あれっ、2頭だけ? 4日の大井競馬3R(2歳新馬、ダート1400メートル)が、わずか2頭立てでレースが行われる珍事があった。当初は5頭立ての予定だったが2頭が出走取り消し、発走直前にもう1頭が競走除外となったため。正真正銘の一騎打ちはカミュ(牡、松浦裕)が8馬身差で完勝。2着ライジンバローズ(牡、福永敏)との馬連配当は当然ながら元返しの100円、馬単(2)(5)は2番人気で190円という結果だった。
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2頭だけの真剣勝負。出走取り消し、競走除外が出たことによる究極の少頭数レースの序盤は、まるで調教風景のように始まった。逃げるライジンバローズ、それを2馬身差で追うカミュ。主導権争いはなく、レースはゆったりとしたペースで運んだ。通常なら馬の隊列、動きを伝えるのに慌ただしいレース実況も、今回ばかりは違った。それぞれの鞍上の実績や近況に触れることで時間を埋めた。
めったに見られないマッチレースをスタンドのファンは温かい目で見守った。直線を向いて、後ろを走っていたカミュが前を捉えると、大きな拍手が。地方競馬の記録がコンピューターで管理されるようになった73年4月以降では、初めてとなる2頭立ては8馬身差の決着となった。
うれしいデビュー勝ちには違いないが、カミュに騎乗した吉井章騎手の表情は複雑だった。「とにかく乗りづらい。(馬は)集団動物なので、2頭だと集中力が全然なかった」と苦笑い。経験の少ない新馬だけに、余計に危なさと難しさを指摘した。敗れたライジンバローズの笹川翼騎手も「2頭とも物見していた。調教の併せ馬よりも難しい」と口にしつつ、「でも見ている人たちは面白かったんじゃないですか。めっちゃ拍手していましたもんね」と初体験のレースを振り返った。
2頭立てなら絶対もうかるでしょ? そう思う人もいるかもしれないが、そう甘くはない。2頭の馬連は当たり前ながら1・0倍の元返し。馬単はカミュ→ライジンバローズの1・9倍が的中で、より堅いとみられていたライジンバローズ→カミュ(1・2倍)にかけていた人は外れ。2分の1の確率で敗れたファンも多かった。珍しいものを見られたかわりに、このレースでもうかったファンはあまりいなかったかも。
◆大井3R売り上げ 馬券の発売開始後に競走除外となった1頭については返還があり、返還後の金額は単勝=2043万9500円、馬連=1786万8700円、馬単=1007万1300円で合計=4837万9500円。
馬連の発売は1点だけになったため全投票が的中となり、払戻金は100円の元返しだったが馬単より700万円以上も売れた。ちなみに同日の4Rに7頭立てで行われた新馬戦の売り上げは6323万2200円だった。
◆大井競馬の出走頭数 出走投票の結果が4頭以下の場合は、その競走は取りやめとなるが、大井競馬の広報によると、出走表の確定後に出走取り消しや競走除外があった場合は、2頭立てまでは競走を実施することになっているという。
◆中央競馬・海外では JRAでも過去に2回だけ2頭立てがあった。1963年6月1日東京7R(アラブ系障害特別)と70年8月9日小倉2R(障害オープン)。海外では、映画にもなった米国のシービスケットが3冠馬ウォーアドミラルとのマッチレースを制したのが有名。