難しいことを簡単そうにやってのける。それが名手だろう。
無敗のオーサムリザルト(牝4、池江)が27日のブリーダーズゴールドCで5馬身差の圧勝を果たした。漫然と見ていれば、彼女の強さだけに目がいってしまう。だが、そこにはレジェンド武豊騎手(55)の卓越した手綱さばきがあった。勝利を分かち合った池江泰寿調教師(55)が、2つのポイントを解説してくれた。
まずはスタートだ。
「相変わらずゲートの体勢がもうひとつ良くなかったんですけど、それを(出遅れず)出してくれたのは、さすがユタカジョッキーですよね」
あらためて映像を見ると、ゲートが開いた瞬間にバランスを崩し、鞍上も内へ体が傾いている。それでも遅れることなく流れに乗り、絶好の3番手でレースを進めた。
もう1つはコーナリングだ。
もともと右回りが得意ではない。
「右回りだと脚を外へ振るんですよね。そのあたりを意識して、左にムチを持って、外に壁をつくるようにして、うまく御してくれました」
こちらもパトロール映像を見直すと、たしかに左前脚を外側へ振り回すようなフットワークで走っている。地方の中ではコーナーが緩やかな門別でも外へ膨れ気味になっていたが、4コーナーでは左肩にムチを入れながらロスを最小限にしようとしていた。
「技ありですよ。かなりの技。超一流でないとできないと思います」
思い出したのはディープインパクトだ。ある騎手が「簡単そうに乗っていましたけど、実は難しかったと思います」と指摘していたのを覚えている。跳びが大きく、折り合いも決してイージーではない。あの豪脚を引き出せた裏にも、レジェンドの手腕があったはずだ。
武豊騎手と池江師は幼なじみでもある。12年には手を携えてトレイルブレイザーでBCターフへ挑み、4着と好走した。一方で13年の凱旋門賞ではキズナ(4着)の騎手とオルフェーヴル(2着)の調教師として世界一を争った。
次戦はいよいよBCディスタフ(G1、ダート1800メートル、11月2日=米デルマー)で頂点に挑む。味方になれば頼もしい「超一流」。同級生2人による“アメリカンドリーム”も、簡単にかなえてくれるかもしれない。【太田尚樹】