【セレクトセール】福永祐一技術調教師“激動の2日間”5・2億円馬に「今まで経験のない感情」

福永祐一技術調教師(2023年4月撮影)

セレクトセール2日目(11日)の午後6時すぎ、福永祐一技術調教師(46)の“勝負の2日間”が終わった。

「激動の2日間やったわ」

少し笑みを浮かべ、調教師として初のセレクトセールを振り返る。全てがうまくいったわけではない。だが、師の表情にはやりきった感があった。

「もちろんやけど、騎手として来ていた時とは全然違う(笑い)。今までにない緊張感があったし、セリの難しさを痛感した。けど、楽しかったよ」

来年の厩舎開業がかなえば、セレクトセールから現時点で7頭が入厩予定だ。

初日の1歳部門は3頭。「アスク」の冠名で知られる広崎利洋HD(株)が2億9000万円(金額はすべて税抜き)で落札したアイムオールレディセクシーの22(牡)など、3頭すべてがキタサンブラック産駒だった。

2日目の当歳部門は、5億2000万円で(株)ノースヒルズが購入したコントレイル産駒のコンヴィクション2の23(牡)など4頭。自身が騎手時代に主戦を務めたコントレイルの産駒が中心になるかと思ったが、4頭全てが違う種牡馬とバラエティーに富んでいた。入厩予定馬7頭の総額はなんと14億5200万円にものぼる。

もちろん、思い入れのあるコントレイルの産駒全馬に熱視線を送った。欠場1頭を除く上場された全20頭が落札され、平均落札額は1億2860万円だった。

「全体的に値段が上がったし、より一層、種牡馬の価値を高めることになったセリだったと思う。コントレイルのいい特性を引き継いだ、脚の軽そうな、芝の中長距離で走れそうなタイプの馬が生まれている」

父の背中を知るからこそ分かる良さがある。以前から「コントレイルは生産界を引っ張っていく存在になると思っている」と語っていた師は、今回の評価、評判に納得の表情だった。

今までに見たことのない福永師も見られた。コンヴィクション2の23が落札された直後、その表情にはいつもの柔らかさがなく、こわばった様子で言葉数も少なかった。「顔、引きつってたやろ(笑い)。なんというか、今まで経験のない感情やった。緊張とはまた違う感じで…。牧場と連携しながら、ベストを尽くしたい」。開業に向け、より一層気を引き締めていた。

2日間、計20時間もの間、セリ会場を縦横無尽にかけ回った。多くの馬主のテーブルを回り、狙いをつけた馬のセリが近づくと会場に行く。少し時間が空けば、今度はセリのカタログをチェックする。また、セリの開始前は下見所で入念に馬を確認。馬を選ぶ上で大事にしている「歩き」を見ていた。「怒濤(どとう)やったよ」。その言葉通り、朝から晩まで、こちらが話しかける余地もないほどだった。

それだけ、この瞬間のために準備してきた。何カ月も前から北海道に行っては下見を繰り返し、馬の変化を肌で感じた。

「やっぱり(子馬は)短期間でも変化するからね。そこはしっかり見ないといけない」

一切の妥協を許さず、納得いくまでやり続ける。福永師らしい抜かりのなさを感じる2日間だった。【藤本真育】