“馬合宿”の成果に期待したい。
競馬開催のない函館競馬場は通称「裏函(うらはこ)」と呼ばれ、現在も400頭以上の競走馬が在厩している。騎手のほとんどは札幌に滞在しており、居残っているのは4、5人ほど。ただ、人数が少ない分だけ調教騎乗が殺到するため、誰もが乗りっぱなしになる。
今年は北村友一騎手(36)が「裏函」に滞在している。デビュー18年目でG1・5勝。まだ顔つきは若々しいが、キャリアでいえばもはや若手ではない。
そんなG1ジョッキーが、まるで新人のように調教に乗り続けている。今週水曜はなんと12頭に騎乗! 調教時間の午前5時半から9時の3時間半は、ほとんど馬上にいた。いくら涼しい函館といえども、気温は連日30度以上。しかも調教後には場内でランニングもしているという。その表情は疲れ知らずで生き生きして見えた。
「好きなことに没頭できますからね。馬に乗って、馬場を走って、トレーニングをして…」
その「好きなこと」ができない日々があったからこそ、今が充実しているのだろう。21年5月の落馬負傷で背骨8本を骨折。レース復帰までに1年1カ月を要した。421日ぶりの勝利を挙げた時には「感謝の気持ちを忘れず努力し続ける自分でありたい」と意気込みを新たにしていた。
函館では単身生活が続く。離れて暮らす家族とは連絡を欠かしていないそうだが「競馬学校の時もそうでしたけど、ホームシックになったことがないんですよ」と笑う。
今週土曜は札幌で騎乗して、日曜は新潟へ。エクロジャイトと挑むレパードSでは2年半ぶりの重賞制覇がかかる。「イメージした通りに成長してくれてますね。砂をかぶるのが得意ではないけど、かぶらない位置で、もまれなければ力を発揮できると思います」。北の大地で過ごす馬ひとすじの生活が、実を結ぶ日になるかもしれない。【太田尚樹】