秋晴れの府中でレジェンドたちがファンに笑顔を届けました。この日の東京競馬場では「サンクスホースデイズ」が開催されました。馬に携わる人たちが馬に感謝する日として、当時現役調教師だった角居勝彦元師(60)などが中心となって、11年に始めたイベントです。
この日は特別なトークショーも行われました。テーマは「私がかかわった馬たち」。角居元師、藤沢和雄元師(73)が登場する定員100人のレアなイベントの整理券は、すぐになくなったと聞きました。トークショーは藤沢和元師が「実は昨日、私は国枝先生の馬(秋華賞ステレンボッシュ3着)でやられました」と、盟友の管理馬惜敗を嘆くあいさつでスタート。
藤沢和元師は通算1570勝、歴代2位のレジェンドトレーナーです。思い出の馬を問われ、馬名を挙げたのが17年ダービー馬レイデオロでした。助手時代にカツトップエース、シンボリルドルフなどの名馬を間近で見てきました。「調教師になったらダービーは何十個も勝てるかな、と思っていた。定年間際にやっと勝たせてもらいました」と笑わせました。当時65歳でダービートレーナーの称号をゲット。司会者に「ダービーを勝つのは難しいですね」と水を向けられると、「最後の最後にそう思いました」。そう言ってニカッと笑い、場内もつられて沸きました。
石川県珠洲市で引退馬支援を行う施設を運営する角居元師は、一般財団法人ホースコミュニティの代表理事。ホースコミュニティの活動はもう、10年を超えました。角居元師は「引退馬の話をするのは競馬サークルの中ではタブーな感じがあって、どうやって引退馬を助けていくか、セカンドキャリアをどう作るか、とやってきました。10年たって、競走馬をリトレーニングして、RRC(Retired Racehorse Cup=馬術の引退競走馬杯)もつくったりしてくれて、すごく進みました。ですが、乗馬サークルの馬房が増えたわけではない。競馬サークルの問題が、乗馬に切り替わっただけで問題は解決されていません。引退競走馬たちの最後の行き先として、珠洲市の方で始めました。人口減少率や高齢化で過疎が進んだ珠洲市は、ある意味で馬の居場所が増えています。日本は過疎が進むだろうし、珠洲市のような場所が増えていく。今後のモデルとなる場所をつくりたい」と熱弁しました。
競走馬の支援にはカイバ代など、毎月8~10万円の経費が掛かります。馬たちが地力で稼ぐ、または支援を受ける手だてを模索することにも角居元師は力を注ぎます。「引退馬支援は現状ではお金、土地、世話をする人がいない。最低限でも、この3つが足りない。(限界集落となっている場所は)土地が余り始めている。珠洲のモデルが成功すると、行政の余った土地の使い道として、(引退馬支援のための)土地の確保が進むかもしれない。ふるさと納税のシステムを導入したり…。人材は一番時間とお金がかかる。競馬ファンが馬に接する機会を増やすことが人材を育てる最初のスタート」と環境整備の必要性も訴えました。
JRAは今年4月に引退競走馬のセカンドキャリア支援のために、TAW(Thoroughbred Aftercare and Welfare)を設立。徐々にではありますが、確実に馬の福祉に対する支援の輪は広がっています。短い時間でしたが、競走馬の“その後”を考えるいい機会にもなりました。【松田直樹】