【G1復刻】池添男泣き!スイープトウショウ初タイトル 陣営一丸の究極仕上げ実る/秋華賞

04年10月、ゴール前ヤマニンシュクルとの競り合いを制したスイープトウショウは悲願のG1を手中にする

<秋華賞>◇2004年10月17日=京都◇G1◇芝2000メートル◇3歳牝◇出走18頭

3歳秋の女王はスイープトウショウ(栗東・鶴留)に決まった。春は桜花賞5着、オークス2着と苦杯をなめたが、この日は得意の直線勝負に賭け、上がり33秒9の末脚で初のタイトルを獲得した。断然1番人気のダンスインザムードは4着に沈み、2着ヤマニンシュクル(5番人気)3着ウイングレット(10番人気)との3連単は、24万9510円の大波乱となった。

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京都の内回りも、短い直線も関係ない。スイープトウショウは定位置の大外へ進路を取った。先頭ダンスインザムードとの差は10馬身。武の背中は遠い。だが池添謙一騎手(25)は慌てなかった。「ゆっくり、ゆっくり」。そう心の中で繰り返しながら、追い出しを待った。勝負に出たのはラスト300。「届け!」の願いとともに、ステッキを振り下ろした。愛馬も強烈な末脚で応えた。右隣のレクレドールを一瞬にして突き放すと、内で伸びあぐねる本命馬をとらえた。上がり3ハロン33秒9。メンバー最速の切れで、追いすがるヤマニンシュクルを競り落とし、歓喜のゴールに飛び込んだ。

遠かった。長かった。自然に目頭が熱くなった。池添らしい派手なガッツポーズはない。下を向き、喜びをかみしめた。その後に左手の人さし指を上げ、薬指に光る結婚指輪にキス。スタンドに陣取る夫人にメッセージを送った。検量室に戻ってからは人目をはばからず涙を流した。「ありがとうございます」。鶴留明雄師(63)への感謝も涙にむせび、声にならなかった。今はフリーだが、デビュー当時は鶴留厩舎に籍を置いていた。「先生の馬でG1を勝ちたい」が口癖。胸に秘め、思い続けた言葉がようやく実現した。「本当にうれしい。体は仕上がっていたし、落ち着きもあった。道中は追い出しが早くならないように、そればかり考えていた」。師匠とガッチリ握手をかわすと、再び涙がほおを伝った。

この日、池添は3レース以降は騎乗馬がなく、午前11時すぎから秋華賞で馬場に向かう午後3時半まで緊張が続いた。「ずっとドキドキしてました」。だが鶴留師のひと言が緊張を解きほぐした。「悔いのないように乗ってこい」。ぶっきらぼうな言い方だが、このひと言で吹っ切れた。末脚勝負に徹しよう。腹は固まった。師匠と弟子、そしてジョッキーと愛馬。それぞれの信頼関係が、爆発的な末脚を生み出した。

鶴留師も究極の仕上げで「愛弟子」をサポートした。調教では馬場入りを拒否したり、馬場内で気分を損ねて立ち往生するなど、スイープは気性の激しさがある。追い切りでは馬場入りをゴネて体力を消耗することから、坂路を軽めに1本登るのが限度。厩舎周辺の引き運動で足りない分を補うなど苦労してきたが、前走後は初めてムチを入れるハードな内容に変えた。気性が気性だけに、ひとつ間違えば精神的にパニック状態に陥る危険もあった。しかし「軽めの調教ではG1は勝てない」と、あえて負荷をかけた。陣営にとっては大きな賭けだが、地力強化という形でスイープは答えを出した。鶴留師は「鎌田(助手)をはじめ、厩舎が一丸となった結果」と目に涙を浮かべ、胸を張った。

初タイトルを手にしたスイープトウショウは、秋華賞馬の称号を得て、11月14日京都のエリザベス女王杯(G1、芝2200メートル)に向かう。古馬相手でも切れ味ではヒケを取らない。心身ともに成長したスイープが、今度は統一女王の座を狙う。【高橋悟史】

◆スイープトウショウ▽父 エンドスウィープ▽母 タバサトウショウ(ダンシングブレーヴ)▽牝3▽馬主(株)トウショウ産業▽調教師 鶴留明雄(栗東)▽生産者 トウショウ牧場(北海道静内町)▽戦績 9戦5勝▽総収得賞金 2億6821万8000円▽主な勝ちクラ 03年ファンタジーS(G3)、04年チューリップ賞(G3)

(2004年10月18日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時