【記者の目】8年半の騎手生活…実力だけで評価を得ようと努力を重ねる姿を見せてもらってきた

藤田菜七子騎手(2019年2月7日撮影)

<記者の目>

JRAは藤田菜七子騎手(27=根本)から騎手免許の取り消し申請があり、11日付で騎手免許を取り消したことを発表した。

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本当に残念だ。何もかも。けじめといっては聞こえがいいかもしれないが、後味の悪さが残る。藤田菜七子騎手が10日に騎手免許取消願を提出。11日をもって、8年半の騎手生活を終えた。

今は電車に乗っていても乗客の大半がスマホとにらめっこ。日常生活とは切っても切れない存在だが、騎手は切り離さなければならないものだ。調整ルームに入った騎手は毎週金曜21時以降、日曜の最終騎乗レースが終わるまで、私用携帯電話で外部と連絡を取ることが禁止されている。時系列は前後するにせよ、昨年5月の騎手6人による事案から数えて、藤田騎手が10人目のスマホの使用、または他者との通信での処分対象者となった。

その藤田騎手は何も語らずに競馬サークルを去ることを選んだ。今回の事案は重大な非行であり裁定委員会に送付されたが、免許取消の時点で委員会の開催はなくなった。競馬施行規程52条には免許取消について「免許の取消しを申請したとき」と記されている。つまり、JRA側は申し入れを保留にすることはできない。JRAによると、公正確保の観点から調査自体は継続されるという。だが、虚偽申告を行っていたことなどを踏まえれば、裁定委員会の弁明の場で詳細を明らかにし、その議決を受け入れることを騎手としての最後の仕事にしてほしかった。

藤田騎手がJRA女性騎手として16年ぶりのデビューを迎えたのが、16年3月。アイドル的人気を好まず、性別の隔たりなく実力だけで評価を得ようと努力を重ねる姿を、取材を通じて見せてもらってきた。積み上げたJRAの勝利数は166勝。競馬界を盛り上げ、後進の門戸を広げた功績は計り知れない。それだけに、中途半端と思わざるを得ない幕引きになったことが悔やまれる。【松田直樹】