8月27日から9月1日にかけて、第40回アジア競馬会議(ARC)が行われた。
8月27日に開会式が行われ、同28日からの3日間のビジネスセッションでは、主に9つのテーマが語られた。今回のARCのスローガンは「Be Connected, Stride Together(つながろう、ともに歩もう)」。08年以来、16年ぶりの日本開催は初めて札幌が開催地に選ばれた。北海道は国内の約98%の競走馬が生産される馬産地。人と馬のつながりを軸に、議論が展開された。全ての講演に出席した松田直樹記者がARCで聞いたこと、感じたことをリポートする。(全10回)
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8月30日のビジネスプログラム3日目は人馬の福祉が大きなテーマ。この日は「馬の福祉と産業の持続可能性の向上」のセッションから始まった。ここでの基調講演は実に興味深いものだった。登壇したのは競馬の世界に身を置いたことのない、ボブ・ランガード氏。ハンバーガーチェーンでおなじみのマクドナルド社でサステナビリティ副社長を担当した方が、企業の社会的責任について語った。
マクドナルド社は180万人の従業員を抱え、120カ国以上に4万5000店を展開する。来店者は1日あたり、世界人口の100分の1にあたる約7000万人だ。ランガード氏は「消費者について一番よく知っているのがマクドナルドだと思う」と話した。超大手企業が対応してきたテーマは子どもの肥満の原因となるとされた健康面、商品の包装材に起因する環境問題、そして動物愛護があった。
同社のビーフパティは100%ビーフが売り。自社で肉牛を肥育し、食用肉へと加工してきた。その過程が批判にさらされたことが、動物愛護の観点から競走馬を虐待していると指摘を受け続ける競馬にも通じると説いたのだ。
ランガード氏は「積極的に、戦略的に取り組んでいくべきだ」とし、講演を展開した。情報開示、専門家との連携、施策の実行が社会的信用を得るとした。同社は動物行動学のテンブル・グランディン博士に判断を仰ぐことで、家畜の扱いが適切だったとのお墨付きを得た。「自らが語るのでなく、情報をシェアしよう」。中立な立場の専門家による公平な視点によって、社会的地位を保つことに成功したのである。
企業の信頼性は、第三者が偏りなく支持することで担保される。ランガード氏が「競馬は素晴らしいストーリー性を持っているし、みなさんには情熱がある。みなさんはこの戦いに勝てます」と講義を締めると、場内は拍手が沸いた。
翻って、競馬産業はどうか。第三者的な位置付けとされる馬の専門家は決して多いとはいえない。質疑応答の場面で同氏は良質な作品や読み物を通じて、中間層を取り入れるために競馬を伝えていく「ストーリーテリングの強化」の重要性も説いた。適切な情報を、正しく届けていく。我々にも課題が示された気がした。
■アジア競馬会議(Asian Racing Conference)
アジア諸国間の親善と相互理解の促進、および加盟国間の競馬交流を目的として、日本の提唱により創設された国際会議。第1回は1960年に東京で開催。今回は08年以来、16年ぶりの日本開催。過去4回は全て東京で議論が交わされ、今回は初の札幌開催となった。40の国と地域、団体から約800人の競馬関係者が出席した。