<武豊 30年目の凱旋(4)>
「神様やね」
幼なじみの池江泰寿調教師(55)は、同い年のレジェンドの存在をシンプルに一言で表した。
「競馬をそれまでのギャンブルという位置づけからスポーツやレジャーという地位へ引き上げてくれた人物。騎乗技術にしても人格にしても、神のような人」
武豊騎手とは少年時代から競馬トークで盛り上がる仲だった。ともに騎手の父を持ち、10歳で栗東の乗馬苑へ入った。やがて進む道は分かれたが、互いに20代で海外へ修業に出ている。
「当時はかなり欧米との差が大きかった。『日本で競馬なんてやってるのか』って言われたりもしたからね。ユタカは競馬の“先進国”に目を向けて、自分の技術を上げるために、日本の競馬を休んでまで遠征した。その姿を見て、すごく刺激を受けた。調教師と騎手で違っても『欧米の技術を習得しよう』という思いが強かったのは同じ」
12年には両者で手を携え、トレイルブレイザーでBCターフ(4着)へ挑んだ。一方で翌13年の凱旋門賞では池江師のオルフェーヴル(2着)と武豊騎手のキズナ(4着)が激突した。
「あの時は『チームジャパン』という感じ。(現地での)ホテルも同じで、一緒にごはんも食べて競馬談義をしたりして。子供の時から、そうやったからね」
来月には再び肩を組み、7戦全勝オーサムリザルトでBCディスタフへ挑む。
「特別な思いがある。一緒に乗馬を始めて、僕は体が大きくなって騎手にはなれなかったけど、志は同じ。前回(12年)は大きなチャレンジという感じやったけど、今回は勝ちに行く」
先日、2人で会話をかわす機会があった。
「凱旋門賞とBCを両方勝っても(騎手を)やめたら駄目だと言ったら…」
第一人者は首を振り、こう言い放ったという。
武豊騎手 連覇を狙っているから。
今も衰えぬ勝利への欲求こそ、55歳の原動力だ。(おわり)【太田尚樹】