【府中便り】天覧競馬と、「テムズとともに」と、世界最強馬イクイノックス異次元の連覇

天皇賞・秋のレーシングプログラムと「テムズとともに 英国の二年間」

今年の春、書店の前を通りがかったときに平積みされていた書籍のタイトルが目に留まり、手に取りました。「テムズとともに 英国の二年間」(紀伊国屋書店、定価1100円)。著者は徳仁親王。帯には「天皇陛下、青春時代の清新な英国留学記 新装復刊」と書いてありました。93年に出版された本の復刊ということですが、自分はこの本を読んでいなかったため、手に取り、レジに向かいました。

「オックスフォード大学での日常生活、研究生活、音楽活動、ご学友との交流、登山やテニスなどのスポーツ、英国内外への旅…」。帯には本の内容を示唆する文言も書かれていました。となれば、英国王室と関係の深いあのスポーツも登場してくる可能性があるのでは…。そう思いながら、ページをめくっていくと、ありました。146ページから147ページにかけて、1つの段落、10行ほど“競馬”の話題が…。

「これもスポーツのうちであろうが、競馬といえばアスコットが有名である」という文で、その段落は始まります。84、85年と2年連続でロイヤルアスコット開催を訪れ、エリザベス女王の間近で競馬を観戦され、女王の競馬熱に触れたそうです。段落の終わりには「私は、生まれて初めて馬券を買い賭けてみたが、見事に失敗した。わずか2ポンドほどの額であったため懐には響かなかったが」と、ご自身で馬券を購入し、その失敗談というか、ビギナーズラックが訪れなかったことが明かされていました。

天覧競馬になることが発表され、今週、あらためて、「テムズととともに」を読みました。天皇陛下が過去に馬券を買われた経験がある。それは自分にとって、新鮮な発見でしたし、多くの競馬ファンや関係者にとっても同じなのではないのかな、と…。

はたして、30年前のアスコット競馬場で、どのような馬券を買われたのだろうか、ロイヤルアスコット開催のどんなレースのどんな馬の馬券を買われたのだろうか、どうやって買われたのだろうか、場内でブックメーカーから買われたのだろうか。そんな想像をふくらませます。

スポーツについてまとめられた章の後半にはこう書かれてありました。「このように、留学中様々なスポーツに接することができたことは、たいへんよい思い出であった。また、人々との会話の中にスポーツの話題は欠かせないもので、スポーツをやっていることが会話のよき手助けになったことも事実である」。

今日の天皇賞・秋は、「競馬」というスポーツに多くの人が競馬場内で、また、テレビやラジオ、パソコンの前で興奮し、歓声を挙げた、本当に素晴らしいレースでした。

ファンファーレが響き、強い西日を浴びながら進む11頭。1000メートル通過57秒台の時計が表示されたときのどよめき。藤岡佑騎手と△ジャックドールが軽快に飛ばし、連覇を狙う○イクイノックスとルメール騎手は3番手。自分は内心、「ペースが流れている。最後方を進んでいる◎プログノーシスには最高の展開」と思っていたのですが…。

イクイノックスの連覇のゴールの瞬間には歓声がこだまし、電光掲示板には1分55秒2の表示、そして、赤いレコードの文字が浮かび上がると、再び、大きな歓声が…。

スタンド8階の記者席、隣に座る本紙担当・松田直樹記者、井上力心記者、舟元祐二記者、桑原幹久記者、阿部泰斉記者、みんな口々に「強すぎだろ」「なに、この時計?」「異次元です」「ヤバいっす」と…。

週初めにも書きましたが、イクイノックスはドバイシーマCの129というレーティングの数字を持っています。その数字を他の馬が追いかけ、競い合うことで、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念のいずれかが「年間レースレーティング」で2023年の世界一のレースになって、日本のG1を勝ったパフォーマンスが評価されて、日本馬がワールドベストレースホースになる、そんなことが実現すればいいなあ、と思います。

◎プログノーシスは頑張ってくれました。この時計で走っているのだから、立派な3着です。2着ジャスティンパレスは昨年の菊花賞、有馬記念、今年の天皇賞・春で◎を打った馬ですが、瞬発力勝負は厳しいとみて、今回は無印にしてしまいました。▲ドウデュースは武豊騎手がケガで騎乗できなかったのが残念でした。なにより、○イクイノックスというスーパーホースに◎を打たなかったことを自分は深く反省しなければいけません。

入場人員は7万7870人。多くの人と感動を共有することができました。微力な自分ですが、また明日から競馬というスポーツと楽しく、真剣に向き合って、伝えていきたいと思います。【木南友輔】