のG1を制覇するとともに、メジロマックイーンの3連覇、武豊騎手の5連覇、3週連続G1優勝の夢を砕き、世代交代を高らかに告げた。
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風速7メートルの逆風を突いて、的場・ライスシャワーが動く。勝負どころの2周目3コーナーの坂の下り、半馬身前を行く武・マックイーンの白い馬体に、真っ黒な馬体がついて離れない。緑の生け垣と無敵の王者を右に見ながら、10万人のファンが待つホームストレッチへとなだれ込んでいく。トウカイテイオーに並ぶことさえ許さなかった孤高のステイヤー、メジロマックイーンが今、後ろから来た馬に並ばれている。武の驚くような顔が勝利の確信をより強いものにした。首を振って食い下がる芦毛の怪物をラスト300メートルで突き放す。2馬身半の決定的な差をつけ、政権交代を告げるゴール。
昨年の菊花賞で、ミホノブルボンの3冠を阻止した時もレコード勝ちだったが、今回も、89年にイナリワン、91年にメジロマックイーンがマークした3分18秒8を1秒7も短縮する驚異的なレコードタイムだ。スタミナだけでなく、スピードも兼ね備えた新しいタイプの長距離馬の誕生だ。
「3コーナーは向かい風が強かったけど、マックイーンが動いたから自分も動いた。4コーナーの手ごたえを見て勝ったと思いましたね。菊花賞よりうれしい勝利です」。殊勲の的場は声を震わせてその感激を語った。ふだんは控えめで地味な的場騎手が珍しく何度も馬上で右手を挙げ、勝利を誇示する。それは、ひそかに胸の中にしまいこんでいた、関西の人気騎手武、関東の第一人者岡部への勝利宣言でもあった。
的場はこの一戦に雪辱のチャンスを狙いすましていた。昨年の有馬記念(8着)、トウカイテイオー(11着)を警戒するあまり仕掛けが遅れてメジロパーマーの逃げ切りを許してしまった。道中、たびたび振り返りテイオーの位置を確認した自分の騎乗を恥じた。「なぜ、もっと馬を信頼してやれなかったんだ。なぜ、ライスシャワーの力を引き出してやれなかったんだ」。自分に対するイライラを募らせながら92年は暮れた。年が明けて的場は変わった。日経賞では3角先頭の積極的な競馬で相手をねじ伏せた。マック一色、マックのための天皇賞の下馬評にも以前のように動じることはなかった。12キロ減の430キロの馬体重は、ライスが初めて注目された昨年のダービー(2着)時と全く同じ、極限状態の仕上げだった。的場はパドックで今(こん)助手に声をかけた。「マックイーンが行かなければオレが行ってやる」。3角でマックイーンが動いた時に少しのためらいもなく仕掛けたのも、自力で勝利をもぎ取る強い意思が働いたせいだ。
ミホノブルボンの3冠を阻んだ時は、思わぬ憎まれ役になった。今度はマックイーンの3連覇を阻止。だが、もう的場もライスシャワーも悪役ではない。世代間の戦いに勝ち、頂点へ上りつめたチャンプだ。淀に響いた関東騎手へのエールが、新ヒーローの誕生を高らかに告げていた。【松田隆】
◆ライスシャワー ▽父 リアルシャダイ▽母 ライラックポイント(マルゼンスキー)▽牡・5歳▽馬主 栗林英雄氏▽調教師 飯塚好次師(美浦)▽生産者ユートピア牧場(北海道登別市)▽戦績 14戦5勝▽総収得賞金5億1437万4200円▽主な勝ちくら 92年菊花賞、93年日経賞
(1993年4月26日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時