【G1復刻】サクラローレル最強証明 横山典「オレが一番だ!」天皇賞・秋の雪辱に涙/有馬記念

96年12月、サクラローレル(左)の横山典弘騎手は、会心の勝利で天皇賞の雪辱を果たした

<有馬記念>◇1996年12月22日=中山◇G1◇芝2500メートル◇出走14頭

サラブレッドの実力日本一を決める第41回有馬記念(G1、芝2500メートル)が22日に中山競馬場で行われ、1番人気のサクラローレル(牡6、境勝)が圧倒的な強さで勝った。横山典弘騎手(28)は道中インコースの中団を進み、3コーナーから馬群の外に持ち出す冷静な手綱さばきで、天皇賞・秋(3着)の雪辱を果たした。2着にはマーベラスサンデーが入り、最大のライバルとみられていたマヤノトップガンは7着に沈んだ。売り上げは約875億円で、一レースでは史上最高だった。

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これが最強の脚だ。直線で外に持ち出した横山典のサクラローレルは、ワンテンポ先に抜け出した武のマーベラスサンデーを一気に捕らえる。右ステッキがうなり、瞬時に左手に持ち替えると、さらに1発、2発。ライバルを並ぶ間もなくかわし、半馬身、1馬身と突き放す。2馬身半の圧倒的な差をつけた時、横山典は左手を天高く突き上げた。「オレが一番だ!」。大歓声の中、思わず叫んでいた。

断然の単勝2・2倍。想像を絶するプレッシャーを感じながらも、横山典は冷静だった。好スタートから中団の内に控え、よどみのない流れにスムーズに乗る。ペースの上がった2周目3コーナーから徐々に外に持ち出すことに成功。4コーナーでは先行勢のすぐ外だ。「手ごたえ抜群だった。余裕があった」と振り返る通り、目標をバテたマヤノトップガンから、先に抜け出したマーベラスサンデーにすかさず切り替える。不利を受けずに力を出し切るベスト騎乗を、思い描いた通りにやってのけた。指を1本立てながら引き揚げてくると、両手を上げたまま馬から飛び下りるデットーリ(欧州NO・1騎手)ジャンプだ。

「力負けです」。真っ先に武が歩み寄る。ガッチリと握手を交わすと、横山典は「これで(最強を)証明できた」と何度もつぶやき目を潤ませた。「今回は絶対に負けられないレースだった。(境)勝太郎先生のためにも、ファンのためにも、そして自分のためにも……」。強気で鳴る横山典が人前で涙を見せたのは、あのメジロライアンの引退式以来だ。

今回同様に断然人気で臨んだ天皇賞・秋。直線で前、横がふさがって出るに出られず、脚を余して3着に敗れた。レース直後「オレが最高に下手に乗った」と自分を責め抜いた。さらに境勝師からは「あんな下手な騎手は見たことない」「オレが乗った方がマシだ」と、手厳しい叱咤(しった)激励の言葉を浴びせかけられた。

あれから2カ月間、横山典は、ただただこの勝利だけを待って、耐えに耐えた。11月中旬に行われた騎手仲間の忘年会でも「明日も調教があるから」と好きな酒をほとんど口にしなかった。執念で勝ち取った勝利に「(2カ月間は)長かったといえば長かったね。でも結果が良かったからすべて忘れたよ」。この秋初めてといっていい底抜けの笑顔を見せた。

横山典にとっては天皇賞・春に始まり、有馬記念初Vで締める最高の1年。だがその間には2度の騎乗停止があり、ダービーに乗れなかったり、終盤リズムを崩してリーディングで岡部騎手に逆転されたりと、山あり谷ありだった。「まあ、とにかく終わりが良かったからいいよ。今日は酒を飲んでも逆に(興奮して)酔えないんじゃないかな」。来年は小島太新調教師のもと、凱旋門賞など、欧州の最高峰に挑戦する予定だ。【栗田文人】

◆サクラローレル▽父レインボウクウェスト▽母ローラローラ(母の父サンシリアン)▽牡6歳▽馬主 (株)さくらコマース▽調教師 境勝太郎▽生産者 谷岡牧場(北海道静内町)▽戦績 20戦9勝▽主な勝ちくら 96年天皇賞・春(G1)▽総収得賞金 5億7297万1000円

(1996年12月23日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時