<秋華賞>◇2020年10月18日=京都◇G1◇芝2000メートル◇3歳牝◇出走18頭
歴史的名牝の誕生だ。単勝1・4倍に支持されたデアリングタクト(杉山晴)が史上初めて無敗の牝馬3冠を達成した。松山弘平騎手(30)に導かれ、オークス以来の5戦目も次元の違う強さを見せた。やや重馬場をものともせず豪快に伸び、勝ちタイムは2分0秒6。18年アーモンドアイ以来、史上6頭目の牝馬3冠を土つかずで手にした。
◇ ◇ ◇
白と青の勝負服が、記念すべき日を祝福する秋晴れの空に輝いた。やったぞ、やった! そんな声も、淀の空に響いたようだった。デアリングタクトにまたがった松山騎手はゴール板を過ぎると、左手で作った牝馬3冠の“スリーピース”を何度も突き上げた。ガッツポーズを何度もしてしまうほど、むき出しの喜びに浸った。史上初の無敗牝馬3冠を、単勝1・4倍の期待にこたえて達成した。「重圧もありましたが、馬を信じるだけだと思っていました。自分の馬が一番強いと信じて挑みました」。ピーンと張った糸のような緊張感が緩み、ようやく笑顔がはじけた。
信じていたからこそ、焦らなかった。7枠13番からのスタートはひと息。前半1000メートルは59秒4とレースのペースは流れた。中団より少し後ろの位置取り。4コーナーは後方から追い上げてくる馬と横一線に並ぶ形になった。「手前を替えて、脚を取られるところがありました」。晴天で回復したものの、馬場はやや重。「ポテンシャルが高く立て直して伸びてくれました」と愛馬が克服してくれた。直線では次元の違う脚で伸び、後続を寄せ付けない。「強い力を発揮してくれました」と絶賛した。
パドックでは、イレ込んでいた。精神面は2冠を達成した春も課題だった。本馬場には最後に登場し、返し馬は他馬がいなくなった淀の直線で、鞍上と呼吸を合わせてゆっくりと行った。「落ち着きを取り戻してくれた」。ゲートの中でそわそわする局面も、ぐっとこらえた。
内なる闘いも制し、歴史的な快挙を達成した。杉山晴師は「上のステージでレースをしてみたい気持ちはあります」と言い、松山騎手は「できればこのまま負けたくないなと思います」と力強く話した。周囲を驚かせ、感動の渦に巻き込む無敗伝説はまだ終わらない。【辻敦子】
◆デアリングタクト▽父 エピファネイア▽母 デアリングバード(キングカメハメハ)▽牝3▽馬主(株)ノルマンディーサラブレッドレーシング▽調教師 杉山晴紀(栗東)▽生産者 長谷川牧場(北海道日高町)▽戦績 5戦5勝▽総収得賞金 3億9771万3000円▽主な勝ち鞍 20年桜花賞(G1)オークス(G1)▽馬名の由来 大胆な+Tactics(戦法)より。大胆な戦法。父、母名より連想
(2020年10月19日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時