【アジア競馬会議7】人材確保は喫緊の課題、牧場経営者は人づくりにも知恵絞る

アジア競馬会議のロゴモニュメント

8月27日から9月1日にかけて、第40回アジア競馬会議(ARC)が行われた。

8月27日に開会式が行われ、同28日からの3日間のビジネスセッションでは、主に9つのテーマが語られた。今回のARCのスローガンは「Be Connected, Stride Together(つながろう、ともに歩もう)」。08年以来、16年ぶりの日本開催は初めて札幌が開催地に選ばれた。北海道は国内の約98%の競走馬が生産される馬産地。人と馬のつながりを軸に、議論が展開された。全ての講演に出席した松田直樹記者がARCで聞いたこと、感じたことをリポートする。(全10回)

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種牡馬の選定、配合、生産、育成、調教、そしてレース。競馬までの道のりは実に細かい過程の積み重ねだ。

アジアだけではなく、世界でも重要なポジションを担う日本のホースマンも主要な課題について意見を披露した。2日目のエキシビションセッション内でも矢作師や、三嶋牧場の三嶋健一郎取締役も同様のテーマを扱ったが、3日目のビジネスセッションでも「未来の課題と機会の明示」と題して、競走馬の生産に携わる国内外の牧場関係者が登壇した。

国内の牧場からは社台ファーム(社台F)の吉田哲哉副代表、ノーザンファーム(NF)の吉田俊介副代表、ビッグレッドファーム(BRF)の岡田紘和代表がそれぞれの立場から意見を述べた。

日本競馬のレベルアップは良質な種牡馬、繁殖牝馬を導入し続けた挑戦のたまもの。NFの吉田俊介副代表は近年の日本馬活躍を分析した上で、言葉を続けた。

「いつも思うのですが、日本はすばらしいファンに恵まれている。JRA、NARの努力のおかげですが、世界一の馬券売り上げが賞金やレースの運営に反映される仕組みが確立されていて、生産から競馬場に至るまでの流れがうまく循環している。クラブやセリ市場など、馬を所有するまでの流れも確立され、新規馬主が参入しやすい環境にあるのが大きい」

競馬を支える馬主やファン、整った制度の存在は大きなものだ。ただ、現場サイドは多くの産業同様、人材確保を課題に挙げる。すでに日高地区やホッカイドウ競馬では、インドや東南アジアからの騎乗者が重要な戦力となっている。NFではスペイン語圏の中南米から50人ほどのスタッフを雇用。社台Fは全体の1割ほどを占める女性スタッフの出産、育児などにかかわる制度の拡充を図っている。

牧場として、乗馬大会の助成、高校や大学の馬術部活動の援助についても言及があった。来春から北海道の大学で始まるエクワインサイエンス(馬について専門的に学ぶ学問)に向けて、スタッフが知見を提供するなど、裾野拡大へ協力と続けていくという。

BRFの岡田代表の提言も耳に残った。「人にとってかわるのは難しい分野。採用、教育、研究は大事にしたい。政策面では農地の集約を促すことによって、大規模経営牧場が増えたらいいのかなと思う。休日、休暇を増やすのは規模がないと難しい。牧場側でも就職したい人を受け入れる態勢があるといいのでは」。

人口減少に伴う効率化に魅力向上。馬づくりだけではなく、人づくりにも経営者たちは知恵を注ぐ。競馬は人材があってこそ魅力を発する。業界全体で手を取り合って取り組むべき課題だ。

■アジア競馬会議(Asian Racing Conference)

アジア諸国間の親善と相互理解の促進、および加盟国間の競馬交流を目的として、日本の提唱により創設された国際会議。第1回は1960年に東京で開催。今回は08年以来、16年ぶりの日本開催。過去4回は全て東京で議論が交わされ、今回は初の札幌開催となった。40の国と地域、団体から約800人の競馬関係者が出席した。