<香港eye2023(2)>
10日の香港国際競走(シャティン競馬場)を取材する東京・井上力心、大阪・下村琴葉(ことは)の両記者が担当する連載「香港eye2023」。第2回は井上記者が開業6年目の田中博康調教師(38)を取り上げる。
香港ヴァーズ(G1、芝2400メートル)にレーベンスティール(牡3)、香港カップ(G1、芝2000メートル)にローシャムパーク(牡4)の2頭を送り出す。騎手時代から縁のある香港で、ホースマンとして成長した姿を世界にアピールする。
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「何かと縁のあるところだと思います」。5日に38歳になった田中博師は香港にゆかりがある。騎手時代の09年、同年のエリザベス女王杯を制したクィーンスプマンテとのコンビで香港Cに参戦した。その時に初めてパスポートを取得した。17年に調教師免許取得後、技術調教師としても現地を訪れた。「調教施設など日本と比べて馬をつくりにくい環境だと思うのに、なぜ香港の馬は強いのか」。その疑問を少しでも探ろうと、2週間ほど研修にいそしんだ経験がある。
「自分が騎手を目指していた時代からステイゴールド、エイシンプレストンなどの香港での活躍は鮮明に覚えています。研修にも行かせてもらい、そういうところも含め、いつか挑戦したいと思っていました」
14年前の香港Cは10頭立ての10着。1コーナーから果敢に先行し、パートナーのスタイルを貫いたが海外G1の壁は厚かった。「あの子の競馬はできたんですが。今までにない独特の緊張感でしたし、すごい経験をさせてもらいました。今になってその重みが分かりますし、その経験を生かせるという感じがします」。初めての異国の地での1鞍は、今も心に強く刻まれている。
騎手から調教師に立場が変わり、今回はホースマンとして成長した姿を世界に示す時だ。今年はレモンポップでフェブラリーSを勝ち、JRA・G1を初制覇。厩舎として階段を上り、3日のチャンピオンズCも同馬で制した。「調教師田中ではなく田中厩舎全体、全員を強くしたいと思っています。常にいい選択ができるセンスを磨くことを一丸でやってきているところ。全員が同じ方向に進みつつあると感じています」。徐々に理想のチームに近づいている手応えを感じつつある。「チャンスのある2頭で挑めるのはすごくうれしいことですし感謝しています」。レーベンスティール、ローシャムパークとも有力馬。騎手時代の無念を胸に秘め、2頭に最高の仕上げを施すべく香港へと向かう。【井上力心】
◆田中博康(たなか・ひろやす)1985年(昭60)12月5日、埼玉県生まれ。美浦・高橋祥泰厩舎所属で06年に騎手デビュー。調教師試験合格による17年2月末の引退までJRA通算3727戦129勝。同重賞3勝。G1勝ちは09年エリザベス女王杯(クィーンスプマンテ)。技術調教師を経て18年3月に開業。5日現在、JRA1199戦144勝。同重賞6勝(うちG1・2勝)。またレモンポップで10月の南部杯(Jpn1)を制している。
◆5日の田中博厩舎2頭の調整 シャティン競馬場に在厩。レーベンスティールは角馬場→オールウエザーコース(AW)でキャンター1周→パドックでスクーリング。ローシャムパークは角馬場→AWでキャンター1周→パドックでスクーリング。
■香港カップ展望 「日本馬キラー」ロマンチックウォリアー
地元の雄ロマンチックウォリアーが立ちはだかる。昨年は2着に4馬身半差、春のクイーンエリザベス2世Cも2馬身差で勝利した「日本馬キラー」。オーストラリア遠征でコックスプレートを制し、すごみを増す。春の香港遠征2着プログノーシス、オールカマーを制したローシャムパークが逆転を狙う。実績馬ルクセンブルク、将来性豊かなオリゾンドレの欧州2頭も侮れない。
■香港スプリント展望 地元馬ラッキースワイネス抜群の安定性
地元馬ラッキースワイネスが中心。今年は安定感抜群で、春のチェアマンズスプリントプライズなど地元スプリントG1を3勝。9戦7勝、2着2回とここでも大崩れは考えにくい。スプリンターズS2着の日本馬マッドクールも初の海外遠征に対応できれば上位争い。昨年の覇者ウェリントンや、BCターフスプリント3着で名将A・オブライエン師が送り出すイソップスフェイブルズも侮れない。
■香港マイル展望 地元のスター、ゴールデンシックスティ
主役は地元のスターホース、ゴールデンシックスティだ。昨年こそ2着に敗れたが、その後はG1・3連勝。約7カ月ぶりの実戦になるが、29戦25勝と圧倒的な成績を誇る実力馬だけに上位争いが濃厚だ。日本勢も今年のマイルCS覇者ナミュール、昨年のマイルCS勝ち馬セリフォスなど強力なメンバーがそろう。連覇を狙う地元馬カリフォルニアスパングルにも注目だ。
■香港ヴァーズ展望 日本馬vsアイルランド馬ウォームハート
過去4年で3勝を挙げる日本馬対アイルランドから参戦の3歳牝馬ウォームハート(53キロ)の構図だ。21年のダービー馬シャフリヤールはBCターフ3着から転戦。ディープ産駒で香港の軽い芝なら好勝負必至だ。前走で重賞初制覇のゼッフィーロ、レーベンスティールはともに近況充実。後者は古馬と初対戦だが55キロが魅力。春に続く香港遠征のジェラルディーナは折り合いが鍵。
◆シャティン競馬場 1978年に開場した香港の九龍半島郊外に位置する競馬場。芝は1周1899メートル(直線430メートル)で、2角から3角にかけて緩やかな上り坂。3角すぎからゴールにかけて緩い下り坂。