【美浦便り】名伯楽もその強さに驚いたイクイノックス「127ポンド」のキーホースは?

サンタアニタダービーを勝ったサンデーサイレンスの写真(撮影・木南友輔)

昨日の夜は美浦トレセンの近くで元調教師の方と久々に会食でした。「強かったな。すごく強かった。驚いたよ」。名伯楽はニカッと白い歯を見せ、天皇賞・秋、イクイノックスの走りをそう、たたえていました。「ヨーロッパでペースメーカーが出走しているのは、強い馬が勝つために必要な面もあるんだよ。日本ではできないけどな。ペースが流れていたから強い馬が強い競馬をしたんだ。1分55秒だからね。日本の馬は本当に速くなったなあ…」。

熱い話に聞き入るのは、私と、雑誌社の本誌・Wさん。いつものように勉強になる話ばかり、たくさん聞かせてもらいました。質問すれば、なんでも答えてくれます。競馬を取り巻く環境、過去の名馬の話、調教の話、血統の話、生産の話、生産地の話、これからの競馬の話…。あっという間に時間が過ぎていきました。

今日(木曜)は昼に先週の天皇賞・秋のレーティングが発表されました。JRAのハンデキャッパーがイクイノックスに与えた数字は127ポンドです。今回の天皇賞・秋を前に、イクイノックスが現時点の今年ここまでのレーティング世界一(ドバイシーマCの129ポンド)であり、“現役世界最強馬”という表現を用いて、紙面で紹介してきました。この「127」という数字も多くのファンが気になると思います。JRAに問い合わせると、「今回の天皇賞・秋のキーホースは4着のダノンベルーガです」と回答がありました。

ここからは個人の見解です。4着ダノンベルーガは天皇賞・秋と同じ距離区分のドバイターフで119ポンドという数字を獲得。今回はその能力通りに結果を出しており、これを基準に、頭差競り勝った3着プログノーシスは札幌記念の118ポンドから1ポンド上がった119ポンド。3着から1馬身4分の1差だった2着ジャスティンパレスには121ポンドが与えられました。

ダノンベルーガから2馬身半遅れたガイアフォースは115ポンド。春にマイルの安田記念で117ポンドを獲得していますが、中距離の今回は低いレーティングとなりました。同様にドウデュースも京都記念で120ポンドを獲得しましたが、今回はダノンベルーガから0秒8差遅れで、レーティングは111ポンドになっています。

全着順を見ていくと、4着ダノンベルーガと5着ガイアフォースが2馬身半差。9着ヒシイグアスと10着ノースブリッジが2馬身半差、10着ノースブリッジと11着ジャックドールが2馬身半差。ここのレーティング差を見ていくと、「2馬身半差=4ポンド差」となっていて、唯一、1着イクイノックスと2着ジャスティンパレスの2馬身半差のところだけが、“6ポンド差”になっていることに気付きます。

後続を圧倒した走りの分をハンデキャッパーが評価して、上乗せした数字が今回の「127ポンド」なのではないでしょうか(※あくまで個人の見解です)。もちろん、「あんなに強い勝ち方なんだから、イクイノックスにもっともっと高いレーティングを…」とか、「日本馬は強いのだから、全体の数字をもっと引き上げられないのか」とか、あるいは「2馬身半差でこれだけの数字が出たのはすごい」とか、「もっと低いと思っていた」とか、いろんな意見があっていいと思います。

今回の127ポンドは天皇賞・秋のレース史上最高の数字です。ただ、19年のアーモンドアイは124ポンドだったので、牝馬のセックスアローワンスとして4ポンドを加えると、128ポンドになります。JRAのハンデキャッパーが与えた数字があり、海外のハンデキャッパーの意見があって、「ロンジン・ワールド・ベスト・レースホース・ランキング」が決定します。4日には高いレーティングを持った馬たちが走るBCターフやBCクラシックがあって、当たり前ですが、こちらも注目です。

名伯楽は言いました。「サンデーサイレンスは偉大だよ」。7年前、サンタアニタパーク競馬場のスタンド上階の廊下には、同競馬場で好走した馬たちの写真(ラウンドテーブル、エーピーインディ、コタシャーン、アゼリ、グロリアスソング、ファーディナンド、ティズナウなど)が飾られていました。日本の競馬を変えた馬サンデーサイレンスの写真もありました。

明日3日は大井競馬場でJBC。メチャメチャ、天気が良さそうな予報で、白熱したレースを期待したいです。さきほど、愛ダービー馬ウエストオーバーが優駿スタリオンステーションで種牡馬入りすることが発表されました。アダイヤー、フクムに続き、2400メートルの大物が来日です。【木南友輔】