【明日への伝言】飯田雄三師 馬は難しい、だから面白い「一番うれしいのは未勝利馬が勝った時」

飯田雄三調教師

<先人から競馬界の後輩へ 明日への伝言(3)>

今春で引退する調教師が語る連載「明日への伝言」の第3回は栗東・飯田雄三調教師(70)が登場する。

大学の馬術部で馬の魅力に引かれ、そのまま競馬界に飛び込み半世紀。マイネルクロップやビーアストニッシドなどの重賞馬を育て、先週終了時でJRA通算320勝。大学時代から厩務員を経て調教師の現在まで、約50年にわたる競馬人生を振り返った。【取材・構成=奥田隼人】

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この世界に入って、ほぼ50年です。みんなに助けられ、ここまで好きな仕事をやってこられました。それはもう感謝、感謝です。

大学(酪農学園大学)の馬術部で初めて馬に接し、こういう世界があると知りました。馬がきれいやなと思って、この社会に進みたいなと。アルバイトでは道営競馬でゲートや写真判定の係などもやりました。卒業してからは牧場に少しいた後、トレセンで厩務員になりました。

最初は増本勇厩舎、それからは増本豊厩舎へ。大学の先輩には『お前はすぐに辞めるわ』とも言われました。それくらい大変な世界でした。それでも人に恵まれ、やってこられました。調教師というのは、この世界に入ったからには最初から目指していました。

01年に開業して最初は一生懸命に必死でしたが、だんだん人の気持ちなどを考えてやっていかないとダメだと気づきました。最初は自分が自分がと、調教師になった時はそう思うかもしれないですが、結局は人に助けてもらわないことには成り立たない。自分1人の考えだけではできないし、一番厩舎のスタッフに助けてもらっていることが、だんだん分かってきました。

重賞も勝たせてもらいましたが、どれも同じように見ていますから、どの馬やレースがすごかった、良かった、というのは分からないです。それでも、一番うれしいのは未勝利の馬がやっと勝った時かなと。強い馬はどうしようと強いですから(笑い)。馬主さんも苦労している人が多いし、その馬に期待している。それに何とか応えてあげたいと。デビューすらできない馬もたくさんいますからね。

今、この年になって思うことは、馬を見てもよく分からんかったなと(笑い)。状態は分かるけど、よその馬より速いか遅いかは走るまで分からない。自分の馬がいいと思っても、よその馬も強いからね。当歳や1歳で馬を見て、どんなようになるんだろうというのも、思ったようにはなかなかいかない。馬は難しいです。だからこそ、面白いんですけどね。

“伝言”としては、調教師になった人はすごく勉強や努力をしてなった人ばかりだと思います。それだけ苦労をしてなった調教師で、経営のトップになるわけです。馬主さんに誠意を尽くしてやることはもちろんですが、人に使われるのではなく自分のプライドを持って。自分の考えを持ってやってもらいたいと思います。

定年後については、70歳になってこれからどうこうはないですが、ユーチューバーになるわけにもいかないですから(笑い)。まずはひと息入れて、それから考えたいと思います。

◆飯田雄三(いいだ・ゆうぞう)1953年(昭28年)7月31日生まれ。山口県出身。栗東・増本豊厩舎での調教助手などを経て、00年の調教師免許取得から01年に開業。初勝利は01年3月17日中京のゴールデンロドリゴ。JRA重賞初勝利は15年マーチS(マイネルクロップ)。5日現在、JRA通算320勝(うち重賞3勝)。